戻ってきた答え
領地を訪れた商人たちは、最初は半信半疑だった。
「便利そうではあるが……」
「実際に使ってみないとな」
そう言いながら、道具を手に取り、重さを確かめ、動かしてみる。畑仕事を思わせる動作を、何度か繰り返す。
そして、数本ずつ。
「試しにな」
「売れたら、また来る」
そう言って、彼らは来た道を引き返していった。
◇
数日後。
領門の見張りから報告が入る。
「以前来た商人たちが、また戻ってきています」
その言葉に、かおりは一瞬だけ目を瞬かせた。
――早い。
門の前には、見覚えのある顔ぶれ。
今度は迷いが少ない。
「前に買った道具、評判が良くてな」
「使った連中が、もう一本欲しいってさ」
今度は、数本ではない。箱単位での購入だった。
「この形、特に良かった」
「重さが丁度いい」
そんな具体的な言葉が、次々と出てくる。
◇
新たに作られた道具が並び、それが売れ、また外へ出ていく。
作る。売る。使われる。評価される。
その流れが、途切れずにつながっていた。
「……回り出したわね」
執務室で報告を聞きながら、かおりは小さく息を吐いた。
一過性ではない。
試し買いで終わらなかった。
“戻ってきた”という事実が、何よりの証だった。
「少しは……役に立てたかな」
独り言のように呟く。
◇
その夜、古い道具や設計を眺めながら、かおりは考え始めていた。
もっと楽にできる部分はないか。
少し形を変えるだけで、負担が減る所はないか。
「大きく変えなくていいのよね」
魔法のような道具。一目で世界を変える発明。そういうものではなくていい。
今、ここにある物。
今、皆が使っている物。
その“少し不便”を、少しだけ良くする。
「……改良品、ね」
紙に線を引き、形を書き足す。
握りの位置、刃の角度、長さの違い。
誰も驚かないかもしれない。
でも、確実に“楽になる”。
「それでいい」
領地が、無理なく前に進むために。
かおりは、次の道具へと静かに思考を巡らせていた。




