第145話『記録なき村、そしてエリュの欠落』
「ルグノ村……?」
マリアの地図を覗き込んだ俺は、眉をひそめた。
「そんな村、聞いたことねぇぞ」
「それもそのはず。“記録の地図”には存在しないの。
だけど、白紙の記録が一瞬だけ“ルグノ”って言葉を浮かべたのよ。
たぶん――“書かれていない場所”として、この世界に存在してる」
「つまり、そこに行けば、“物語のルール”のさらに外側が見えるかもしれないってことか」
俺たちはギルドで最低限の準備を整え、
リリィ・エリュ・ウケール・マリアの四人とともに、未知の村へと向かった。
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◆“村なのに記録がない”という不気味さ
ルグノ村は、まるで“地図の余白”にぽっかりと空いた穴のような場所だった。
家々はある。道もある。井戸もある。
でも――人がいない。
「……まるで、物語の背景だけ描かれて、登場人物だけ抜けてるって感じね」
マリアがそう呟いた時だった。
「……なあ、ヨシオ」
リリィがそっと腕を掴んできた。
「さっきまで、エリュ……いたよね?」
「……あ?」
振り返ると、そこにいたはずのエリュが――いなかった。
「……おい、嘘だろ。エリュ? どこだ!」
声を張っても、返事はなかった。
まるで最初から存在していなかったように、
誰の記憶からも、すこしずつ――エリュの“詳細”が抜け落ちていく。
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◆“書かれかけている”エリュ
マリアが解析端末を走らせる。
「ヨシオ……エリュ、今この村に“別の存在”として“上書きされかけてる”」
「どういうことだよ!」
「この村には、“記録前の原稿”が漂ってる。
存在が曖昧なまま、誰かが新しく設定を書き込める空間。
その中に長くいると――“別の存在として物語に組み込まれてしまう”」
「じゃあ、放っておいたら……エリュがエリュじゃなくなるってことかよ!」
マリアが震える手で、白紙の記録を開く。
「まだ間に合う。“上書き”が完全になる前に、
誰かがエリュの“本当の姿”を明確に書き込めば、元に戻せる」
「……でも、書くのは誰なんだ?」
「“彼女を一番知っている人”じゃなきゃダメ。つまり……あんたしかいない」
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◆ヨシオ、“エリュの記録”を書く
俺は深呼吸して、白紙の記録にペンを走らせる。
> 名前:エリュ
性別:女性
性格:冷静で合理的、でも根はすごく優しくて、時々ツンとするけど…
特技:記録術、観測魔法、紅茶を淹れるのが上手い
仲間との関係:大切な仲間。俺の支え。仲間を救うためなら迷いなく動く人
「――これが、エリュだ」
紙が、淡い光に包まれた。
次の瞬間、村の井戸のそばに、エリュがふらつくように立っていた。
「……ヨシオ……?」
「エリュ!」
「私……私、どうしてここに……」
駆け寄って、抱きとめる。
「もう大丈夫だ。戻ってこれた」
そのとき、俺の胸の中で、確かに彼女が微かに震えていた。
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◆“記録の影”の予告
夜。
村を出る前、マリアが地面に落ちた紙切れを拾った。
そこには一文だけが記されていた。
> 『次に“消される”のは、あなたの心臓。』
「……ヨシオ、これは“改稿者”からのメッセージだと思う」
「心臓、ね……」
俺は小さく呟いた。
仲間の命だけじゃない。
今度は、“俺自身の感情”が狙われているのかもしれない。
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