表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/48

魔法というもの

お茶が少し冷めた頃、かおりは気になっていたことを口にした。


「ねえ、ミリィ。さっきから当たり前みたいに言ってるけど……魔法って、どんな感じなの?」


ミリィはきょとんとした顔をしてから、少し考えるように顎に手を当てた。


「どんな、と言われると難しいな。生活の中にあるものだ」


「生活?」


「火を起こす、水を出す、風を送る、土を動かす、回復を促す。生活魔法と呼ばれている」


かおりは思わず天井を見上げた。


「火・水・風・土・光……はいはい、定番あるあるね」


「あるある?」


「いや、こっちの話」


内心では、やっぱり来たか、と思っていた。異世界、魔法、属性。予想通りすぎて少しだけ不満だが、同時に納得もしてしまう。


「誰でも使えるの?」


「いいや。向き不向きがある。全部伸ばせる者もいれば、生活魔法だけの者もいる」


「戦闘用とかは?」


「才能がいる。訓練も必要だ」


ミリィは続けて言った。


「それに、使いすぎると倒れる。魔力は無限じゃない」


「……MP切れ?」


「えむ……?」


「え、じゃあレベルとか、ステータスとかは?」


ミリィは完全に分からない、という顔をした。


「……それは何だ?」


「数値で強さが分かったりしない?」


「しないな」


「残量ゲージとかも?」


「見えない」


かおりは深く息を吐いた。


「ゲーム的な概念、無しかぁ……」


どうやら、この世界に便利な可視化システムは存在しないらしい。


「じゃあ……私も、魔法って使えるの?」


ミリィは少しだけ驚いたように目を瞬かせた。


「試したことは?」


「ない。そもそも昨日まで魔法の無い世界にいたし」


ミリィは立ち上がり、かおりの前に来る。


「なら、感じてみるといい」


そう言って、両手でかおりの手を包んだ。


「……あ」


触れた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「これが魔力だ」


「……なんか、ある」


確かに、何かが流れている感覚があった。電気とも違う、血流とも違う、不思議な存在感。


「完全に無い者には、何も感じない。お前には、ある」


「じゃあ!」


「生活魔法なら、訓練すれば使えるようになるだろう」


かおりは少し身を乗り出した。


「どうやるの?」


「魔法は、イメージが大事だ」


ミリィはかおりの指先を軽く持ち上げる。


「まず、魔力を指先に集める。次に、はっきりとしたイメージを思い浮かべる」


「イメージ……」


「火なら、火の在り方を」


かおりは目を閉じた。


火。火のイメージ。


焚き火?ロウソク?マッチ?


しっくり来ない。


「……火……」


頭の中を探って、ふと浮かんだ。


「……ガスバーナー」


「がす……?」


次の瞬間。


指先に、青白い火が灯った。


勢いよく、真っ直ぐで、安定した炎。


「……!?」


ミリィが思わず一歩下がる。


「何だ!?この色は!」


「え、普通じゃないの?」


「火は赤や橙だ!こんな……澄んだ炎は見たことがない!」


かおりは慌てて指を振り、火を消した。


「ご、ごめん!イメージ、失敗した?」


ミリィはしばらく黙り込み、やがてゆっくりと首を振った。


「いや……失敗ではない」


「じゃあ?」


「お前の“火”だ」


かおりは自分の指先を見つめた。


「……私、何でも屋なんだけどな」


ミリィは小さく笑った。


「なら、その魔法も道具だ」


青白い炎の余韻が、まだ空気に残っている。


どうやらこの世界でも、かおりの常識は少しずつズレていくらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