表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/151

重さを運ぶ知恵を運ぶ

「……次は、少し大きめね」


かおりは、作業台の前で一枚の紙を広げた。

そこには簡単な線だけで描かれた二つの形。


手押し車。そして、手引き車。


「これがあれば、一度に運べる量が変わる」


今まで作ってきた道具は、あくまで“人の動きを助ける”ものだった。

だが、これは違う。


「これは、“力そのものを代替する道具”」


だからこそ、慎重になる。



まず考えたのは、重さだった。


「軽すぎると壊れる。重すぎると意味がない」


無駄な装飾はいらない。曲線も最小限でいい。


「必要なところは厚く。不要なところは削る」


木材を中心に使うのは、理由がある。

加工ができる。修理ができる。

そして、この領地で手に入る。


「金属を使いすぎると、真似できなくなる」


それは、今までと同じ判断基準だった。



次は、バランス。


「これが一番大事ね……」


荷を載せた時、どこに重さが集中するか。

押す人の力が、どこへ逃げるか。


「軸は……ここ」


指で、紙の上をなぞる。


「車輪の位置を、ほんの少し後ろに」


それだけで、体感の重さは変わる。

理屈は知っている。

でも、この世界で試すのは初めてだ。



作業は、今までより時間がかかった。


「やっぱり、細かいわね……」


削る。測る。組む。また外す。


木工師にも手伝ってもらいながら、少しずつ形にしていく。


「この角度、どう思います?」


「……悪くないが、力が逃げるかもしれん」


「じゃあ、ここを少し――」


何度も、やり直す。

魔法は使わない。近道もしない。


「これは、“技術”じゃなくて“道具”だから」



数日後。


ようやく、二台が並んだ。


「……できた」


手押し車は、前輪一つ。小回りが利き、狭い畑向き。


手引き車は、二輪。安定性が高く、重い荷向き。


どちらも、見た目は質素だ。だが、触ればわかる。


「軽い……」


かおり自身が押してみて、頷いた。


「これなら、力の弱い人でも使える」



もちろん、これで終わりではない。


「次は……使ってもらう」


前と同じだ。数人に渡し、使ってもらい、聞く。


「重い?」


「曲がりにくい?」


「怖くない?」


答えを集めて、また直す。


時間はかかる。でも、それでいい。


「急いで広げる必要はない」


一つずつ。確実に。


かおりは、完成したばかりの手押し車に手を置いた。


「これが広がれば……運べる世界が、少し広がる」


重さを運ぶ道具は、

同時に、暮らしの余裕も運んでいく。


その第一歩が、今、静かに動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