第9話『魔王軍の給料明細がヤバすぎる件(仮)』
「――それで、これが今月の給料明細だ」
魔王城の執務室、漆黒の玉座に腰掛ける魔王エリュが、机の上に無造作に一枚の羊皮紙を置いた。彼女の表情はいつも通りの無表情だが、口調にはどこか微妙な含みがある。
「……えーっと」
その場にいた俺・ヨシオは、その羊皮紙を恐る恐る手に取った。横からリリィが覗き込む。
「わあ、ヨシオってば今月も全力で突撃係でしたね!」
「それ職種じゃなくて罰ゲームだろ……ていうか、これ基本給0ゴルド!? 食事付きって、昨日の“激辛スライム粥”じゃん! あれ、ほぼ液体の火炎瓶だぞ!」
「“やけどが治ったら旨味が出てくる”って料理長が自信満々でしたけどね!」
「味の感想じゃなくて、治癒魔法前提なのがおかしいからな!?」
エリュは静かに目を閉じてから、淡々と続けた。
「財政が厳しい。よって、来月からは“昇給チャレンジ制度”を導入する」
「えっ、昇給!? ついに俺も高給取りの仲間入りか!?」
「そう。成功すればね」
「……その“成功”の内容が恐ろしいほど不明瞭なんですけど」
エリュは指を鳴らすと、どこからともなく現れたスライム型の郵便魔物が、ぬるぬると分厚い冊子を吐き出した。
「『地獄の昇給試練100選』。これのいずれかをクリアすれば、昇給と認定される」
「タイトルからして絶望しかないじゃん! 一ページ目から“魔界最高峰・断罪ピラミッド登頂”って、俺がいまだにスライム相手に全滅しかけてるの知ってるだろ!?」
リリィがにこやかに冊子をめくる。
「こっちは“伝説のマッサージチェアを魔界の主に届けろ”ですって。面白そう!」
「絶対、道中で魔界獣に分解されるパターンのやつだこれ……」
そのとき、エリュがふと視線を横にそらす。
「……ちょうどいい。リリィ、お前も同行しろ」
「はいっ! じゃあヨシオと一緒に昇給デートですねっ♪」
「俺、別にデート希望してないんだけど!?」
「そういう照れ隠し、可愛いです♡」
――こうして、俺とリリィの“地獄の昇給試練チャレンジ旅”が幕を開けた。
もちろん、前途多難なのは言うまでもない。
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