第152話『ふとした時間、揺れる想い』
「……やっぱ、こっちの世界の草むらって、地味にチクチクするんだよな」
俺――ヨシオは、いつものようにキャンプ地の準備をしながら、
草の上に寝転ぶウケールを横目に見た。
「言っただろ、寝る前には地面チェックしろって……」
「でも、星がよく見える場所って、だいたいチクチク草の上なんだよ……。うん、わかってるけどさ、もうちょいロマンを重視したい日もあるの」
「おまえなぁ……」
テントを組み終えたマリアが、鍋の中をかき混ぜながら微笑んでいる。
「ロマンは夜ごはんの後にして。今日は特別、エリュが持ってきてくれた保存野菜も入れてあるから」
「そう。腐ってないことを祈って食べなさい」
「やめてエリュ!? それ一番怖いパターンじゃん!?」
焚き火の明かりに照らされるメンバーたちの笑顔を見て、
俺はほんの少し、安心した。
ここ最近、戦いが続いていたせいで、
みんな、ほんの少しずつ無理をしてた。
今は、静かな時間の中で呼吸を整える――そんな時なんだと思う。
---
◆
「ヨシオ、ちょっと……こっち、いい?」
食後。
皆が片付けを始める中、リリィが少し離れた岩場に座って、俺を呼んだ。
「……なあに、また相談?」
「ううん。今日は……ただ、話したいだけ。最近、色々あったから……」
焚き火の灯りから少し外れた場所。
そこでは、リリィの顔が、星の光だけで照らされていた。
「マリアのこと、すごく心配だったよ。……ヨシオ、頑張ったね」
「……いや、俺は大したことしてない。記録を書いただけだし」
「ううん、そうじゃない。あの時、迷わなかったでしょ?
マリアを“ここにいる”って証明するために、すごくちゃんと見てた。
……それって、なかなかできないことだと思う」
「……」
「わたし、ちょっとだけ、あの時……うらやましかった」
「うらやましい?」
「うん。……私も、“ちゃんと見てほしいな”って、思っちゃった」
リリィは、笑ってたけど。
それは、ちょっと寂しげな笑顔だった。
「馬鹿だよね、私。仲間なのに、そんなこと思ってさ」
「いや、馬鹿じゃないよ。……俺も、ちゃんと見てた。
お前が剣を抜いて、泣きそうになって、それでも立ち向かったこと」
言いながら、俺は、そっと彼女の手を握った。
「……ありがと」
リリィは、小さく頷いた。
星が流れた。
---
◆
その夜。
マリアは、焚き火の傍でひとり、祈っていた。
「テナが、夢に出てきたの。……“もうすぐだね”って、笑ってた」
「……“もうすぐ”?」
「ううん。きっと……“全部が終わるとき”の話だと思う。
あの子、きっと何か知ってた。最後まで言わなかったけど」
「……そうか」
俺は、静かにうなずいた。
マリアが振り返って微笑む。
「でも、まだ“今”がある。私は、それを大事にする。
だから……この旅を、終わらせたい」
「終わらせよう。俺たちで」
---
◆
次の日の朝。
エリュが手早く荷物をまとめ、みんなに告げた。
「次は《レコードライン》。
そこでは、すべての事実が石盤に記録される。
けど、最近“誰かが嘘の記録を書き込んでいる”らしい」
「つまり、“捏造された未来”があるってこと?」
「そのとおり、マリア。――ヨシオの名前もそこに書かれていた。
“仲間を裏切る存在”としてね」
「……は?」
「だから、次の目的は、その“嘘の記録”を探し出し、書き換えること」
「そんなもん、全力で否定してやるよ」
俺は拳を握った。
リリィが隣で頷く。
「わたしたちの物語は、私たちが決める。そうでしょ?」
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
あと、感想も書いてくれるととても嬉しいです!