第151話『未完の街、ナンバーイーターの影』
「ここが……《リプレース》か」
瓦礫と紙片に覆われた都市。
壊れた時計塔が、午前11時57分を示したまま、止まっている。
道には人の姿もなく、風だけがページをめくる音を響かせていた。
「この街では、“完結してない記録”だけが残るの」
エリュが小声で言う。
「つまり――“誰にも語られなかった物語”たちの墓場よ」
「……マリアの存在も、“記録されなかった”ことでここに漂ってるってことか」
「その通り。だからこそ、ここで“彼女の記録を上書きする”ことが必要」
ヨシオは拳を握った。
「なら、やるしかねぇな」
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◆記録の墓場、動き出す“未定義”
探索を始めてから間もなく、異変が起こる。
廃図書館の中で、ひとりの“人影のようなもの”がこちらを見ていた。
その姿はまるで――モザイクで構成された人間のようだった。
「それ……“ナンバーイーター”……!」
マリアがつぶやく。
「記録されなかった存在のなれの果て。
未完の感情、名前を与えられなかった記憶、言葉にならなかった声――
それらが集まって形成された“記録を喰らう存在”」
ナンバーイーターは、マリアに向かって歩き出す。
「“未記録”であるお前は……“取り込まれる側”だ……」
その声は、ヨシオたちの記憶の中から組み立てられた声だった。
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◆バトル:記録を奪う敵 vs 書き直す意志
「来るぞッ!」
ウケールが叫び、炎の結界を展開するが、
ナンバーイーターはそれを無視して進んでくる。
「物理法則無視!? どうなってんだこのヤロウ!!」
「“記録”が存在しない敵は、既存の魔法では干渉できない……!」
リリィが剣を抜いて突撃するが、
その刃は相手の身体を通り抜け――代わりに、彼女の“幼い記憶”が奪われた。
「うっ……なんで……お兄ちゃんの顔が思い出せない……!?」
「ヨシオ、今しかないわ! “マリアの記録”を書き換える!!」
エリュが叫ぶ。
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◆記録の再構築:マリアの存在を取り戻す
ヨシオは、胸のポーチから**エリュが託した“観測のペン”**を取り出す。
「マリア……お前が、俺たちと旅して笑った時間……
お前が記録した物語は、確かに俺たちの中にある!」
ペンが光り出し、空中に“書かれていなかった記憶”が浮かび上がる。
> 『マリア:観測者。冷静な分析者であり、誰よりも仲間思い。
最後に残る記録は、自分でなく、仲間たちの笑顔であることを望んだ。』
その記述が、ナンバーイーターの体を焼いた。
「記録は、喰われない……書かれることで、存在が証明されるんだ!」
マリアが微笑む。
「ありがとう、ヨシオ。……私は、まだここにいたい」
そして――彼女の身体が、完全に“世界のレイヤー”に戻った。
ナンバーイーターは、断末魔のように呻き、
未定義の空間へと消滅していった。
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◆エピローグ:止まっていた時間の再開
時計塔が、“カチリ”と音を立てて動き出す。
11時57分から、11時58分へ。
「動いた……」
「“誰かの物語”が、ちゃんと続いた証よ」
エリュが小さくつぶやいた。
マリアは手を広げ、風を受ける。
「……私、またちゃんと“感じる”ことができる。
空の青さとか、花の匂いとか――それが、嬉しい」
ヨシオは黙って頷いた。
「じゃあ、次の場所へ行こうか」
「そうね。“誰かがまだ見たことのない物語”が、待ってるから」
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
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