第127話『記録の果て、観測されざる者』
――“神の記録室”は、想像以上に静かだった。
まるで世界が音を失ったかのような空間。
黒と白で構成された幾何学的な部屋には、空中に無数の本が浮かび、回転している。
「これが……神の記録か」
俺は思わず息を飲んだ。
そこにあるのは、文字通り“全ての出来事”の記録。
人の選択、運命の分岐、可能性のすべて。
リリィが、ある本を手に取った。
「……これ、“リオナの人生”?」
その記録には、彼女が生まれ、冒険し、命を落とすまでがすべて書かれていた。
あまりに整然と、冷酷なまでに客観的に。
「……なんか、吐きそう」
テナがつぶやく。その隣で、マリアは肩を震わせていた。
「こんなものに……私たちの人生が“書かれていた”のか……」
エリュは冷静な声で言った。
「ここに書かれていない存在は“観測外”――
神々の記録には存在しない、可能性の誤差」
俺は思わず口を開いた。
「……じゃあ、俺は? 俺の記録は、あるのか?」
リリィが一瞬、こちらを見た。そして無言で記録を探す。
「……ない」
「え?」
「ヨシオ、あなたの名前も、姿も、声も……この記録に一切存在しない」
俺はその言葉を、しばらく理解できなかった。
だが次の瞬間、上空から低く響く声がした。
「“観測されざる者”。記録外の存在――それが、おまえだ」
声の主は、巨大な仮面をかぶった影だった。
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◆“記録神”との邂逅
「我は“オルグ=レト”。記録を司る神にして、記録の管理者」
その仮面の神は、ゆっくりと語りかけてくる。
「本来、世界に“ヨシオ”という存在は存在しない。
おまえは、どこからか“記録の外側”より流入した、誤差そのもの」
「……それがどうした」
俺は剣を抜いた。
体の奥から、怒りが湧いてきた。
「記録にねぇなら、なんだってんだ。
俺は、俺だ。生きてて、選んで、戦って、守ってきた」
神は首を振る。
「おまえの存在が、この世界を“不安定”にしている。
修正せねば、あらゆる選択が崩壊し――やがて、世界が終わる」
「勝手な理屈で俺の人生を否定するな!!」
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◆神の裁定と、仲間の選択
「ヨシオを引き渡せば、世界の安定は保たれる。
仲間たちよ、おまえたちの選択を問う」
神はそう言った。
空気が張りつめた。
リリィが口を開いた。
「……ふざけないで。私はあの人を信じてる。
“世界が崩壊する”なら、私たちで止めればいい。
でも、“ヨシオを失う”なんて……それだけは、ありえない!」
エリュが前に出る。
「記録がどうであれ、私の記憶には“ヨシオ”が存在している。
なら、記録の方が間違っているわ」
テナがにゃっと笑う。
「にゃーにが記録にゃ。あたいの“ニオイセンサー”は、ヨシオのこと完全に覚えてるにゃ!」
マリアが一歩、ヨシオの隣に立つ。
「記録に消されても、私たちは“想い”を忘れない。
――それが、生きてきた証よ」
そして、ウケール。
「なあ神様。鍋って知ってる?
みんなで作って、笑って、食って、温かくなる――それも人生だろ?」
「だからな。鍋仲間を消そうとするやつは、ぶっ飛ばす!!」
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◆終わりの始まり
「……ならば、抗うがよい。“記録を捨てた戦い”を」
神の仮面が砕け、光と闇の奔流が空間を支配する。
俺たちは剣を構えた。
これは、世界を賭けた戦いになるかもしれない。
でも、俺たちは“選んだ”。
記録じゃなく、自分の想いで、この道を進むって。
だから――
「行くぞ、みんな!!」
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