水脈ぶち抜く!
「……来てる」
かおりは、ハンマーを握る手に、力を込めた。
これまでと、感触が違う。
土でも、石でもない。
「……もう少し」
かん。
かん。
金属音が、鈍く変わる。
「――あ」
一瞬。
すとん、と。
手応えが抜けた。
「……え?」
次の瞬間。
ごぽっ。
管の中から、冷たい感触が伝わる。
「……来た!」
かおりは、目を見開いた。
「来た来た来た……!」
「――おおっ!!」
見ていた者たちから、声が上がる。
突き井戸の管の口から、じわりと水が滲み出していた。
「……ぶち当たった!やっぱり、水源だったんだ!」
かおりは、思わず拳を握る。
「やった……!」
感覚は、間違っていなかった。
土魔法で感じた、あの違和感。
確かに、そこに水はあった。
だが、喜んでばかりもいられない。
「……まずい」
水は、勢いよくは出ない。
むしろ、途中で止まりかけている。
「パイプ……」
かおりは、すぐに理解した。
「足りない」
水脈に届いたが、十分な深さまで、管が伸びていない。
「継ぎ足さないとこのままじゃ、安定しない」
「パイプ、もう一本!」
「予備は?」
「倉庫に、ある!」
声が飛び交う。
かおりは、一度深呼吸した。
「……落ち着いて水は、逃げない!今は、止める」
一時的に、管の口を塞ぐ。
「ふー……」
水の滲みが、落ち着いた。
◇
「……よし」
かおりは、腰に手を当てて、空を仰ぐ。
「一番大事な所は、越えたわね」
後は、技術の問題だ。
「ポンプを取り付けて貯水塔を建てて配管を回せば……」
想像するだけで、胸が熱くなる。
◇
ミリャが、近づいてきた。
「……やったな」
「うん」
かおりは、にっと笑った。
「これで、倉庫に頼らなくても水が使える!共同井戸、完成の目処が立ったわ」
「すげぇな……」
ミリャは、地面を見下ろし、感慨深そうに言った。
「水魔法じゃなくて、掘って水を出す。人が増えても、安定する」
「そう」
かおりは頷く。
「“生活”は、こういうのが大事なの」
少し離れた場所で、爺さんが静かに笑っていた。
「……ほう!やりおった!水脈を当てるか……」
魔法でも、占いでもない。
生活のための、感覚と工夫。
「また一つ、この場所は戻れん所まで来たのう」
だが、その表情に、不安はなかった。
かおりは、汚れた手を見つめる。
「……後は、ポンプと貯水塔!みんなに、お願いしないと」
水は、命だ。
この一打で、この場所は“仮住まい”から、完全に“定住地”へと変わった。
「よし」
かおりは、気合を入れ直した。
「ここからが、本番ね」
水脈をぶち抜いたその日。
この土地に、確かな“未来”が流れ込み始めていた。




