第122話『鍋を囲んで、猫耳をつまんで』
「あ~~~~~~、やっぱ鍋は正義だなぁ……!」
ギルド近くの宿にて、ヨシオ一行は久々に宴の真っ只中だった。
テーブルには、ぐつぐつと煮える特製鍋。
鍋奉行リリィによる「魔獣肉とキノコの滋養鍋」は、これがまた最高にうまい。
「よし、肉いくぞ肉ー!」
「だめ!今それ、いい出汁出てるからもうちょっと待って!」
「待てん!俺は今、腹が爆発寸前なんだ!!」
「それ我慢じゃなくて爆発に向かってるよね!?おかしいでしょ!?」
エリュが静かにメモをとりながら口を挟む。
「“ウケールの空腹時、理性との境界線が曖昧になる”……これ、研究に使えるかも」
「それ使いどころ間違ってんぞエリュ!」
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◆
「……鍋って、こんなにうるさいの?」
テナが、きょとんとした顔で鍋を見つめている。
「まあ、うちの鍋は特殊だからな……」
「でも、美味しい。あと、にぎやかで……その……」
「楽しい、だろ?」
「……うん」
テナは、ぽつんと笑った。
それはどこか寂しさを含んだ微笑みで、でも確かに“今”を楽しんでいる笑顔だった。
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◆
「……ところで、テナちゃん」
「なに?」
「ヨシオのとなり、ずっと陣取ってるの、気になるんだけど」
「え、あ。いや、別に……その、なんとなく落ち着くっていうか……?」
「ふ〜〜〜〜ん。ふぅ〜〜〜〜ん?(圧)」
「お、落ち着いてリリィさん、私、耳がぴくぴくしてるんだからそんな圧かけないで!」
「私のぴくぴくはそっちの意味じゃないわよっ!」
「どっちの意味だよ!」
ヨシオがツッコミを入れた瞬間、鍋が噴きこぼれた。
「うおおおお!?リリィお前火力強すぎ!鍋が火山!」
「うわぁぁ!?テナのしっぽ燃えかけてるうぅぅ!」
「にゃあああ!?ちょ、ヨシオ、早くタオル、タオルォ!」
騒がしくも、笑い声に包まれる食卓だった。
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◆
その夜――。
外の風が変わった。
ヨシオはふと、夜風にあたろうと窓を開ける。
「……?」
街の空に、黒い羽のようなものが舞っていた。
エリュもすぐに気付く。
「ヨシオ。これ、魔族由来の“転移羽”だわ」
「転移羽……ってことは、どこかに“使者”が来てる?」
そのとき、宿の扉がコン、コンと鳴った。
リリィが警戒しながら扉を開ける。
そこにいたのは、
白髪のローブ姿の女と、仮面をつけた長身の男。
「失礼。
我々は、“終焉の記録”の観測者と申します」
「……また面倒くせぇ組織名きたな……」
「ヨシオ様。貴殿の《選択》が、この世界に大きな“誤差”を生じさせました」
「……誤差?」
「“変わるはずのなかった未来”が、動き始めたのです。
次に選ぶのは、“神々”か、あるいは――貴方方です」
テナがすぐさま前に出た。
「こいつら、アヴァロスの“観測端末”だった連中……!」
「どういうことだ?」
「遺跡が動いたときに、この連中の一部は外部へ逃れた。
そして……“次なる管理対象”を探し始めたのよ」
「つまり――俺たちが、また狙われるってことか?」
「狙われるというより、“試される”のです。
新たな記録、新たな秩序の担い手として、ふさわしいかどうかを」
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