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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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お友達からの連絡

「……お、来たか」


倉庫の奥。

通信魔道具が、かすかに光を放った。


爺さんは、手を止めて魔道具を覗き込む。


「どうじゃ?」



『最初はな、相当警戒されたぞ』


向こう側から、聞き慣れた声。


『だが……上手くいった』


「フォフォ」


爺さんは、満足そうに笑った。


「それは何よりじゃ。調子はどうだ?」


『動く車椅子を見た瞬間、侯爵がな!完全にドン引きしておったぞ』


「はっはっは!」


爺さんは、腹を抱えて笑う。


「笑える!お主も、ここで同じ顔をしておったではないか」


『……まあ、確かに』


向こうも苦笑した声になる。


『慣れというのは、怖いな』



『補助器具の方も、問題なかった。お嬢様は、今、毎日練習に励んでおる』


『表情がな……明るくなった』


爺さんは、ふっと目を細めた。


「それは……良かったのう」


『侯爵も、たいそう喜んでおった。久しぶりに、声を出して笑っていたぞ』


「フォフォ……それは、かおりにも伝えねばな」



爺さんの表情が、少しだけ引き締まる。


「……問題は、その後じゃな?」


『ああ』


『かおりの性格については、話しておいた』


『名誉も爵位も権力も金も興味がないとな』


『侯爵、頭を抱えておったぞ』


「想像がつくわい」


爺さんは肩をすくめる。


『考える時間が欲しいと少し、領地に滞在してくれと頼まれた』


「ほう!何を、出してくるかの?」


『さあな?だが侯爵だ!もしかすると……あの街の領主を、変えるかもしれん』



爺さんは、静かに息を吸った。


「それは……良い話じゃな!そうなれば、かおりも街に安心して行ける」


『ああ!そうなるといい!また何かあったら、連絡する』


「フォフォ!」


通信が、ふっと途切れる。



爺さんは、しばらく魔道具を見つめていた。


「……世界が、少しずつ動き始めたか」


それは、かおりが望んだ形とは、少し違うかもしれない。


だが。


「守れる道が、見え始めたのう」



――その頃。


「かん!」


「かん!」


澄んだ金属音が、空気を震わせていた。


「……あと、三メートルくらい?」


かおりは、汗を拭いながら、突き井戸の管を見下ろす。


「水脈……たぶん、この下」


確信はない。


それでも。


「ここまで来たら、やるしかないわよね」


かん!


かん!


ハンマーを振る手に、迷いはなかった。



爺さんは、遠くからその様子を見て、微笑む。


「……知らぬうちに、大きな流れを作る娘じゃ」


だが、今のかおりは。


世界のことも、侯爵のことも知らない。


ただ――


水を引くために、

暮らしを良くするために、

目の前の地面を、ひたすら叩いているだけだ。


「あと少し、頑張ろう」


その一打一打が。


やがて人を呼び、

土地を潤し、

争いを遠ざける礎になるとも知らずに。


かん、という音が。


今日も、静かに響いていた。

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