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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

タイトル未定2025/12/12 23:05

作者: 星座
掲載日:2025/12/12

夏休み、それは長いようでそうでもないような。


俺、瀬川陽翔セガワハル十四歳の最初で最後の夏は、どこか曖昧で、よく分からないけどなにか

 ——抜け落ちている——

 ような変な感覚。


 その違和感を胸の奥で誤魔化しながら、今日も���へと歩いていった。

 

 山奥、苔むしたレールの上に古い電車が佇む。

 サビの色はあまりに濃く、元の色がどんな姿だったかもわからない。

 その横には謎の石像、やはり苔だらけでなにか分からないが、形は、龍?のようだ。

 ——————————

 「とりあえず、今日はここで過ごそう、変に動く方が危ない」

「は?マジで言ってる?」やっぱりリンは嫌って言うけど、屋根があるだけマシだろう。

 「ハルが言うなら…」ユウは不安そうだ。

「ベッドでも無いかな〜」

「いや、サガショウ…いくらなんでも、ある訳ないでしょ」とコトリが笑う。

「あったら苦労してないよ〜」

 しばらく探索していた。

 その時————

「え、あ、この電車、寝台列車だわ、」

「えぇ?!」

 みんな目を見開いて驚く

 そりゃそうだ、こんな偶然あるのだろうか……?

 リクは黙って壁の錆を触った。

 

 深夜、0時過ぎだろうか……もう、時間の感覚もよく分からない。

 幼なじみ三人は、展望デッキから星空をながめていた。

 ふと、ハルが——

「なんで、こうなっ……」

 急にリンが慌てた用にハルの口を押さえた。

「今日だけは、忘れよう。ね」

 ユウは静かに目線を逸らした。

 この言葉は禁句であり、触れてはいけない〝過去〟があった。

 

 「てかさ、この列車動かないのかな?」

「逆にリンさ、このボロさ見て動くと思ったの?絶っ対動かないって」

 

 ——ゴゴゴゴ——

「な、なんだ?!」

 「列車が…動いた?!」

『えぇぇ!!』

 急に列車が空に向かって走り出した。

 中にいた他の三人も慌てた様子で出てきた。

 「お、おい!!待て待て!うわぁぁ?!」

「空、空にっ!列車がぁっ!うぉぉ!!!」

「え、えぇぇっ?!……」

 サガショウとコトリは興奮混じりに叫んでいる。

 いつも静かなリクが、冷静さを失っている。

 

 列車は木々を抜け、星空へと駆けて行った。

 錆びて色の分からなかった車体は、星の光に照らされる度に深い青色に輝いて変わっていった。

 それは、美しいほど幻想的で。

 同時に、言いようのない恐怖を孕んでいた。

 

「あぁ、これならずっとここに居ても良いかも」俺はそう思った。

 しかし誰も返事はしなかった。

 きっと無数の星に見とれていたんだ。

 

 数日が経った——

 朝は来ない、帰り方が分からない、食料も尽きてきた。

 そして、こんななんて事ない中学生達だけじゃ、いつか問題が起きることは何となくだが予想がついていた。

 

 コトリが残り少ない食料を食べたのだ。

 

 俺は怒りと焦りで力任せに胸ぐらを掴み上げ、コトリの身体を窓の外に押し出した。

「あ、あぁっ!!」

「おい……お前っそれ!」

 残り少ない食料を一人で食べようだなんて、ふざけるなよ。

 

 騒ぎを聞きつけて他のメンバー達が走ってきた。

 

「お、おい!ハル!やめろって!」ユウはそう言うが、こいつ一人で食料を食べたらお前もどうなるか分かんないだろ。

 

 その時

 「痛っっ!」コトリの頬を血がつたう。

 「え…………」

 星屑が流れコトリの頬を切った。

「あ、あ……俺っ、」

 それと同時に——

 車内がわずかに豪華になった。

 慌てて、ハルはコトリを車中に戻した。

 皆、星屑の威力に怯えていた。

 

 ————

 な、何なんだよ、あれ。

 俺の手はまだ震えていた。

 罪悪感から一人になりたかった。

 

 車掌室……無我夢中で走った。

 

 車掌室には人がいなかった。

「いや、どうやって運転してんだよ…ま、何かしらないのか…?」

 車掌室を探索する。

「食べられそうなもの……無い、か」

 

 すると、ボタンがたくさんあった。ほとんど壊れてランプが付いていないが、その中に唯一ランプがまだ光っている物が何個かあった。


 ボタンには順に

 鳥————

 空————

 翔————

 翼————

 友————

 光————

 と、書いてあった。なぜか鳥と書いてあるボタンだけ光が弱かった。

「なんか変な感じだ、い、いやあまり深く考えないように…」

 これは…あんまり考えたくないんだけど、前読んだマンガにあった話みたいに、

 ランプがメンバー分あって最後に残ったランプの人しか生き残れない、

 みたいなやつ。

 「考えれば考えるだけおかしくなりそうだ」もうやめよう。

 

