第117話『機械仕掛けの賢者と封じられし災厄』
浮遊遺跡アヴァロス――空に浮かぶ塔の中心部へ向かって、俺たちは進んでいた。
通路は石と金属が融合したような奇妙な構造で、壁面には古代言語と思しき文字が幾重にも刻まれていた。
「ここに記されているのは……“記録”じゃない。“問答”の痕跡だわ」
エリュが指をすべらせながら言う。
「“来訪者の意志を問え”――“答えに至る資格を試せ”……」
「つまり、ここは“神の試験会場”ってことか?」
「それに近いかもしれない」
「うーん……雰囲気も音も静かで、逆に落ち着かないな……」
リリィがぎゅっと俺の腕をつかんでくる。
「こ、怖いのか?」
「こ、怖くなんかないもん!ちょっとだけ、手をつなぎたいだけ!」
「今の流れでそれは無理があるだろ!」
「じゃあ……つないでいい?」
「……好きにしろ」
リリィの顔がぱっと明るくなる。まったく、油断も隙もない。
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◆中心部:『記録の間』
巨大なドーム状の空間にたどり着いた瞬間、天井の光が明滅し、空気が震えた。
中央には――銀色の機械人形が、両目に蒼い光を灯して佇んでいた。
> 「来訪者、確認。記録者《カル=ヴァルト》、起動します」
「この場所に踏み込んだ理由を述べよ。目的、意志、そして覚悟」
その声は機械的でありながら、どこか人間味すら感じさせる響きだった。
俺は一歩前に出て、答える。
「俺たちは“この世界の真実”を知るために来た。
過去に何があって、今がどう成り立ってるのか。
そして――これから、どうあるべきなのかを、見極めるために」
> 「承認。では問う――お前たちは、“過去の喪失”をどう受け入れるか」
「生きるために忘れるか、苦しみながら記憶を継ぐか、あるいは――」
機械の賢者は、続ける。
> 「過去に囚われ、世界ごと壊す選択もまた、“意志”だ。
答えよ、“喪失”をどう扱う?」
――“喪失”。
ルシェとリオナを失った、あの瞬間が脳裏をよぎる。
苦しかった。今も引きずっている。
でも、俺たちは止まらずにここまで来た。
「……忘れねぇよ。あいつらのことも。全部、受け入れる。苦しんでも、前に進む」
> 「その答え――“記録”として受理」
「汝の名、《ヨシオ》。資格、暫定承認」
ドームの奥が開かれる。
しかし――
> 「だが、その先には“封印された災厄”が存在する。記録された“怒り”が、今なお形を持ってこの地に在る」
「“破壊者《カイ=レア》”――起動を感知」
次の瞬間、壁が砕け、黒き鎧に包まれた人型兵器が飛び出した。
「こいつが……“災厄”か!?」
「エリュ、距離取れ!ウケール、正面援護!」
「了解!」
「リリィ、俺の右に!」
「いくよ、ヨシオ!」
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◆戦闘:封じられし災厄《カイ=レア》
巨大な剣を構え、無言で襲いかかる黒き兵士。
その動きは鋭く、力強く、何よりも“執念”のようなものを感じた。
「くっ……重い!」
俺の剣が受け止めるたびに、手がしびれる。
「ヨシオ、上!魔力の流れが集中してる!」
「了解、いけるか……【雷閃・断】!」
空中に飛び上がり、剣を振り下ろす。
雷光が刃に走り、黒き兵器の装甲を砕く――
「今よ、ウケール!」
「【火破砲・改】いっけえぇぇぇぇぇ!!」
ズドォォォン――!!
爆炎が走り、災厄の鎧がついに砕けた。
そして――静寂。
> 「記録更新。来訪者、災厄の鎮圧を完了。汝らに、最深部の“記録”への道を開く」
「だが覚悟せよ。次に待つのは、“世界の選択”」
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◆エピローグ:夜の休息・語らい
再び記録の間に戻った俺たちは、焚き火を囲んでいた。
「……怖くない?」
リリィがぽつりと呟いた。
「この先に、“知りたくなかったこと”があるかもって」
「怖いよ。でも、知らなきゃ進めない」
「……うん。なら、ちゃんと隣にいる」
俺の肩に、リリィの体温が触れた。
エリュも、少し距離を置きながらそっと言う。
「この世界は、忘れたがっている。けど私たちは、思い出さなきゃいけない。……きっとね」
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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