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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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掘削開始

「……ここ、よね」


かおりは、地面に打った目印の杭を見下ろした。


土魔法で感じた、あの微かな違和感。

確証はない。理屈も曖昧だ。


それでも。


「何もしないよりは、ずっといい」


そう言って、自分に言い聞かせる。



まずは、突き井戸。


鍛治士が作ってくれた打ち込み用の管が、地面に横たえられている。

先端は鋭く、管は十分な厚みがあり、叩いても歪まなさそうだ。


「よし……」


「最初は、まっすぐ」


傾けば、後が大変になる。


かおりは、慎重に管を立て、位置を確認する。



その前に。


「弟子さん達、ちょっといい?」


声を掛けると、数人の弟子が集まってきた。


かおりは、倉庫から一つの装置を持ち出す。


「これ、小型ポンプ!水を吸い上げる道具よ」


弟子たちは、興味深そうに覗き込む。


「……構造は、単純ですね」


「でしょ?」


かおりは頷く。


「これを、少し大きくしたいの魔石を使ってもいいけど、出力は控えめで水を“汲み上げるだけ”過剰な圧力は、要らない」


弟子の一人が、顎に手を当てる。


「……回転部と逆止弁ですね」


「魔力は、補助程度に」


「できそうです」


「お願い」


かおりは、頭を下げた。


「量産はしない」


「まずは、一基!安全優先で」


「了解しました」



次に、木工士のところへ向かう。


「木工士さん」


「ん?」


「もし、水が出たら……」


かおりは、少し間を置いてから言った。


「貯水塔、作れる?」


木工士は、目を見開いた。


「……塔?」


「高い位置に水を溜めて、自然に流すの」


「重さはあるから、頑丈にね」


「……面白いな」


木工士は、にやりと笑った。


「水が出たら、設計考えよう」


「ありがとう」



準備は、整った。


後は――


「……掘るだけ」


かおりは、突き井戸の管の上に、打ち込み用のキャップを載せた。


ハンマーを握る。


「……ふぅ」


深呼吸。


そして。


ガンッ!


金属音が、澄んだ空気に響いた。



ガンッ!

ガンッ!


少しずつ、確実に。


管は、土の中へ沈んでいく。


「……いい感じ」


真っ直ぐだ。


打つ。

確認する。

また打つ。


単調だが、集中を切らさない。



途中、汗が額を伝う。


「……十五メートル、か」


まだ先は長い。


それでも、不思議と不安はなかった。


「生活の基盤を、作ってるんだもの」


派手じゃない。

でも、確実に必要なこと。



管は、さらに地中へ。


ガンッ!


その音を聞きながら、かおりは思う。


水が出れば、世界が変わる。

出なくても、次がある。


「……まずは、一歩」


打ち込み井戸の掘削は、こうして始まった。


この一振り一振りが――

この場所を、“拠点”から“暮らしの場”へと変えていくのだと。


かおりは、まだ知らない。


だが、確かに。


この日打ち込まれた管は、

後に「最初の水脈」と呼ばれることになるのだった。

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