 みんなが寝静まった頃

 コトリが————飛び降りた。

 断末魔だけが夜空に消えていく——————————

 

 リンは布団を深く被った。

 

 目が覚めると

 座席にはコトリの震えた字の手紙が落ちていた。

 リンは黙ってそれを拾い、丸めてポケットに入れた。

 

 やはり列車は動き続けている。

 そして、昨日より明らかに、車内が豪華になった。食料も最初より増えていた。

 この列車はまるで

〝歓迎している〟

 かのようだった

 皆はこの列車の仕組みに薄々気づいていた。

 

 「なーんかさ、星空は綺麗でいいんだけど、ずーっと星空だと朝とか夜とか分かんなくない?」リンが言う。確かにそうだ。

 「寝て起きた時点で朝にする?」話し合って、寝て起きた時点で朝らしい、なんでもありだな。

 

 ある朝————

『じゃあお前が死ねばよかっただろ!!』

『は、はぁ?ふざけんなよ!!』

 車内に怒鳴り声が響いた。

 サガショウとリクが怒鳴りあっていた。あのリクが声を荒らげるなんてよっぽどの事態だろう。

 ユウとリンが仲裁に入ろうとするが、二人が収まることはなく、リクが星屑を掴んだ。

 リクの手から血が垂れた。

 「お、おい!リク!」

「最初から…最初からお前さえ居なければ…!」

 「や、やめっ……」

 光が走りサガショウが倒れた。

 みんなが駆け寄った時には、サガショウはもう息をしていなかった。

 一瞬の事だった。リクはその星屑で自分の首を刺した。

 「あ……!」

 「リク!!」

 列車は、さらに豪華になった。

 いや、もう〝列車〟とは言えないほど美しくなっていた。

 ——————

 残ったのはユウ、リン、ハルの幼なじみ三人。

「お前ら、信用してるから、な」俺は、恐怖からそんな事しか言えなかった。

 気を紛らわすために、三人で思い出話をした。

 

 小六の夏休み最終日。

 幼なじみ三人はいつもの公園のブランコのそばでダラダラしていた。

 夕方の風は少し涼しくて、蝉の声が弱々しくて、

 ————あの日だけはやけに静かだった。————

「あ、あのさ、なんか夏終わるの早くね?」

 ユウがブランコを足で止めながら言う。その声はどこか少し寂しげだった。

 「早いよ、てかさ…今年さ三人で遠く行けなかったよね」リンが見上げた空に指を伸ばした。

 その癖は今も変わっていない。

「中学入ったら行こうぜ、遠くに、海とか、山とか?ちゃんと計画立ててさ」————

「ハルがそんなこと言うの珍しいね」とリンがわらう————

 その時、ユウのポケットから折れた紙が落ちた。

 「何それ?」

「あ、いや……」

 リンが紙を拾って、広げた。

 そこには、拙い字でこう書かれていた。

『今年の夏、三人で遠くへ行きたい。』読み終わったリンは、珍しく静かに微笑んだ。

 そして、ユウは小さく呟いた。

『……三人なら、どこまでも行けると思ってた』

 ——————————

 日が沈みきる直前、三人はベンチに並んで腰を掛けながら、最後の夏の空を眺めた。

「中学こそ、絶対行くぞ」

「約束、ね」

「うん、絶対」

 その約束は幼い三人だけの宝物であって、そして

『未来への扉』のつもりでもあった。

 小さな紙切れは三人の間で〝宝物〟になった。

 

 そんな〝遠くへ行く夢〟が、

 まさか——

 こんな形で叶うなんて、その時は誰も考えていなかっただろう。

 ————————。

 

 三人は笑っていた。

 泣きながら、笑っていた。


 そして突然——

 「ねぇ、二人は…帰りたい?」

 リンが言った。

「え…リ、リン…?」背筋が凍った。リンならやりかねない、ずっとそう思っていた。その次に続く言葉を聞きたくなかった。

 

 「ウチは、もう、どっちでもいいかな〜」

 空を見るリンのその目は、とても美しかった。

 「今なら、空も飛べる気がしてさ」

 「え、リン……」

 

 ————————————。

「名前のない自分」

 

 

 三人が小五の春頃の話。


 放課後——

 人気のない図書室に、リンだけがぽつんと座っていた。


 ユウとハルは、約束していたわけでもないのになんとなくそこへ探しに来た。

「おーい、リン?帰るぞー」


 リンは本を閉じた。

 表紙には “鳥の図鑑”

