第113話『水の都、つかの間の休日』
祠での記憶探索を終え、都に平穏が戻った。
ギルドの公式発表によって、「魔水の亡者騒動」は“突発的な魔素濁流”として処理され、ヨシオたちは一時的な功績者として名を知られることになる。
それでも、今は――
「ふわぁ……あー、よく寝た……」
目が覚めると、窓の外には水路を流れる小舟の影。街はすでに賑わいを見せ始めていた。
「ヨシオー!朝ごはんできてるぞー!」
階下からウケールの元気な声が響く。
「……お、今日は焼かれてないといいけどな」
俺は伸びをしてから、のんびりと下へ降りた。
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◆ギルド酒場・朝の部
「焼きすぎたトーストと、冷えたスープだ。どうぞ」
「いやせめて温かいのがいいよな!?ウケール!?」
「料理番は俺じゃねぇ!今日はリリィとエリュが――」
「えっ? そ、それは内緒だってば!」
リリィが慌てて口を塞ぎにくる。
その背後では、エリュが静かに座って紅茶を飲んでいた。机の上には、焦げたパンがきれいに並べられている。
「……もう少し加熱時間を短くするべきだったかしら」
「絶対そうだよ!」
「でも、ちょっと香ばしくて私は好きかも」
リリィは無理やり笑顔を作って食べているが、口元がちょっと引きつっていた。
「……しばらくはエルグレアで休めるらしい。ギルドも“しばらく依頼はない”って」
「ってことは……自由時間ってことか?」
「そうよ」エリュが小さく微笑む。「せっかくだから、都を見て回ってみない?」
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◆午前:観光スタート!
こうして、俺たちは水の都めぐりへと繰り出した。
白い石畳の道、路地裏の猫、橋の上で歌う吟遊詩人――
リリィは市場でアクセサリーを吟味し、ウケールは食い倒れ、エリュは歴史資料館で古代魔術の写本に夢中になっていた。
「ヨシオー!この魚な、口が三つあるんだぜ!?」
「いや食う前にその時点で疑えよ!?」
「ん、なに? ヨシオも口が三つあるの?」
「ないよ!!!」
笑い声が、運河に広がっていった。
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◆午後:ひとときの語らい
日も傾き始めた頃、俺はリリィと水辺のベンチに座っていた。
「……楽しいね、こういうの」
「うん。久しぶりに、なんか普通に笑えた気がするよ」
「普通って、すごく特別なんだね」
リリィの横顔は穏やかで、どこか懐かしさすら感じさせた。
「……ありがとう、ヨシオ。いっつも隣にいてくれて」
「お、おう。なんか照れるな」
「えへへ。照れてるヨシオ、ちょっと好き」
「な――!」
思わず目をそらすと、リリィは小さく笑っていた。
「冗談、半分。本気、半分、ね」
「その比率やめてくれ……!」
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◆夜:エリュとウケールと温泉
「この都の温泉は《癒しと気づきの泉》といって、精神を穏やかに整える効果があるんだそうよ」
「ほぉ~、それはありがてぇ……。って、ヨシオー!この桶ぬるいぞ!ぶつけるなよ!?」
「それ絶対ぶつけられる前振りだろ!?」
バシャーン!
「おいこらぁぁぁぁ!!」
湯気の中、わいわい騒ぐ声が夜に溶けていった。
エリュはその様子を見ながら、微笑む。
「……こうして笑える日が、ずっと続けばいいのに」
ぽつりと漏らしたその言葉に、俺はそっと頷いた。
「きっと続くさ。俺たちが、続けようとする限り」
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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