配管、やり直しますか!
「……よし」
かおりは、腕をぐっと伸ばした。
「貯水塔が出来るまで、手は止めてられないわね」
井戸は当たった。
水も確認できた。
だが、これで終わりではない。
「むしろ、ここからが本番」
かおりは、地面に引いた簡単な配管図を見下ろす。
「今の配管は、とりあえず繋いだだけ。これだと、後で貯水塔を付ける時に、また全部掘り返す羽目になるわ」
そんなの、二度手間だ。
「……やり直そう」
決断は早かった。
「パイプ、足りる?」
鍛治士の方を見る。
「ああ!頼まれてた分、もうほとんど出来てる。太さも、長さも、指定通りだ」
「さすが」
かおりは、にっと笑う。
「これなら、各家まで引ける」
地面に、溝を掘る。
「深さは、凍らない程度に。なるべく真っ直ぐ」
生活インフラは、派手さよりも堅実さ。
「ここ、曲げすぎると詰まるから注意ね」
弟子たちが、真剣な顔で頷く。
「……うん」
パイプを仮置きしながら、かおりは考える。
「この先、人が増えたら。今の一本井戸じゃ、足りなくなるかも」
ふと、思いつく。
「……井戸。あと、何ヶ所か掘っておこうかな」
◇
ミリャが、眉を上げた。
「もう一本、掘るのか?」
「うん」
かおりは頷く。
「予備があれば、メンテナンスもしやすいし、一つ止まっても、全部止まらない。水は、止めたらダメなやつだもの」
「確かにな」
ミリャも、納得した様子だ。
爺さんが、杖をついて近づいてくる。
「ほう……水を“点”ではなく“線”で考えとる」
「……線?」
「そうじゃ。井戸が点。配管と貯水塔で、線と面になる。良い考え方じゃ」
かおりは、少し照れた。
「壊れてから考えるの、嫌なんです」
「フォフォ」
爺さんは、満足そうに笑う。
作業は、地道だった。
溝を掘り、パイプを置き、接合部を確認し、埋め戻す。
派手な魔法は使わない。
確実さを優先する。
「……こういうのは、後で効くのよね」
かおりは、独り言ちた。
夕方。
仮配管は、ほぼ整った。
「……よし!貯水塔が立てば、一気に繋げられる」
そして。
かおりは、次の場所に目を向ける。
「次の井戸は……少し、離れた所かな」
一つの成功は、次の備えを呼ぶ。
この場所は、もう仮設ではない。
かおりの手で、
人が“住み続けられる場所”へと、確実に変わっていっていた。




