ハイシンシャは今日も動画で世界をぶち壊す!
「全軍進めぇ!!」
「ウォォォォォ!!!」
「来たか。返り討ちにしろぉぉぉ!!!」
「ウォォォォォ!!!」
とある領地内。鎧に身を包んだ軍団が二つが、剣や弓、大砲、魔法を用いて衝突していた。
「どうやら始まったみたいだな」
「今回もまた派手な戦場を選んだもんだな烈」
そんな争いの中、近くの崖の上でその争いを四人組の男女が見ていた。
「今回もまたゾロゾロと」
「烈いけるか?」
「何言ってやがんだ?俺は常に行けるぜ!」
中心にいた若い男性はそう言うと戦場へと向かって崖から飛び降りた。
彼の名前は彼方烈。
世間では少しだけ名が知られ"ハイシンシャ"と呼ばれている男だ。
「さぁ!今日も俺の動画を見ろ!そして世界をテメェら一人一人で変えて行きやがれ!」
崖から飛び降りる最中、烈はそう叫んで無数の魔法陣を戦場で戦う戦士達の頭上に飛ばした。
「な、なんだ??」「誰だ!新手か!?」「魔法部隊!まだ命令は、!」
「よぉ!今日も俺の配信を見ているテメェら!!今回はアラスマ地で戦うマルスタ王国とアイゴス国の戦場をおおくりするぜ!」
現れた烈に唖然としている兵士達は、頭上の魔法陣に喋りかける烈に両軍共に大混乱に陥っていた。
しかし、烈はそんなのお構いなく話し続けていた。
「おい貴様!ここは戦場だ!ただちに、」
「うるせぇ!!!俺は撮りたい時に撮るんだよ!黙ってそこで見てやがれ!」
「なっ!?」
両軍の兵士達の静止も聞かずに烈は魔法陣に向けて話続けた。
「争いの発端はマルスタ王国によるアイゴス国への不当な搾取だ!テメェらの目に焼き付けやがれ!」
「くっ、あの男が最近、噂になっている戦場の映像を近隣諸国に流している愚か者か。誰か、今すぐ奴を止めろ!!」
隊長の命によりマルスタ王国の兵士の何人かは、映像を止めるため烈に襲いかかった。
「民間人が戦場を遊び場にするのなら死んでも文句は言えないな!"パワースラッシュ"!!」
「"ライトニングアビス"!」
「"エイジングショット"!」
烈に向けて放たれた魔法は大地を切り裂き、稲妻を走らせ、無数の針を飛ばして進んで爆発した。
「全く民間人がいらぬ事を、」
「た、隊長見て下さい!」
兵士の一人が烈の方を指差し、隊長もその方向を見てみると煙が晴れ姿を現した烈は無傷で立っていた。
「ば、バカな??」
「この程度で俺がやられるわけねーだろ!さぁ!更に映すぜ!」
両手を大きく広げ更に無数の魔法陣を戦場に展開した烈は魔法陣に向かって更に大きな声を上げた。
「さぁて!これを見ているお前らにいい事を教えてやるぜ!マルスタ王国の国王は市民からも相当の不当な金を納めた上で、更にアイゴス国にまでそれを要求してやがるんだ!」
「な!?な、何故!貴様がその事まで知って、あッ!しまッ!?」
「今の聞いたよなお前ら!!」
烈の発言に驚いて思わず口を滑らしてしまった隊長を烈は見逃さなかった。
自身の近くに小さな魔法陣を展開し、今の発言をバッチリと映していたのである。
「な、ど、どう言う事だ?」「俺達はアイゴス国が突然、攻めてきたとしか・・・」「まさか俺達すらも?」「そ、そう言えばさっきも似たような事を」
更に、その発言はマルスタ王国の一部の兵士にすら混乱を及ぼし始めていた。
「くっ!な、何をしている!今すぐあいつを止めろ!!これは立派な我が国への背信行為だ!」
隊長の一言によって混乱に陥っていない兵士達は、魔法が駄目ならと剣を抜いて、烈に向かって走り出し斬かかった。
「そんなもん当たるかよ!"ᚢ"!!」
そう唱えた烈の体は薄く光り輝き始め、兵士達の迫る剣を次々と交わして戦場を駆け抜けた。
「は、速い!」「当たらないぞ!どうなっているんだ!」「逃がすな!そっちに行ったぞ!」
「えーい!何をしているんだ!」
「隊長大変です!」
「今度はなんだぁ!」
再びやってきた兵士に隊長は怒りを通り越して疲れを見せて報告を聞いた。
「あ、あの男に集中し過ぎて、アイゴス国によって一、二番部隊が突破されてしまいました!」
「な、なにィ!?あの男のことは後回しだ!今すぐに退却だ!!!」
報告を聞いた隊長は焦りながら隊の兵士達に烈を追う事を辞めさせ、馬に跨り走り去っていった。
「あ?おい!まだ終わってねーぞ!」
「そこまででオーケーだ烈」
走り去る兵達を追いかけようとした時だった。
鎧に身を包んだ大男がそれを止めた。
「今回の戦場の映像は充分に映せた。俺達も撤退するぞ」
「・・・チッ分かったよ。んじゃあ!テメェら、今回はここまでだ!またどこかで会おうぜ!"ᛖ"」
その一言を最後に戦場にあった魔法陣達は、次々と消えていき烈と大男もその場から姿を消した。
その後、戦場から戻ってきた烈は最初にいた崖に戻った。
「ふぅー」
「ちょっと烈!!」
戦場から戻ってきた烈の前に帽子を被った少年、レオが両腕を組んで顔を膨らませていた。
「・・・何だよレオ」
「また勝手に突っ走って!こっちの準備とかももう少し考えてくれよ!!」
「うるせーなー。タイミングが命なんだよ。見てる奴らに俺の熱を伝えるタイミングがよ」
「熱って何だよ!大体、いつもいつも!」
「まぁまぁ落ち着けレオ」
ヒートアップするレオを鎧を見に纏った大男がそれを諌めて落ち着かせた。
彼の名前はガルドと言い、彼方烈とはメンバーの中では、一番古い付き合いで良き理解者でもある龍人族だ。
「で、でもさぁガルド!」
「お前の言うことも最もだが見てみろよこれをさ」
そう言ったガルドはレオに向けて、魔法でどこかの街の市民の様子を覗かせた。
「これは?」
「烈が魔術で戦場の様子を見せてる時の反応ってやつだ」
そこに映し出されている姿は、戦場の激しさに心踊らされていたり、烈の姿に魅了されている者やそんな烈を罵倒する者、戦場の恐怖に子供抱きしめている親から自分達が不当に搾取されている事を知り憤りを感じている姿など様々な様子が映し出されていた。
「結果としてみれば、大勢の人に見てもらう事には成功しているんだ。そう怒るものでもないさ」
「でもさぁー!」
「それに今回の一件で、マルスタ王国内でも市民の暴動が起きてるらしくてな。あそこの国王はもう終わりだよ」
「そう言うこった。これでいいんだよ」
レオの頭をポンポンと叩きながら、烈は立ち上がって歩き始めた。
「おい!どこいくんだよ!」
「決まったんじゃねーか。また映しにいくんだよ」
そう言い残して、烈はドアを開けて駆け出して行った。
そして今日もどこかで彼方烈は、世界を魅せる動画を撮り続けていくのであった。