第118話『記録の扉、選ばれし意志』
浮遊遺跡アヴァロス、その最深部。
“記録の核”と呼ばれる、封印された扉があった。
天井はガラスのように透明で、夜空がすぐそこにある。
その空の下、俺たちは“開かれるのを待つ扉”の前に立っていた。
> 「来訪者、《ヨシオ一行》。試練をすべて突破したことを確認」
「最終記録への鍵を付与する。選択せよ」
カル=ヴァルト――あの機械仕掛けの賢者が静かに言葉を続ける。
> 「扉の先には、この世界の“起源”が記されている」
「そして、そこには選択肢が提示される。
“旧き法則を継ぐ”か、“新たな法を打ち立てる”か」
「……旧き法則って、なんだよ?」
> 「神と人との契約。力の循環。
生きる者と滅びゆく者の役割の分担」
「……それって、誰かが“死ぬことで世界が回る”って話か?」
> 「正確には、“誰かが犠牲になることで、他の命が延命される”
アヴァロスはその均衡を保つ装置として存在していた」
「じゃあ、ルシェやリオナの死も……?」
> 「――因果の一部、ではある。だが偶然でもある。
彼女らの死をもってしても、世界は“変わらなかった”。
だからこそ、今、問う」
> 「汝は、“変える”覚悟があるか?」
その瞬間、全員が静かになった。
リリィが、ゆっくりと俺の手を握る。
「……変えるって、どういう形なの?」
> 「この装置を解除すれば、“死”による均衡は終わる。
その代わり、“生命のエネルギー循環”が壊れ、“破滅”が始まる可能性もある」
> 「だが、選ぶ権利は“意志を示した者”にある。
それが、世界に残された最後の裁定だ」
「……ずるいよな。こんなでかいこと、俺たちに選ばせるなんてよ」
> 「君たち“だけ”ではない。すでに、別の来訪者がこの選択にたどり着いている」
その言葉と共に、もうひとつの扉が開いた。
そして――一人の人物が現れた。
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◆謎の男・カイ=ゼル
黒と赤の装束。虚ろな金の瞳。そして、どこかヨシオに似た“気配”。
「お前は……」
「俺はカイ=ゼル。この記録に触れた、もう一つの可能性」
「どういう意味だよ?」
「お前は選ぼうとしている。だが俺は――すでに選んだ。
この世界は“変えられない”。
ならば、いっそ、壊してしまえばいい」
リリィが一歩前に出る。
「壊せばいいって……そんなの、ただの逃げだよ!」
「逃げ?違う。これは――諦めの先にある革命だ」
カイ=ゼルの背後から、黒い霧が立ち上る。
アヴァロス全体が、軋みを上げ始める。
「こいつ、遺跡と“同調”してる……!」
エリュが警告を発する。
「今、決めろヨシオ。
真実を知って、“守る”か、“壊す”か」
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◆ヨシオの選択
全員の視線が、俺に集まる。
「……俺は、壊さねぇよ」
「……ヨシオ」
「どれだけ腐ってても、歪んでても、この世界で出会ったものを――
壊したくなんてねぇよ。
リリィやエリュ、ウケール、ルシェ、リオナ。
みんなが生きて、笑ってた世界だ」
カイ=ゼルの目がわずかに細まった。
「……なら、力で証明してみろ。
この世界を、守れるだけの“意志”があるのかどうか」
「上等だ。――来い!」
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