第132話『空の街、恋と風と、秘密の距離』
――浮遊都市ヴァルト=アイン、滞在3日目。
次なる“再記録の使徒”との戦いが迫っている、とは思えないほど、
この日は静かで、あたたかい光が空から降り注いでいた。
そんなある日、ギルド支部からの帰り道。
「ねえ、ヨシオ。ちょっと寄り道しない?」
リリィが不意に俺の袖をつかんできた。
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◆浮遊都市の市場通り
「うわ、なんかカラフルだな。あの果物、三重に回転してるぞ」
「たぶん物理的にまずいと思うわ。ああいうのは見た目重視のやつ」
空に浮かぶ果物市場では、いかにも“浮遊都市らしい”カオスな食品がずらり。
しかし――
「ヨシオ、見て!」
リリィが指さしたのは、屋台の奥。
そこには、光を吸ってきらめく不思議な結晶が飾られていた。
「“共鳴水晶”……らしいよ。2人が同じ想いを持ってると、重なるんだって」
「へえ。じゃあ、試してみるか?」
「えっ」
「ほら、こうして――片方ずつ持って――」
……手が、触れた。
結晶は――ぴたりと、重なった。
「……っ!?」
リリィの顔が一瞬で赤く染まる。
「ちょ、ちょっと!冗談よね!?これ、たまたまでしょ!?たまっ……ううっ、もう!」
「顔、赤いぞ?」
「う、うるさい!あんたこそ、なんで普通の顔してるのよ!」
「してねぇよ!俺も心臓バクバクだよ!」
そんな俺たちのやりとりを、屋台のおばちゃんがニヤニヤ見ていた。
「初々しいねぇ。水晶も照れて光ってるよ」
「やめてぇぇぇぇ!!」
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◆風の広場で二人きり
人混みから離れた浮遊台座の上。
空と雲しかない、静かな場所。
リリィはさっきの照れが抜けないのか、そっぽを向いていた。
「……さっきのは、偶然よ。たまたま。偶然ってことにしとくから」
「はいはい、偶然な」
「なによそのニヤニヤ顔……」
風がふわりと吹いた瞬間、リリィの髪が舞い上がる。
そのシルエットが、どこか“特別”に見えた。
「なあ、リリィ」
「……ん?」
「もし、明日なにが起きても――俺はお前のそばにいるから。
約束するよ。絶対、離れねぇ」
「……ヨシオ」
リリィは、何かを言いかけて――やめて、
代わりにそっと、俺の手を取った。
「……こっちが先に言うはずだったのに。ズルいわね」
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◆夜、仲間たちと夕食
「にゃにゃっ!?ヨシオとリリィ、なにその雰囲気!」
「完全に“共鳴水晶成功カップル”にゃー!」
「煩いにゃあああああ!!!」
「いやでも、実際ちょっと進展してる感じあったぞ?」
ウケールまでツッコんでくる始末。
そして、エリュが真顔でメモを取りながら一言。
「観察対象αとβの感情フラグ、上昇傾向。
要監視――にこにこモードで」
「エリュ、そういうのは笑って言おうよ!?」
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◆戦いの兆し
そんなひとときの平和のなか。
マリアが、窓から空を見つめながらつぶやいた。
「来るわ。“再記録の使徒”……。記録の修復者たちが、空を渡ってきてる」
その声には、かすかな震えが混ざっていた。
だが俺たちは――もう怖くない。
「来るなら来いよ。
俺たちが“記録外の存在”って証明してやる」
その時、空の彼方に、小さく輝く“飛行神殿”の姿が見えた――。
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