巡る手応え、定着する型
前回と同じやり方で進める。
それが一番確実だと、かおりはもう知っていた。
「じゃあ、これを使ってみてください」
新しく作った運搬用の道具を、数名の作業者に手渡す。畑仕事に慣れた者、体力に自信のない者、年配の者。意図的に、使う人を分けた。
「重さはどうですか?」
「背中、痛くなりません?」
「持ち替え、面倒じゃないですか?」
使ってもらい、聞く。その日のうちに、必ず。
「……ここ、もう少し幅があると助かるな」
「紐が食い込む感じがする」
「悪くないけど、坂だと揺れる」
「なるほど……」
かおりは、即座に書き留める。
反論はしない。説明もしない。ただ、受け取る。
◇
その夜には、もう作業台に向かっていた。
幅を少し変える。紐の位置を下げる。支点を一つ増やす。
「……よし」
翌日、また渡す。また使ってもらう。また聞く。
それを、数日。
「今度は、かなり楽だ」
「これなら長く使える」
「前のに戻りたくないな」
その言葉が出た時、かおりはようやく頷いた。
「これが……最終形」
◇
完成した道具を持って、リーナの元を訪れる。
「新しい運搬具です」
リーナは黙って受け取り、手に取る。
持ち上げ、背負い、少し歩く。
「……ほう」
視線が鋭くなる。
「前回と同じ流れですか?」
「はい。領内から、領外へ」
「回収品は?」
「改良して、売ります」
リーナは小さく笑った。
「型が、できましたね」
「……はい」
それが、かおりにとって何よりの評価だった。
◇
領内では、すでに噂が回っていた。
「また新しい道具が出るらしいぞ」
「今度は運ぶやつだって」
「前の鍬、楽だったよな」
興味は、期待へ変わっている。
使われなくなった古い運搬具は、自然と商人の元へ集まった。
それらは、職人の手で手直しされ、再び商品になる。
「無駄が、なくなっていく」
かおりは、その流れを静かに見つめていた。
◇
新しいものを作る。広げる。回収する。直す。また売る。
「このパターンが回れば……」
農具だけじゃない。生活用品も、作業道具も。少しずつ、少しずつ。
「急がなくていい」
便利すぎなくていい。でも、確実に楽になる。
その積み重ねが、領地を強くする。
かおりは、次の紙を取り出した。
「さて……次は何を“楽”にしようか」
静かに、しかし確かに。
この場所には、手応えが巡り始めていた。




