第123話『穏やかな朝に、気配は潜む』
鍋の翌朝、
ギルド街は、いつも通りの穏やかな空気に包まれていた。
リリィは早起きして、キッチンで焼きたてパンを用意していた。
「よーし、今日はヨシオを起こす前に“お弁当作戦”開始……!」
その横で、猫耳のテナは卓上でごろりと寝ていた。
「……にゃむ……ヨシオ、かっこいいにゃ……むにゃ……」
「…………」
(なにこの無防備かわいい生き物)
リリィは思わず、テナの猫耳をつんっとつついた。
「にゃっ!?い、今のはなんにゃ……?」
「あ、いや、なんでもないよ〜?(笑顔)」
「いま何か“私の魂が冷えた”ような……?」
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◆ヨシオとエリュ・静かな訓練場にて
その頃、ヨシオはエリュと二人で、街外れの訓練場にいた。
「エリュ、昨日の“観測者”って……本気で来ると思うか?」
「来るでしょうね。あれは……“可能性の監視者”だもの」
「なるほど、世界が“違う選択”をしたことで、
本来起こるはずだった運命を監視・修正しようとしてる……ってことか?」
「ええ。“自由意志”が、彼らにとって最大の“誤算”なのよ」
ヨシオは剣を振りながら言う。
「だったら、俺たちは“誤差”のままでいようぜ」
エリュは少しだけ、口元をゆるめた。
「……ええ。“計算不能”って、案外面白いかもしれないし」
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◆ギルド
一方、ウケールはギルド掲示板の前で唸っていた。
「くっ……“超巨大魚の捕獲クエスト”と“迷子のドラゴン”どっち受けるべきか……!」
受付嬢ミーナがあきれ顔で言った。
「ウケールさん、迷子のドラゴンは昨日“保護されて保育所にいます”って報告きてます」
「なにィ!?すでに保育済み!?」
「それ、言い方おかしくないです?」
「だったら……超巨大魚だ!待ってろ、謎の味噌漬けにしてやる!」
「調理前提やめてください!ギルド、戦闘依頼なんです!」
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◆夕暮れ
日が落ちかけた頃。
街の橋の上で、リリィとテナが並んでいた。
「ねぇ、テナ。……昨日の観測者たちのこと、まだ気にしてる?」
「うん。というか……ずっと“見られてる気配”が消えない」
「私も。……多分、あれはほんの前触れ。
次は、本格的に“仕掛けて”くる」
「だから、あんたは――ヨシオの隣を、ちゃんと守って」
リリィのその言葉に、テナは驚いたように目を見開く。
「……いいの?私、まだ仲間になったばっかりだし……」
「関係ないよ。誰かの隣に立つ資格って、“信じたいって思えるかどうか”だけじゃない?」
「…………ありがとう、リリィ」
「でも負けないけどね?」
「うにゃ!?」
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◆
夜。
街の外れ、廃教会に一つの影が立っていた。
仮面の男が、虚空に手をかざす。
「記録誤差:拡大中。可能性の芽、破壊は推奨範囲外。
代替手段、“再選択”の誘導に移行する」
そのとき、空がゆがみ、一本の黒い槍が虚空から突き出た。
「選ぶがいい。貴様が信じる運命を」
その影は、ヨシオたちの街を見下ろしていた――。
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