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揺さ振られる彼と元通りな彼女

あいつの涙と言葉の意味を延々と考えて多少寝不足気味になりながらの翌日、教室に来てみるとあいつの姿がなかった。

ほっとしたやらがっかりしたやら奇妙な思いを感じながらそれとなく担任に確認してみると、体調を崩しての欠席とのこと。

昨日は陸上部のエースもかくやという逃げ足を披露したくらい元気だったというのに。

昨日までよりさらに避けられている可能性に我ながら弱っちぃと思いつつも地味に凹む。

携帯を取り出して連絡をしてみようかと思った瞬間、そういえばあいつの連絡先を知らないことに今更ながら思い至った。

始業のチャイムが鳴って席につき、担任の声をぼんやりと聞き流しながら教室の中を眺める。

ぽつりと1つだけ空いた席が寂しそうに見えるのはきっと俺の感傷によるものだと思う。

それ以外は俺の日常に特に何かが変わりがあるわけでもなく、大事もなく時間は過ぎ去っていく。

唐突に俺がそうなってもいいと思っていたあいつのいない日常というのはこういうことなのだと悟った。

別にあいつがいなくても生きていけないわけじゃない。

ただふとした瞬間に、気付けばすぐ傍に空虚な感覚があってそれに囚われる。

我慢出来るか出来ないかで問われたら、きっと我慢出来なくはないと答えられるくらいの寂しさ。

じりり、と焦げ付くような焦燥感も苛立ちも無視できなくはない。

だから別にあいつに振り回されなきゃいけない理由なんて本来の俺にはないはずなんだ。

何があいつの気に障ったのか分からないが、嫌われたのはいい機会だと思った。

どこかで、頭の中で繰り返しているそれが言い訳だと訴えている声を聞こえない振りをしても。



「何イライラしてんの?」

何だか最近、触れられたくないことばかりきいてくるような気がする悪友をじろりと睨むと、「恐っ」とおどけた調子で言われた。

お前全然恐がってないだろ。

「別に、何でもない」

「何でもないって顔してねぇって。何、ハムちゃんがいないからイラついてんの?」

「知らねぇよ、あんなめんどくさい奴」

つい鋭くなった声に驚いたように目を見開いている奴の顔を見て、バツが悪くなる。

こいつは別に悪くないのに。

「……すまん」

視線を逸らして謝った俺に、軽い笑い声が届く。

「いや、別にいいけどさ。お前でもめんどくさいって思うような奴いたんだな」

面白そうににやりと笑いながらそういう悪友を怪訝に思って視線をそちらに戻した。

「普通にいっぱいいるぞ、そんなの」

「そうかもしれないけどさ、お前って基本的に面倒見いいだろ。そんで面倒だって思っても、結局わりかし面倒かそうじゃないかってどうでもイイだろ。長男気質っていうかさ、譲り慣れてる」

「……争うより楽だろ」

言われて思い出したのは家にいる少し歳の離れた弟どもだった。

小さなことでぎゃあぎゃあと争う弟たちに張り合っていると、体力がもたないし時間の無駄だ。

度が過ぎない限り放置し、譲ってやるほうが実際に楽だと俺が悟ったのは中学に上がる頃。

「や、そこはさ、もっとがっついていこうぜ。俺らまだ高校生だろ」

枯れてるなよ、と言われてそんなつもりはなかったから顔を顰めた。

「お前は1人っ子だから俺の苦労を知らないだろ」

「まぁそれを言われればそうだなとしか言えないけど。それはともかくさ。そんな、大抵のことに枯れてるお前が、面倒だって言って分かりやすくイライラするくらい揺らされてるって気付いてるか?」

「………………」

指摘に黙り込むしかない。

顔に出したつもりもないのに、俺はそんなにわかりやすかっただろうか。

大体そんなことを自覚したところで、いったい俺にどうしろっていうんだ。

「悩めよ青少年。お前、鋭いようでいて鈍感だからな」

「偉そうに。お前楽しんでるだろ」

「ははっ、まぁお前にも見えてないモンがあって、俺にはそれが見えてるってだけ。これが楽しくなくてなんだっていうんだ」

実に楽しそうに言い切った奴を睨んで、とりあえず一発蹴りを加えておいてやった。



その次の日、登校してきた時にはあいつはごく普通だった。

普通に俺を見て普通に挨拶をしてきて、あんまりに何にもなかったから多少構えていた俺はひどく拍子抜けしてしまった。

「嫌いなんて言ってごめんね。あと、色々と嫌な思いもさせてごめんなさい。もうしないから」

「いや……別に、気にしてないから大丈夫だ」

恐縮したように頭を下げる彼女に俺が返せる言葉などそれ以外あるはずもなく。

そんなふうに先手を打たれてしまえば、それ以上踏み込むチャンスを掴めることもなく。

腑に落ちない落ち着かない気持ちのまま日にちが過ぎ、気付けば文化祭の当日になっていた。

実は最初、彼の悪友は登場予定がなかったのですが、リクエストがあったのと、そのままでは短すぎたのでどうしようかと悩んでいたところだったので、加筆して登場させてみました。

さて立場が逆転です。動揺する彼と平常に戻ってしまう彼女。

ここからが勝負だがんばれヘタレ!(笑)

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