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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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危険な魔術研究の副産物処理場

「……よし」


爺さんは、倉庫の前で一人頷いた。


表向きの看板は、これで決まった。

――危険な魔術研究の副産物処理場。


近寄りたくない。

関わりたくない。

面倒そう。


この三拍子が揃えば、余計な好奇心は自然と遠ざかる。


「時間は……稼げる」


それも、かなりの間。


普通の人間は、“危険”という言葉に弱い。

理解できないものには、無理に首を突っ込まん。


「問題は……」


爺さんは、倉庫の壁に背を預けた。


「材料じゃな」


魔力集束板は完成した。

魔石の再生も、限定的ながら可能になった。


だが、肝心の“空の魔石”は数が足りん。


「……ふむ」


少し考え、口元を歪める。


「なら、集めさせればよい」


やり方は、簡単だ。


危険な魔術研究には、副産物が出る。

それを安全に処理できるのは、限られた場所だけ。


「つまり」


「使い切った魔石は、危険物」


「不用意に捨てれば、何が起きるか分からん」


噂として流すには、十分だ。


「“副産物処理場では、空になった魔石を引き取る”」


「“処理費は不要。ただし、再利用はしない”」


「……これで良い」


正義感のある者は、持ち込む。

面倒を嫌う商人も、まとめて持ってくる。

魔石を使う魔道具屋や冒険者は、特にだ。


「自然に集まる」


「しかも、誰も疑わん」


爺さんは、満足そうに頷いた。


「回収した後は……」


「中で、選別するだけじゃ」


かおりには、最低限しか伝えない。

細かい政治臭い話は、あの子の仕事ではない。


「生活を守るのが、あやつの役目」


「汚れ仕事は、わしが引き受ける」


その日の午後。


爺さんは、久しぶりに通信具を取り出した。

古いが、信頼できる品だ。


「……さて」


魔力を通し、短い符号を刻む。


相手は、王都に居る“古い知り合い”。


「……久しいのう」


返ってきた声は、落ち着いていた。


『珍しいな。どうした』


「ちと、面倒な芽を拾っての」


『面倒?』


「世界を揺らしかねん類のな」


少し、間が空いた。


『……場所は』


「未開地」


「領主の目は、まだ届いておらん」


『それは、運が良い』


「じゃが、いつまでもは持たん」


爺さんは、率直に言った。


「だから、頼みがある」


『聞こう』


「もし、妙な噂が上がったら」


「“危険な研究地がある”と聞いたら」


「深掘りせんでくれ」


『……なるほど』


「表向きは、失敗魔法の処理場」


「中身は、静かな生活圏じゃ」


通信の向こうで、低い笑い声がした。


『相変わらず、面倒なことを引き寄せるな』


「誉め言葉として受け取っておこう」


『貸し一つだ』


「助かる」


通信が、静かに切れる。


爺さんは、空を見上げた。


雲が、ゆっくりと流れている。


「……これで」


「外は、わしが抑える」


「中は、あやつらが育てる」


倉庫の中から、笑い声が聞こえた。

木を削る音。

風魔法が揺れる気配。


「……悪くない」


この場所は、まだ小さい。

だが、確実に“根”を張り始めている。


「副産物処理場、か」


爺さんは、杖を鳴らして歩き出した。


その名の裏で、

本当に処理されるのは――


世界を壊しかねない“余計な欲”なのだから。

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