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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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食卓を越えて走るもの

食事の準備をしていると、裏口の方から軽い足音がした。


「おーい!」


顔を出したのはミリャだった。

手には籠。中で何かがぴちぴちと跳ねている。


「川で魚が取れたんだ! 一緒に食おうぜ!」


「あー! 丁度良かった!」


かおりは手を止めて振り向いた。


「今、何作ろうか考えてたところなのよ」


「それなら焼き魚だな!俺、焼くのは得意だからさ!」


「解ったわ。じゃあ私はパンとサラダを準備するわね」


役割は自然と決まった。



しばらくして、香ばしい匂いが漂い始める。


「おー!上手く焼けたぞ!」


ミリャが誇らしげに串を掲げる。


「……鮎?それとも岩魚?」


見た目はその中間。

細身で、銀色の腹をしている。


「名前は知らん!でも美味いぞ!」


「それで充分ね」


かおりは笑って、皿を並べた。


「パンとサラダもどうぞ」


「おう!」


二人で向かい合い、食事が始まる。



ミリャは魚を一口食べ、満足そうに頷いた。


「やっぱ焼き魚は最高だな」


「いい焼き加減よ」


そう言ってから、かおりはサラダの皿を差し出した。


野菜の上には、昨日作ったばかりのものがかかっている。


「……なあ」


ミリャが皿を覗き込む。


「サラダにかけてるの、何だ?」


「あー、昨日作ってみたのよ」


かおりは指差した。


「こっちはドレッシング。白い方はマヨネーズ」


「へー……」


少し警戒したように箸を伸ばす。


「食べてもいいのか?」


「もちろん」


一口。


次の瞬間。


「……うま!!」


ミリャの目が見開かれた。


「どっちも美味いな!!」


さらにもう一口。


「俺、生野菜苦手なんだけどさ……これかけると、普通に食える!」


「良かった」


かおりは、ほっと息をついた。


「遠慮せず使って」



しばらくして、ミリャが真剣な顔になる。


「なあ」


「なに?」


「この二つ……まだあるのか?」


「ええ。あるわよ」


その瞬間、ミリャは立ち上がった。


「よし!」


「……え?」


「これ、リーナの所へ持っていく!」


「あー……そうね」


かおりは一瞬考え、頷いた。


「お願いするわ」


「任せろ!」


ミリャは瓶を抱え、勢いよく走り去っていった。



――それから、しばらくして。


扉が、勢いよく開く。


「か・お・り・お・姉・様」


低く、よく通る声。


「……はい?」


振り向いた先には、腕を組んだリーナが立っていた。

背後には、どこか気まずそうなミリャ。


「聞きました」


にこり。

だが、目が笑っていない。


「昨日作ったばかりの“白いソース”と“謎の液体”」


「それを」


一歩、前に出る。


「……えーっと」


「私の所へは、“完成品だけ”届きましたが?」


ミリャが、そっと視線を逸らした。


「説明書、ありませんでしたよ?」


静かな怒り。


かおりは、思わず苦笑する。


「あ、あの……」


「詳しく」


リーナは、深呼吸してから言った。


「“最初から”説明していただけますか?」


こうして。


食卓を越えて走った二つの調味料は、

思わぬ形で、次の波紋を呼ぶことになるのだった。

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