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エピローグ:推し or あなた


 深く息を吸い、マウスカーソルを百獣の王へと合わせる。


「ふぅー……」


 ヴィスコードに住むこのライオン。普段は一切の覇気を放っていないくせに、今日だけはそのつぶらな瞳で俺にプレッシャーをかけていた。


 そう、俺は今からポコライオンさんをオフ会に誘う。ちゃんと面と向かってチケットの……いや、日頃の感謝を伝えるため。それに、会って話したいことは山ほどある、フューたんとつづりんの公式レイヤーさんに会ったこともその内の一つだ。


 僅かに心拍数が上がっている気がする。

 相手が女性だからか?

 そんなの気にするなよ。

 これだから童貞は……。


 気軽にだ。ヴァペに誘う時のように気軽に。

 よしっ ──── ペコン♪


「あ、ポコライオンさん。ごめんこんな遅くに」

〔い、いえ。ぜ、全然大丈夫ですよ(き、きた……)どうされました?〕


「えっと、今日の面接、無事合格したよ。まずは取り急ぎのその報告」

〔おぉ、おめでとうございます。良かったですね、これでライブに行けるじゃないですか〕


「あ、うん。もうライブどころじゃなくなった気もするけど……」

〔?〕


「いや、内容は契約の都合で言えないんだけどね。想像してたのと全然違ってた、でも本気でやってみようって思える内容だったから頑張ってみる」

〔そうですか、なら良かった。紹介したかいがありました〕


「本当ありが……あ、いや。それでさ、ポコライオンさんって来週の土日とかって空いてたりする?」

〔はい!! もちろん全部空けてます!!〕

「へ?」


 空けてます? なんだその事前にブロックしてるみたいな反応。


 まぁ良いか。

 良し……誘うぞ。


 目を瞑り、呼吸を整える。


「あのさ……もしよかったらなんだけど、食事でもどうかなって。オフ会しない? ジョン松と三人で」


〔喜んで!! ──── って、ん?……ジョン松さんも?〕


「よっしゃ。ふぅ緊張したぁオフ会に誘うとかしたことなかったから。そうそう、二人に日頃の感謝を伝えたくってさ、ご飯奢らせてよ。本当はアイツもこの場に呼ぼうとしたんだけど、なんか今日用事あるらしくって」


〔............〕


 ん? 反応がない。

 いや、何かゴッ、ゴッという鈍い音が……。


「ポコライオンさん?」

〔はぁ~……私がバカでした。とり蔵さんはこういう人ですよ……えぇ知ってましたとも……でも、そういう人だからこそ、私は……〕


「え? ん?」


 なんで急にそんなテンションがた落ち?

 あれ……もしや俺とのオフ会嫌だった? 


「ご、ごめん。嫌なら無理にとは ────」

〔行くに決まってるじゃないですか!! もうっ……分かりました。とり蔵さんがそう来るんだったら、私だって覚悟を決めたんですから......すぅー〕


 え?

 なに? 覚悟?

 ポコライオンさんはさっきから何を……。


 ──── スポッ


 彼女の反応に困惑していると、ヴィスコードのチャット通知が一つ点った。


〔えいっ、えいえいえいえいえいえいっー!!〕


 スポッ、スポッ、スポポポポポポポ。


 数字が一つまた一つと加速度的に増えていく。 


「ちょちょちょ!? な、何!? えっ!?」


〔このっ!! 鈍感っ!! 朴念仁っ!! 天然記念物っ!! お人よしっ!! 不器用っ!! 無自覚人たらしっ!! 勘違い妖怪!! 察し悪すぎっ!! 素直バカ!! このっ!! このぉー!!〕


 バカ!?

 

 急にどうしたんだポコライオンさん。

 キャラが崩壊してるんだけど……。


「ど、どどどどうしたの? 俺何かしたっけ?」

〔逆ですっ!! もっと何か……しろーっ!!〕


 ──── スポッ


 彼女の渾身の叫びと共に、チャットの通知が止まった。


〔はぁ、はぁ。ちょっとスッキリしたかも〕

「えっと……これは……へ!? つづりん!?」


 ポコライオンさんから送られてきた五十は超えているチャット欄を開いた俺は、一瞬何が起こっていたのか分からなかった。そこには動画のリンクが……詞ノ葉 つづりのアーカイブ達がずらりと並んでいたのである。


〔とり蔵さん、言いましたよね。詞ノ葉 つづりのアーカイブ送ってって〕

「あ……えっと、そうだね。これ、そういうこと?」


〔こうなったら実力行使です。全部見てください。選りすぐりのつづりん動画〕

「ぜ、全部!? めちゃくちゃあるけど……てかホラー多いな」


〔全部です〕

「え、えぇ……なぜ急に」


〔必ず……〕

「えっ?」 


〔必ず、とり蔵さんを詞ノ葉つづりに推し変させて見せますから〕


 冗談のようなセリフ、だがその言葉は力強かった。


「いや、それは流石に.....俺はフューたんガチ恋だから」

〔ふっ、望むところです。私は本気ですよ?〕

「えぇ.......!?」


 画面の向こう、顔の見えない彼女の表情に息を飲む。

 

 ポコライオンさんは言った、こんな声をした女性は星の数ほど居ると。


 だが俺の知っているこのウィスパーボイスの持ち主はポコライオンさんと、詞ノ葉  つづりと、綴音つづねさんだけ……。


 無意識に重なっていく。


 つづりんの顔が、綴音さんの顔が、ポコライオンさんへ。


「な、なんでそんなに詞ノ葉 つづりを推させようとするの?」


 もはや俺の中で目の前にあるライオンの瞳は、パッツンと切り揃えられた艶めく黒髪の下で輝くエメラルドの瞳に変わっていた。


 ……綴音つづねさんと見つめ合った時に見たあの綺麗な瞳だ。


〔もうっ。本当にどこまで鈍感なんですか? 十理とおりさんは。そんなの決まってるじゃないですか……〕


「ん?」


 とおり? あれ?

 ポコライオンさんって俺の本名……



〔私はあなた(推し)のことが ────〕



 大好きなんですから



────────

コーチ就任編 完

 ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。


 ストックを全部吐き出し、ここが文庫でいう一巻相当かなと思い完結にさせて頂きました。


 もちろんお話が完全に終わりかというとそうではなく、現在第二章を執筆中です。


 3rdアニバーサリーライブ、RVカップ、ジョン松の正体とは、杁ヶ池のヤンデレ化、フューたんは本当に十理に興味ない? そしてなにより詞ノ葉 つづりの想いは届くのか.......。


 数多の伏線をバラまきすぎたので二章でも回収しきれそうにありません......。既にプロットは完成しており、二章は主に つづり VS ライバルの新ヒロイン による十理争奪戦になる予定です。


 この鈍感男は、はたしてどこまで気づくのでしょうか。


 別作品も同時に執筆中につき、少し公開は遅くなると思いますが、また出会いがありましたら何卒よろしくお願いします。(筆が遅すぎて大変申し訳ない気持ち)


 最後に、このあとがきまで読んでくださった皆様へ、心からの感謝を。


 あと......最後の最後に......作品の評価と、一言だけでも感想を頂けましたら泣いて喜びます。

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― 新着の感想 ―
大変面白かったです。 男の友情も描かれているとリアリティが感じられて大変良きです
面白かったです。続き待ってます
とても面白かったです。 まあ、もう詰んてるのでとり蔵くんはあきらメロン。 なんならガチ恋してる推しから推し変しないと絶交だと脅されるやろ。 親友があんだけ前のめってる状況で矢印向けられても……ねぇ。
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