最終話『記されるもの、それは――真実』
《レコードライン》――そこは、全ての出来事が「石盤」に記される都市。
中央広場の奥、黒い石塔の頂に存在する「大記録盤」。
それは、この世界における“絶対の歴史”であり、
“未来”でさえも、誰かによって記され、決められていた。
俺たちはそこへ辿り着いた。
あの記録に、「俺が仲間を裏切る存在として記されている」とエリュは言った。
だが、俺たちは違う未来を生きてきた。
仲間たちと共に、命を懸けて、失って、笑って、泣いて――
それがすべて「嘘だ」と?
……ふざけんな。
「ここが“大記録盤”……!」
リリィが息をのむ。
目の前にそびえる黒き石塔。その上に、銀色に輝く盤面が回転していた。
近づくにつれて、脳内に直接、声が響く。
《記録に従え。記録を疑うな。全ては決定されたもの》
「……洗脳か、あるいは支配か……!」
マリアが杖を構える。
だが――突然、俺の足が止まる。
「――ヨシオ」
石盤の中から、俺の“姿”が現れた。
それは、まるで鏡写しのような“もう一人の俺”。
「お前がここに来ることも、“この結末”もすべて記録されている」
「お前は、仲間を捨てて世界を手に入れる。
だが、心は空虚となり、最後に一人、塔の下で死ぬ――それが『運命』だ」
「……ふざけんなよ」
俺は拳を握る。
「そんなもんが決まってるってんなら、俺がぶっ壊してやる」
“記録のヨシオ”は微笑む。
「壊せるものならな。お前に、真実を書き換える力があるなら――来てみろ」
---
◆
「ヨシオが、消されるわけないでしょッ!」
リリィが真っ先に剣を抜いた。
「そいつが“未来の姿”でも、“記録”でも……私は、今のヨシオを選ぶ!」
続いて、マリア、ウケール、エリュも構える。
「記録とは過去。過去に縛られるな」
「ヨシオの“今”こそ、私たちが知ってる彼だよ!」
《幻影の記録》と化したヨシオのコピー。
そいつは、仲間の姿に変化しながら襲いかかってくる。
「こっちは偽物……!」
だが、攻撃は重い。想いすら模倣されたような攻撃に、
仲間たちはひとり、またひとりと押されていく。
「……嘘だろ……このまま、負けるのか?」
だが、その時。
「信じるんだ、ヨシオ」
……マリアの声。
「“記録”にないものを書き込めるのは……“記録されていない今”を生きるお前だけ」
俺は、振り返った。
みんなが、俺を信じてる。
そして、テナも……いないはずの彼女の姿が、炎の奥に一瞬だけ見えた気がした。
「じゃあ、俺がやることはひとつだけだろ」
《記録のヨシオ》が剣を構える。
「お前に、何ができる?」
「“今を生きる”俺が、お前を否定する」
剣を振るい、拳を叩きつけ――
俺は叫ぶ。
「俺たちは、決められた運命なんかじゃない――!」
---
◆
戦いが終わると、《大記録盤》は静かに崩れた。
崩壊するその中心に、一本の白い石が残っていた。
そこには、こう記されていた。
> 「名前:田中・ヨシオ
行動:仲間を信じ、運命を拒絶し、自らの手で未来を書き換えた
結果:この世界に、自由な未来が生まれた」
「……なんか……恥ずかしいな、これ」
「いいじゃない、かっこいいよ」
リリィが微笑む。
マリアが、手を胸に当てて言った。
「これで、きっと……テナも、安心して眠れる」
「私も、やっと過去を手放せるわ」
エリュの声に、皆が頷く。
「でも、俺たちの旅、これで終わりか……?」
ウケールが言う。
「いいえ」
マリアが答える。
「終わりじゃない。“始まり”よ。これからは、誰かに記録されるんじゃなくて――」
「――自分たちで、記録を創っていくんだ」
俺は、そう言って、空を見上げた。
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《記録の街》は崩れ、今はただの石畳だけが残る。
だが、その上で、俺たちは新しい日常を始めていた。
商人になったウケールとエリュ。
旅の記録を書き始めたマリア。
町医者を手伝い始めたリリィ。
そして俺は――“書き手”になった。
もう、誰かが俺を記録するんじゃない。
俺が、自分で書くんだ。
仲間の笑顔も、別れも、戦いも、涙も。
全部。
ページの最後に、俺はこう記した。
> 「これは俺たちの物語。誰のものでもない、“俺たちが生きた証”だ」
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