第116話『空をゆく旅、アヴァロス浮上』
朝。
水の都エルグレアの上空に、まるで蜃気楼のように浮かぶ影が現れた。
それは――巨大な浮遊島。その中心には、光を放つ塔がそびえていた。
「間違いない……アヴァロスが、目を覚ました」
エリュが静かに呟く。
俺たちはギルドからの正式な依頼として、浮遊遺跡の調査と、その核心部への接触を命じられた。
「……空、飛ぶのか俺ら……」
「ふふふ、安心しろヨシオ!我が手製の【爆裂式対重力バルーン船】がある!」
「不安しかねぇ!」
「しかも今回、ちゃんと爆発しないんだぞ!」
「“今回”って何だよ過去の実績どうなってんだよ!!」
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◆準備と出発
港の外れ、特設浮遊台にて。
俺たちは装備を整え、物資を積み、そしていよいよ搭乗する。
「エリュ、大丈夫そうか?」
「はい、ウケールの船体設計は……見た目以外は完璧です」
「見た目以外って……!」
リリィはワクワクした顔で、もう船に飛び乗っている。
「ねえヨシオ、空を飛ぶのって初めて?」
「ああ。てか正直、俺はこういうの地に足ついてる方が安心するタイプなんだが……」
「じゃあ、ちゃんとつかまっててね。私の手とか」
「お前最近の“距離感”どうなってんの!?」
「ふふっ、好きだよ、ヨシオのツッコミ」
そんな調子で、俺たちは浮遊船へと乗り込み――
「上昇――開始!」
魔力石がうなり、帆が風を掴む。
船は、浮かび始めた。
水の都が下に、小さくなっていく。
空が近づく。雲の層を越えて――
「……見えてきた」
雲海の上に浮かぶ、古の塔――
《アヴァロス》。
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◆浮遊遺跡アヴァロス・外縁部
「これは……すごいわ。完全に“生きてる”遺跡」
エリュが目を見開く。
「遺跡の石材から、微弱な魔力脈動を感じる。外部からの接触に反応して……自己修復してるわ」
「つまり、俺たちのことを“来訪者”と認識してるってことか?」
「かもしれない。でも歓迎されてるとは限らないわ」
「そういえば、この辺“やけに静か”じゃない?」
リリィが、空を見上げる。
その瞬間――
「っ!」
ガコン――という音と共に、足元の床が光を放ち、魔法陣が浮かび上がった。
「罠か!?」
「違う、これは……“選別”よ!」
遺跡の声とも呼べる低い響きが、空に響いた。
> 「……来訪者よ。汝らは、記録を求むる者か。それとも、破壊者か」
「答えよ――その“意志”を」
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◆静かなる試練の始まり
「これ、会話してきてるのか?」
「ええ。アヴァロスそのものが“意志”を持っているのかもしれない」
エリュが息を飲む。
「……私たちは、過去を知り、未来へ繋ぐ者。破壊する意思はない」
「その通りだ。俺たちは“答え”を求めに来ただけだ」
静寂。
そして、魔法陣がすっと収束し、通路が開いた。
「試された……のか?」
「ええ。“入る資格”を問われたのね。たぶん、これからも“選ばれる”局面が続く」
「だったら俺たちで、全部乗り越えるだけだろ」
「……ふふっ、かっこいい。今の記録したい」
「なんでそういう時だけテンション上がるんだお前!」
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◆夜・アヴァロス内部・休息所
その夜、遺跡の安全地帯とみられるホールで、俺たちは小さな焚き火を囲んでいた。
風はないが、空気は冷たい。
星が真下に見える――まさに“空の上”での野営だった。
「ヨシオ、あったかい?」
「……ま、寒くはないな」
「なら、もっとあったかくしてあげる」
リリィが、俺の肩に頭を預ける。
「……近いって」
「んー、だって今日のヨシオ、特に頼もしかったから……ご褒美」
「そういう時だけ甘え上手になるな……」
「えへへ」
エリュは、少し離れて座りながらも、こちらに目を向けて小さく微笑む。
そして、誰よりも静かに呟いた。
「……この空の果てに、“答え”があるのなら。私は絶対に逃げない」
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
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