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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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謎の種と耕運機講習会

「……さて」


かおりは、倉庫前に並べられた小袋を見下ろした。


「これが……謎の種、ね」


ミリャから渡されたものだ。

布袋や紙袋に分けられているが、文字はない。形も色も、見覚えがあるような、ないような。


「この世界の野菜って、本当に自由よね……」


丸いもの、細長いもの、角ばったもの。

種の時点ですでに個性が強い。


「まあ、考えても仕方ないか」


育ててみれば、分かる。



その前に。


「……よし」


かおりは、倉庫の中へ声を張った。


「弟子さーん!集まってください!」


呼ばれて集まってきたのは、魔術師の弟子たち数名と、作業を手伝っていた者たち。


「今日はね」


かおりは、小型耕運機を軽く叩いた。


「これを見せます」


「おお……」


すでに噂は回っていたらしく、皆の視線が一斉に集まる。


「これが、小型耕運機」


「畑を耕すための道具よ」


「魔力で動くけど」


ここで、少し間を置く。


「まず言っておくね」


表情を引き締める。


「これは、便利な道具だけど」


「危ない道具でもある」


場の空気が、自然と引き締まった。



「だから今日は」


「作り方と使い方、両方やります」


「まずは作製から」


かおりは、事前に用意していた部品を並べる。


回転軸。

魔力制御部。

安全遮断用の簡易機構。


「基本構造は、同じ」


「でもね」


かおりは、制御部を指差す。


「ここ」


「出力を、わざと弱くしてる」


「え?」


弟子の一人が声を上げる。


「弱くて、大丈夫なんですか?」


「大丈夫」


かおりは即答した。


「畑は、壊すものじゃない」


「人が押して歩ける範囲で、十分」


「それ以上は――危険」


爺さんの言葉が、頭をよぎる。


便利なものほど、制限が必要。



数時間後。


「……よし」


倉庫前に、小型耕運機が三台並んだ。


「これで、必要分はひとまず確保」


ミリャが感心したように言う。


「早ぇな」


「設計が固まってるからね」


「……次」


かおりは、手を叩いた。


「ここからが本番」



畑予定地。


「講習会、始めます!」


かおりは声を張った。


「まず」


「刃が回ってる時は、絶対に近づかない」


「足元注意」


「服は、だぶつかせない」


「手袋は必須」


「止めたい時は、これ」


レバーを離す。


刃が、すっと止まる。


「手を離せば止まる」


「これ、命守る機構だから」


皆、真剣に頷く。



実演。


かおりが、ゆっくりと耕運機を押す。


ざく、ざく。


「このくらいで、十分」


「深くしすぎると、根が育たない」


「へぇ……」


弟子たちは、感心したように見ている。


「次」


「一人ずつ、触ってみよう」


最初は、おっかなびっくりだったが。


「……お、軽いな」


「押すだけだ」


「魔法より、安定してるかも」


次第に、表情が和らいでいく。



一通り終わったところで。


「最後に、大事なこと」


かおりは、真剣な顔で言った。


「これは、勝手に改造しないで」


「出力上げるの、禁止」


「武器転用、絶対ダメ」


空気が、ぴんと張る。


「もし壊れたら」


「必ず、私か、爺さんに言って」


「……分かりました」


弟子たちは、揃って頷いた。



講習会が終わり、畑には耕された区画がいくつもできていた。


「……よし」


かおりは、ミリャからもらった謎の種を手に取る。


「じゃあ」


「次は、種まきね」


何が育つかは、分からない。


でも。


「育てば、食べられる」


「食べられれば、生活になる」


耕された土の上に、そっと種を落とす。


家庭菜園(仮)は――

いよいよ、“みんなの畑”として動き出したのだった。

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