第134話『英雄たちの昼休み、そしてウケールの誓い』
――浮遊都市ヴァルト=アイン。
“再記録の使徒”との激戦から、三日が経過した。
大空は静かで、風は心地よくて、鳥のさえずりが空の下から聞こえる。
まるで戦いが幻だったかのような、穏やかな時間。
俺たちは広場のベンチで、遅めの昼食をとっていた。
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◆日常のひととき
「おいテナ、その魚の骨、飛ばすなって!」
「にゃにゃ!?不可抗力にゃー!風が悪いにゃ!」
「はい、ヨシオ。おにぎりあげる」
「お、ありが――うわ、これ爆発するやつじゃねぇよな?」
「失礼ね!今日は普通の梅干しよ!!」
ギルド支部の近くで、ワイワイと騒ぎながらのランチタイム。
その時、ひとりぽつんと、ちょっと離れた木陰に座る影があった。
「ウケール……?」
俺は立ち上がって、彼の隣に腰を下ろした。
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◆ウケールの“本音”
「ヨシオ。……お前、ほんとすげぇな」
「は?」
「だってよ、空の神殿に雷ぶっ放して、リリィといちゃついて、ヒーローかよって感じじゃん」
「おい、それ照れとひがみ混ざってんぞ」
「……混ざってるに決まってんだろ」
ウケールは空を見上げた。
その顔は、珍しく真面目だった。
「俺、なんもできなかった。あんとき……足、すくんで動けなかったんだよ」
「……」
「怖くてさ。俺、記録されてない存在だけど、だからこそ消されるのが怖いんだよな。
ここが消えたら、“俺”って何になるんだろうって」
彼の拳が、ぐっと握られていた。
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◆ウケールの決意
「でもよ、あのとき見たんだ。ヨシオとリリィが、前に出て。
マリアとエリュが支えて、テナが叫んで。……それ見て、心臓ぶっ叩かれた気がした」
ウケールは立ち上がった。
「だからさ、次は――俺が“守る”側になりてぇんだ」
「ウケール……」
「マリアに術式教えてもらった。今、めっちゃ練習してんだよ」
そう言って、ウケールは空に向かって両手をかざす。
「見てろ!――《風圧変換・跳躍式》!!」
ばふん!
軽くジャンプするだけの技だったが、彼の身体が風に乗ってふわっと浮かんだ。
「おおっ!? 飛んだ!?」
「お、おおおお!?すごいにゃ!猫の私も負けるにゃー!」
「ちょっとだけ浮いたわね。すごい進歩よ、ウケール」
「……お前ら、優しいな。泣きそう」
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◆変わらない“仲間”の風景
俺は笑いながら肩をすくめた。
「お前は元から仲間だし、俺たちにとってはヒーローでもある。
それに……“怖い”って思えるやつの方が、強ぇと思うぞ」
「……っ、まじか、ヨシオ。惚れるぞ」
「やめろ、リリィが見てる」
「すっごい無言で睨まれてるわよ……」
「だって……ヨシオがそういうこと言うと、本気で嫉妬するんだから……」
「お、おう。ごめん」
「わかればよろしい!」
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◆そして、次なる一歩へ
その日の夕方。
マリアが、ギルドから戻ってきて、地図を広げた。
「“深層記録域”への道が開いたわ。
この都市の地下、記録そのものの根源に繋がってる」
「そこには、何があるんだ?」
「……ヨシオ、“あなたがどこから来たか”。その記録の断片よ」
空に、星がひとつ輝いていた。
その星が、どこか“懐かしい”と感じたのは――なぜだったのだろう。
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