第150話『境界への旅立ち、スキップポイントへ』
朝焼けの色が、村の屋根を赤く染めていた。
「……もう、行くのか?」
ウケールが、パンをもぐもぐしながら聞いてくる。
「そろそろだ。放っておけないからな、あっちの街も」
俺は肩を回し、背負い袋を背にしながら答えた。
「それに、マリアが……長くは持たないかもしれない」
「……あの子、笑ってるけどさ。ときどき、影が透けてるんだよな」
「見えてたか」
「そりゃな。仲間だし」
いつになく真面目な顔で、ウケールが俺の肩を軽く叩く。
「行くぞ、リリィ、エリュ、マリア!」
「はーい。忘れ物ない?」
「記録端末は持った。あと非常食も。ヨシオのチョコバーは抜いたけど」
「え、それ俺の楽しみ……」
そんなやりとりをしながら、俺たちは村を出発した。
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◆旅の道中:マリアの“存在のずれ”
昼下がり。
広い草原を抜け、谷沿いの道を進んでいたとき。
「ヨシオ」
マリアが俺に声をかける。
その声が、ほんの少し――遅れて聞こえた。
「……今、お前、しゃべったよな?」
「ええ」
「でも、少し……“音が遅れた”感じがした」
マリアは少し考え込み、やがて口を開いた。
「多分、私の存在の“レイヤー”が、みんなとズレてきてる。
私はまだここにいる。ちゃんと考えて、話してる。
でも、“世界に追いついてない”感じなの」
エリュが一歩進み、観測魔法を起動する。
「やっぱり……マリアの記録波長が乱れてる。
言い換えれば、“彼女はこの世界に完全には接続されてない”」
「マリアが“消える”ってのは、文字通り“記録不能になる”ってことか……」
そのとき、マリアが微笑んだ。
「でも平気。だって、あなたたちは私を“見てる”」
「それは……」
「それがある限り、私はまだ存在できる」
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◆目的地「スキップポイント」とは?
その夜。焚き火のそばで、エリュが地図を広げる。
「“スキップポイント”は、正式名称を**境界都市**というわ」
「なんだそのカッコいい名前は……」
「記録と未記録、存在と非存在。
そのあわいに位置する都市。言い換えれば“書かれてないものの集積地”」
リリィが小さく呟く。
「……ってことは、マリアの“抜け落ちた存在”も、そこにあるかもしれないってこと?」
「その可能性が高い」
「……行こう」
俺は立ち上がる。
「どうせまた、変なバケモンでも出るんだろ。
でも俺は、マリアが“ここにいた”って記録を――絶対に、消させない」
「ありがとう、ヨシオ」
マリアが静かに、でもはっきりと微笑んだ。
「面白かった!」
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