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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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試作四苦八苦

「……うーん」


かおりは、唸りながら補助器具を見つめていた。


設計図通りに作ったはずだ。

出力は抑えた。

魔石も小型。

風の流れも限定的。


――なのに。


「……微妙に、思ったのと違う」


試作品一号は、動きが鈍すぎた。


装着して一歩踏み出してみると、

補助が入るのが遅い。


「これだと……」


「転びそうになってから、助ける感じね」


それでは意味がない。

助けたいのは、“動こうとした瞬間”だ。


「じゃあ、反応を早く……」


魔力導線を少し調整し、再度試す。


今度は――


「っ!?」


一歩目で、体が前に引っ張られた。


「危なっ……!」


慌てて踏みとどまる。


「ダメダメ!これ、強すぎ!」


ほんの少し調整しただけなのに、

結果は極端に変わる。


「……人の体って、本当に、繊細ね」



次は、動力付き車椅子の方。


こちらは、押す人の負担を減らす設計だ。


「前進時に、軽く風を後ろから当てる……」


理屈は簡単。

でも、実際にやってみると――


「……あ」


ゴロゴロ……ではなく。


スッ……と、想定以上に進む。


「ちょっと待って!」


慌てて止める。


「これ、平地だからいいけど……坂道だったら?」


想像しただけで、背筋が冷えた。


「……これは。。ブレーキ連動、必須ね」


止めようとした時に、

魔力が即座に遮断される構造。


「便利にすると制御が、もっと必要になる……」


爺さんの言葉が、頭をよぎる。


――便利なものほど、制限が必要。


「ほんと、その通り」



何度も。


作っては、壊し。

調整しては、戻し。


「……はぁ」


気づけば、周囲には失敗作が並んでいた。


弟子の一人が、遠慮がちに声をかける。


「……かおりさん」


「はい?」


「これ……」


「魔法の問題というより、人の動きですよね?」


その一言で、かおりははっとした。


「……そうか」


「私、道具側ばっかり見てた」


歩く。

押す。

立ち上がる。


それぞれに、癖がある。

力の入れ方も、タイミングも違う。


「……なら、機械が主役じゃ、ダメなんだ」


かおりは、図面を引き直す。


「人の動きに合わせる道具は、後から付いてくる」



発想を変えると、少しずつ見えてきた。


常時補助ではなく、

“力が入った時だけ”反応する構造。


風魔法を、押すのではなく、

“軽く受け止める”ように使う。


「……これなら」


試作四号。


装着して、一歩。


「……あ」


軽い。


自分で歩いている感覚は、そのまま。

でも、負担だけが減っている。


「……これいい……!」


走れない。

跳べない。

無理は、できない。


でも。


「ちゃんと、“補助”だ」



爺さんが、いつの間にか背後に立っていた。


「どうじゃ?」


「……四苦八苦してます」


正直に言うと、爺さんは笑った。


「それで良い」


「簡単に出来るなら」


「それはもう、危険じゃ」


かおりは、少し考えてから言った。


「……思ったんです。この道具使う人によって調整、必要ですね」


「うむ。だからこそ」


爺さんは、頷く。


「量産は禁止、じゃ一人一人に合わせて作る。それが、最も安全じゃ」


かおりは、深く頷いた。


「……時間、かかりますね」


「かかる方が、良い」


爺さんは、静かに言った。


「急ぐと大事なものを、置いていく」



夜。


作業台の上には、

失敗作と、成功に近い一つ。


「……完璧じゃないでも一歩、前進」


かおりは、そっと試作品を撫でた。


治さない。

変えすぎない。

でも、支える。


「……これなら渡せる、かもしれない」


まだ、完成ではない。


けれど。


試作四苦八苦の中で、

かおりは確かに掴み始めていた。


――“人に寄り添う道具”という答えを。

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