休みの日、どう過ごす?
「……終わったぁ」
かおりは、思い切り背伸びをした。
車椅子と補助器具。
設計から試作、調整、線引き、説明書作成。
気を張り続けていた大きな仕事が、ようやく一区切りついた。
「はぁ〜……」
一気に力が抜ける。
「……疲れたわ」
改めて思う。
こちらに来てから――働き詰めだった。
拠点の確保。
防衛。
建築。
魔力研究。
魔道具。
人との調整。
「今日くらい……休んでも、罰当たらないわよね」
そう呟いて、家の中へ戻る。
◇
椅子に座り、テーブルに頬杖をつく。
「さて」
「休み、休み……」
何をするか、考える。
――そこで、気づいた。
「……あれ?」
スマホはある。
ポケットから取り出して、画面を点ける。
電源は入る。でも、電波は無い。
ネットも、動画も、ゲームの更新もできない。
「映画……」
無い。
映画館なんて、この世界にあるわけがない。
「買い物……」
街は遠い。私じゃ〜あ。。街に行く勇気も無い。
「……詰んだ?」
思わず、乾いた笑いが出た。
「私、休みの日って何してたっけ……」
元の世界では。
スマホを見て。
動画を流して。
必要もないものをネットで眺めて。
気づいたら夕方。
「……それ全部、出来ないじゃない」
ぽすっと、背もたれに体を預ける。
「この世界の人って休みの日、何してるの……?」
◇
外から、楽しそうな声が聞こえた。
木を削る音。
誰かが笑っている。
「……あ」
ふと、思い出す。
ミリャたち。
狩りがない日は、武器の手入れ。
鍛冶士は、試し打ち。
木工士は、趣味と実益を兼ねて加工。
洋裁の人は、布を触りながら談笑。
「……仕事と趣味が、同じなのね」
それはそれで、すごい。
「私は……」
考えて、止まる。
「何が好きなんだっけ?」
何でも屋。幅広く浅くがモットー。
直すのも、作るのも、嫌いじゃない。
むしろ、好き。
「……それ、結局仕事じゃない」
苦笑いする。
◇
立ち上がり、窓を開ける。
森の匂い。
風の音。
遠くで鳥が鳴く。
「……静か」
こんな時間、久しぶりかもしれない。
椅子を外に持ち出し、縁側代わりの段差に腰を下ろす。ただ、ぼーっとする。
何もしない。
考えない。
「……贅沢ね、これ」
しばらくすると、不思議と心が落ち着いてくる。
「この世界では休みってこういうのが、普通なのかな」
◇
しばらくして、ミリャが通りかかった。
「お? どうした?」
「休み」
「ほう?」
「何もしてないの」
ミリャは一瞬考えてから、笑った。
「それ、良い休みじゃねぇか」
「……そう?」
「俺たちも、狩りが無い日はこうやって、空見たり、酒飲んだりだ!何もしねぇ日も、必要だぞ」
かおりは、空を見上げた。
「……そうかもずっと、走ってた気がするし」
◇
夕方。
結局、何か特別なことはしなかった。
でも。
「……悪くないわね」
肩の力が抜けているのが、はっきり分かる。
「休みの日に困惑するとは思わなかったけど」
かおりは、小さく笑った。
「次の休みは……」
「もう少し、上手く休もう」
そう心に決めて、家の中へ戻る。
今日は、それで十分だった。




