次は、畑?
「さて……」
朝の光が差し込む中、かおりは伸びをした。
「今日は、何しようかな?」
建築は、ほぼ終わっている。
住む場所は整った。
倉庫も安定稼働。
建築用の道具も、一通り揃えた。
「やること……」
考えて、首を傾げる。
「……無い?」
いや、正確には。
「急ぎの用事が、無い」
それが逆に、落ち着かない。
◇
ふと、窓の外を見る。
家の横。
まだ手つかずの土地。
「……畑」
そうだ。
食料は、備蓄と調達に頼っている。
「ずっと、買うだけってのも……」
自給自足を目指すと言っていたじゃない。
「畑、耕すか」
決めると、行動は早い。
「確か……」
倉庫へ向かい、奥を探る。
「……あった」
小型耕運機。
元の世界で使われていた、缶ガス式。
家庭菜園向けの、小ぶりなやつ。
「これなら……」
と、思った瞬間。
「あ」
缶ガスの棚は――空。
「……無いわね」
在庫、ゼロ。
「そういえば」
廃棄予定で回収した時、
ガス缶は別管理だった気がする。
「……詰んだ?」
いや。
かおりは、耕運機をじっと見つめる。
「……動力が、無いだけ」
本体は、ある。
刃も、構造も、問題ない。
「なら!動力、変えればいいじゃない」
◇
かおりの頭の中で、歯車が回り始める。
「缶ガスの代わりに……」
魔力。
「……いける、よね?」
すでに、魔力鋸や発電機を作っている。
回転運動も、制御も、経験済みだ。
「問題は……」
出力。
耕運機は、土を掘り返す。
力は、そこそこ必要。
「でも建築用の丸ノコよりは、軽い調整すれば……」
できそうな気がする。
◇
試しに、耕運機を分解する。
「……エンジン部分」
ここを、丸ごと置き換える。
「回転軸は、そのまま使えるなら……」
魔力発電機 → 制御部 → 回転軸。
いつもの構成だ。
「……あ」
ふと、手が止まる。
「これ農機具、よね?武器じゃない……でも」
土を掘る力。
刃の回転。
「扱い方、間違えたら危ないわね」
決めた“線引き”が、頭をよぎる。
「出力は人が押して歩ける程度。深く掘りすぎない。暴走しない……安全第一」
◇
試作一号。
魔力を流す。
「……お」
刃が、ゆっくり回り始める。
「回転、安定」
持ち上げると、止まる。
「良し」
地面に下ろす。
ざく、ざく、と
土が軽く崩れる。
「……耕せてる」
深すぎない。
重すぎない。
「これなら家庭菜園には、十分ね」
◇
額の汗を拭きながら、かおりは笑った。
「……結局農機具、作ってるし」
何でも屋。
発明家。
今は――農家見習い。
「でも畑があれば生活、安定するし皆も、助かる」
ふと、周囲を見る。
「……また、説明書いるわね」
安全な使い方。
やってはいけないこと。
「……管理側の仕事、増えてる」
でも、不思議と嫌じゃない。
「よし明日は、畑の区画決めからね」
かおりは、改造耕運機を倉庫へ戻した。
次の“生活の基盤”づくりが、静かに始まろうとしていた。




