ラバーイズカズン
ザ・適当小説☆
「ねぇ大ちゃん」
「んー?」
「幸ね、小さい頃大ちゃんの事大好きでさぁ」
「……」
「大ちゃんのお嫁さんになると思ってたの」
「……キモい」
大ちゃん。一つ下の従兄弟。優しくて顔もまあまあで好い人。
小さい頃から大好きで、ちょっとした告白をしてみた。
「ふぇ?」
「キモい……」
嫌そうな顔。視線も合わせてくれません。
「えぇ、なんでぇ!」
「奈緒ちゃん、あのさぁ〜」
「あっ!大ちゃん……」
大ちゃんはこの日から、私以外の姉と弟とは仲良くても私には冷たくなりました。
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この小さな告白に至るまでの話をしましょう。そもそも、従兄弟に告白するなんて、とても勇気がいりますから。
やはりそれなりの思い出があるのです。
その日はとてもよく晴れた、夏の日でした。夏休みに実家へ帰ってきた大ちゃん達と私達は一緒に遊んでいました。
白いワンピースを纏う私と対照的に姉の奈緒ちゃんは真っ黒なワンピース。
彼女は今も殆んど黒い服しか着ません。
陽射しが強かったので、皆麦わら帽子を被っていました。
大ちゃんの妹の柚果ちゃんはまだかなり幼く、大ちゃんの後ろにくっついていました。
そうして暫くは大人しくひまわり畑で遊んでいた私達でしたが、奈緒ちゃんが夏休みの友を始めると言い、家へ帰りました。その時に幼い柚果ちゃんは奈緒ちゃんに着いて行きました。
ひまわり畑には私と大ちゃんが残りました。
「大ちゃん何するー?」
「二人で出来ることって少ないな」
「……かくれんぼ」
「ふたりで!?」
一通りそんな会話をしたあと、大ちゃんがこんな提案をしたのです。これは後に私の中に強く残る記憶になる出来事です。
「あっ!あのさ、あそこにさ川があるんだ」
「うん」
「幸ちゃん……行く?」
「行く!」
元気に頷く私を見て大ちゃんは笑顔になりました。
「こっち」
「大ちゃん速いよ〜」
川と言うのは広いひまわり畑の私達が今いる場所の反対側に位置しており、当時ひまわりより背の低い私達がその間を進むのはかなり大変なものでした。
案の定、私はバテてしまい、草の根に足をとられて転んでしまいました。
「い、痛いよー!」
「幸ちゃん!大丈夫?」
「……っぐすっ」
「わー!泣くなよ!ほら、怪我したんだろ?見せて」
大ちゃんの言う通りに足を出します。
ビリビリッ
「大ちゃん!」
「いいの」
そこには、袖の破けた服を着た大ちゃんがいて、破けた布は私の傷口に結び付けてありました。
「だってこのTシャツお気に入り……」
「いーの」
「……ぐすっ。ごめんねぐすっ」
「泣くなよー!」
その後大ちゃんは私をおぶってくれました。
思えばこれが恋の始まりだったのです。
その日からか私は大ちゃんが大好きになりました。
この間のことです。私はその時中学三年で大ちゃんは中学二年でした。
私の部屋と奈緒ちゃんの部屋はカーテンだけで仕切られています。
私が勉強をしていると大ちゃんが勉強をするために奈緒ちゃんの部屋に来たようでしたが、彼女は寝ていて起きなかったようです。
大ちゃんが私の部屋に入って来ました。
「幸いるー?」
小さい頃は私も幸ちゃんと呼ばれていたのに大ちゃんは私を呼び捨てにするようになりました。
「いるよ」
「奈緒ちゃんの部屋で勉強しようと思ったけど寝てる」
「じゃあ幸の隣においでよ!」
私はいつもソファーで勉強するので一人分のスペースがあります。
大ちゃんはあからさまに嫌そうな顔をして座りました。
最初はおとなしく勉強していましたが、私はどうやら眠ってしまったようで、大ちゃんが朝お越しに来てくれました。
「幸!朝だよ」
「うーん……誰」
「俺だよ!」
大ちゃんはどうやら眠ってしまった私に毛布をかけてくれたようでした。
一番最近の話です。
私は大ちゃんと弟の晃と一緒に雑貨屋に来ていました。
晃は私達と別行動をとりました。
「見て!大ちゃん!あれかわいい!」
「……デカ」
それは大きな熊の縫いぐるみでした。
「かわいいの?」
「うん!欲しいなぁ」
「買ってもらったら?」
「どうせ幸になんか買ってくれる人いないもん」
「ふぅん」
それからは別行動をとりました。
帰りに大ちゃんは何かを買ったようなので何を買ったか聞きました。
「コレ、幸に」
「あ!」
それは、あの熊でした。一回り小さかったけど、可愛い事にかわりありません。
「大ちゃん……」
「幸が惨めなこというから……」
「大好きっ!」
「なっ!なにいってんだよ!」
大ちゃんは私を見てくれなくなりました……。
私が落ち込んでいると、大ちゃんは弟がいなくなったあと私にこう告げました。
「……あのさ、幸は今でも俺の事好きなの?」
真面目に聞かれると照れます。
「うん」
「……俺も」
私は大ちゃんにもう一度大好きと言いました。
おわり