 昔から、鳥と空ばかり見ていた。


 「また鳥?好きだね、ほんと」

 リンは笑わなかった。

 いつもの調子じゃない。


 「ねぇ…二人はさ、自分の“性別”って気にした事ある?」


 ユウとハルは顔を見合わせる。


 「あ、俺?俺は…別に気になったことないな…なんで?」


 リンはしばらく指先で本の角を触り続けた。

 何かを言うか迷っているような様子だった。


 そして、小さく震えた声で言った。


 「“男”とか“女”とか…自分はどっちにも当てはまらない気がして……」


 ユウは息を飲んだ。


 「え…ずっと、そう思ってたの?」


 リンは静かにうなずく。


 「みんな、ふつうに“自分”でいられるのにさ。ウチは…なんか、スカートを履くのも、髪を可愛くしなきゃないのも、“しっくりこない”んだよね。」


 図書室の窓から春の風が吹き、

 リンの横顔を揺らした。


 「どっちでもいいのか、どっちにもなれないのか、本当のウチは誰なのか、わかんない。」


 ハルは真剣な顔で、でも無理に明るい声を出した。


 「別にいいじゃん。男とか女とかさ。お前は“お前”だろ?」


 リンはその言葉を聞いて、

 少しだけ肩の力を抜いた。


 ユウは机に肘をついて、子どもみたいにまっすぐに言った。

「うん。


 僕、リンが男でも女でも、なんでも好きだよ。」

 その時だけ、

 2は少しだけ笑った。

 

 五年生なりに絞り出した言葉だったんだろう。


 帰り道、沈む夕日に指を伸ばしながら、リンはぽつりと呟いた。

「空ってさ、“どっち”でもないよね、青でも、黒でも、白でもない。でも、全部なんだよ。」


 「…詩人かよ」


「ハルうるさい」


 そんな軽口を叩きながら、

 三人はゆっくり帰った。

 その日の空は、

 不思議なくらい澄んでいて、

 色を決められないまま、美しかった。

 —————————————。

 

 そんな思い出がたくさん蘇ってくる。

 

 リンは微笑んだ。

 

 そして急に奥の部屋に向かって走りだし、窓枠に立つ。

 

 リンは星屑を掴み、

 「っ……痛いんだね…これ。ほら」とギュッと握った。手からは血が垂れる。

 

 ユウとハルの言葉も聞かず…窓から身を乗り出そうとする

 

 「リンっ!!!」

 「おい!やめろ!」

 

『来んな!!』

 俺とユウは何も言えなかった。

 その時リンが少しだけ寄ってきて、俺とユウに囁いた。

 

 ?!——————————

 

 ただ、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

 リンは静かに

「恥ずかしいから…もう、見ないで」

 

 涙か頬を伝うのが見えた。

 

 そして————

 断末魔だけが美しい夜空に消えていった。

  

 ————————————  

 「三人でって…言ったじゃんか……」 

  

 ユウも泣いていた。

  

『泣くなよ!!』 

 リンの声が蘇る。

 「もう…寝かせてくれ…」寝て現実逃避をするしかなかった。

 

 「あ、あぁ…………」

 ————————————

 暗い静かな車内。

 星屑だけが光っている。

 そんな中起き上がったのは、〝ユウ〟だった。

 

 「ハルは、帰ってね……ちゃんと」

 窓を開け、そのまま静かに夜空に消えていった。

 —————————

「はぁ……はぁ…う、嘘だ…」


 ハルは本当は起きていた。

 止められなかった自分を噛みしめ、ただひたすら泣くことしか出来なかった。

 

 その時、運転席の事を思い出した。

「あ、あそこに行けば…!」

 

 ハルは運転席に向かった。

 

 前に見たランプを見る。

 空と書いてあるランプは前と変わらず、光が弱かった。

 ランプには何一つ変わりがなかった。

 天の川が眩しい————

 

 「……なん、で……?」、

 そうさ、所詮ただの中学生。

 そんな俺に、何を求める?

 ——————————。

 はぁ……息ができない。

 苦しい……………………

 


『おい……お前…………』

 なんだ、誰だ、声が聞こえる。

 あ、あれ……龍、みたいな?

 なんか見覚えが——————

 ——〝山奥、苔むしたレールの上に古い電車が佇む。

 サビの色はあまりに濃く、元の色がどんな姿だったかもわからない。

 その横には謎の石像、やはり苔だらけでなにか分からないが、形は、龍?のようだ。〟————

 こ、こいつ……!!

『お前…渡っちまったな……。』

「え……は?…な、何を?」

 

『人生……人生とは、長い走馬灯であって、過ぎ去る瞬間はいつも気づかぬうちに遠ざかり、思い出は静かに心の中に積もっていく。けれど、ふと振り返ったときに——その光の軌跡のすべてが、たしかに自分をここまで連れてきたんだと分かる。

 生と死の狭間にあってもなお、あの日の笑顔や声は、やさしい星屑みたいに胸の奥で輝き続けるんだろう。』

 

「お、おかしいだろ!お前が仕組んだのか?!」

『……いいや』

「み……みんな死んだよ…!死んじまったんだ!おい何で帰れないんだよ?!」

『帰る……?何処にだ?』

 ————————————。

 あぁ……そうだ俺——

 

 そして、やっと電車が止まった。

 

 降りてみると、歩いた道が淡く溶けていくように感じた。光も、音も、記憶さえも水面に吸い込まれていく。

 

 それはまるで、長い旅路のやっと辿り着いた終点のようで————


 

 

 

考察して欲しいです。

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