第140話『侵蝕の花園、記録なき者の咆哮』
侵蝕区域は、まるで世界が腐っていくかのようだった。
記録花が黒く変色し、地面はバキバキと割れ、空間そのものが不安定になっていた。
まるで、世界のメモリーが破損したファイルを読み込もうとした時のような、不自然な歪みだ。
「……ここが、“侵蝕者”の発生源?」
「魔力の流れが逆流してる……常識じゃ測れないレベルよ」
マリアの額には汗が浮かぶ。
「にゃにゃ……!なんか空気がどろどろにゃ!」
テナが耳をぺたんと伏せる。
だが、俺たちは一歩を引かない。
そして、霧が開いた。
その中心に、それは――いた。
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◆現れる“記録喰らい”
現れたのは、異形の存在だった。
人型でも、獣型でもない。
幾重にも重なる“破棄された記憶”が、泥のように集まり、
それが命を持ったかのように形を保っていた。
「ログエラー……スロット解放……“観測者”を消去――」
甲高く、機械的な声が響く。
「……あれ、喋ってる?」
「ちょっと待て、あれ、喰ってないか? 花……そして、記録まで……!」
ウケールの叫びと同時に、そいつは叫んだ。
「オマエタチ、キロク……ジャナイ。ソレナラ……ソンザイ、ヒツヨウナイ」
次の瞬間、空間が砕けた。
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◆バトル開始!
「来るぞ!!」
俺が叫ぶと同時に、異形が咆哮をあげ、
記録花を媒介にして、空間を歪ませながら巨大な魔力を放ってきた。
ズガァアアアアン!!
「ッッ!こいつ、通常魔法じゃ拡散できない!」
「防御魔法、間に合わない……!」
マリアが詠唱を始めるも、記録干渉のせいで詠唱が乱される。
「任せろ!!」
ウケールが前に飛び出す。
彼は己の体を盾にして魔力を受け止め――
「……なめんじゃねぇよ、“今の俺たち”を!!」
《自我盾化・拡張防壁!》
炸裂した魔力を弾き返しながら、仲間を守り抜いた。
「ウケール……!」
「ヘヘッ……今の俺、ちょっとカッコよかったろ?」
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◆ヨシオの新たな魔法、発動
「こいつ……俺たちを“記録から削除しようとしてる”……」
俺の体が勝手に動く。
意識の底、あの花咲く層で感じた“青い光”が、再び浮かび上がる。
「――来い、《記録外展開式:コードネーム【ブルーム】》!!」
蒼い魔方陣が、俺の足元に広がった。
記録を超越し、物語に“新たなページ”を書き込む魔法。
その魔力が炸裂すると同時に、異形の侵蝕が一時的に停止した。
「ヨシオ……それ、“記録そのもの”を再構成してる……!?」
「まだ実験段階だが……“物語は、俺たちが決める”って魔法だ!」
「うわっ、なんかすごい台詞言った!」
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◆リリィの想いと、光
「ヨシオ……っ!」
リリィが、俺の隣に駆け寄る。
「私も……守る! この世界で、あなたと一緒にいる“今”を!!」
彼女の手に、赤い花が咲く。
それは、過去ではなく――今の彼女の感情。
「《想花結界式――リリィ・コードレッド》!!」
リリィの魔力が、侵蝕魔力を切り裂いていく。
そして、俺とリリィの力が重なった瞬間――
「終わりにしようか、記録喰らい!!」
ズガァアアアアン!!
爆発的な光の渦が、空間を満たし、
異形の影を完全に焼き払った。
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◆戦いのあとに
しばらくして。
空間の歪みが消え、花咲く層に静けさが戻った。
「……終わった、のか?」
「うん……でも、これは始まりかも。
“記録の外側”の物語が、ついに動き出したってことだよ」
俺は空を見上げる。
その先に何があろうと、俺たちの“意志”は、記録されなくても――確かにある。
「よし、帰って……飯食って寝ようぜ」
「にゃふー!!大賛成にゃ!」
「面白かった!」
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