建築関係から固めよう
「……次、何からいきます?」
作業台の前で、かおりは顎に手を当てた。
建築は進んでいる。
魔力鋸のおかげで作業効率は段違いだ。
だが――
「まだ、人力が多いわね」
弟子たちも頷く。
「正直、鋸だけでもかなり楽ですが」
「穴あけと、固定が追いついてません」
「ですよね」
かおりは指を折りながら考える。
「まず必要なのは」
「ドリル」
「釘打ち機」
「それと……」
ふと、丸太の山を見る。
「……板材が足りない」
今は、丸太を割って削っている。
手間も時間もかかる。
「魔力鋸が出来たなら」
「次は、魔力丸ノコ……」
言いかけて、首を振った。
「ううん」
「その前ね」
弟子の一人が、首を傾げる。
「前……ですか?」
「丸太から板を切るなら」
「帯鋸の方が先」
「丸ノコは、その後」
弟子たちが、目を丸くした。
「……発想が」
「職人ですね……」
「何でも屋ですから」
かおりは、軽く笑う。
◇
「確か……」
倉庫の奥。
積み上げられた箱をどかしながら、かおりは記憶を辿る。
「回収品で」
「製材用の帯鋸……」
「……あった!」
埃をかぶった機械。
電動帯鋸。
「動くかは、分からないけど」
「構造を見るには、十分」
弟子たちが集まってくる。
「……これは」
「刃が、輪になっている……」
「回し続けるんですね」
「そう」
かおりは、指で空中に図を描く。
「一定方向に」
「一定速度で」
「安定して」
「……魔力向きですね」
一人が、ぽつりと呟く。
「モーター部分を」
「魔力振動に置き換える?」
「回転じゃなくて」
「循環、ね」
「刃自体を動かす」
「支点を固定して」
弟子たちは、次々と意見を出す。
「魔力鋸の応用だ」
「でも、長時間回すなら」
「安定化が必要」
「……魔力充電器、挟む?」
「挟む」
かおりは、即答した。
「直接は危ない」
◇
かおりは、ふと真顔になる。
「ねえ」
「一つ、確認しておきたいんだけど」
弟子たちが、視線を向ける。
「向こうの世界の機械を」
「そのまま使えば、早い」
「でも」
「それだけに頼ったら」
「ここで、再現できない物になる」
「……確かに」
「壊れたら、終わりですね」
「そう」
かおりは、静かに言った。
「その場限りの便利」
「それは、何でも屋のやり方じゃない」
弟子たちは、真剣な顔で頷いた。
「構造を理解して」
「魔力で、置き換える」
「この世界で、作れる形に」
「それが、正解だと思う」
「……機械メーカーみたいですね」
誰かが、苦笑した。
「通り越してるかも」
かおりも、笑う。
「でも」
「作れる人が増えれば」
「便利は、残る」
◇
まずは、帯鋸。
刃は、鍛冶師と相談。
魔力振動に耐える材質にする。
駆動部は、魔力鋸の拡張。
振動ではなく、連続循環。
安定化は、魔力充電器。
魔石集合体を挟む。
弟子たちは、図面を描き、
魔術式を書き込み、
何度も消して、書き直す。
「……これなら」
「いける」
「いけます」
かおりは、皆を見回した。
「じゃあ」
「やりましょう」
「帯鋸、魔力化計画」
弟子たちが、声を揃える。
「はい!」
倉庫の中は、再び活気に満ちた。
建築のための道具。
だが、それはただの道具ではない。
この世界で、
この世界の材料で、
再現できる技術。
かおりは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「……何でも屋、恐るべしね」
そう呟きながら、
次の図面に、線を引いた。




