第112話『封じられた祠と、水底の真実』
エルグレア旧市街の一角に、ぽつんと佇む**祠**があった。
古びた石の柱、今はもう機能していないはずの魔力封印陣。
そこは、かつて都が“何か”を封じるために造ったとされる禁忌の地――。
「ここだ……思い出した。子供の頃、母に連れられてここに来たことがある」
リリィの声は少し震えていたが、目には決意の色があった。
「中に入るぞ」
俺たちは小さな石の扉を押し開け、祠の中へと足を踏み入れた。
中はひんやりと冷たく、空気に古い魔力の匂いが漂っていた。
「……これは、ただの祠じゃない」
エリュが指を鳴らし、天井に浮かぶ魔紋を照らす。
「この構造、記憶封印式……。それも極めて高度な。“誰かの記憶”が、空間そのものに閉じ込められてる」
「つまり、リリィの記憶……?」
「その可能性が高いわ。開放には、本人の意志が必要」
エリュがリリィに視線を送る。
彼女は小さくうなずいた。
「……やる」
静かに、リリィが祭壇へと手を伸ばす。
その瞬間――
石壁が震え、淡い光が祠の中を包み込んだ。
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◆記憶の世界
気がつくと、俺たちは祠の中ではなく、淡い光の中にいた。
「……これは?」
「記憶の中だわ」エリュが周囲を見回しながら答える。「リリィの記憶が具現化してるの」
目の前には――幼いリリィと、その母親と思しき女性がいた。
「リリィ。あなたは、この都と、水の神に選ばれた子です」
「うん。リリィ、大人になったら神さまを守るの!」
母は微笑みながら、リリィの髪を撫でた。
「でもね、もしこの都に“大きな災い”が訪れた時は……」
「?」
「あなたは、皆を救うために“自分を忘れる”ことになるかもしれない。忘れてもいい。誰かが、きっと見つけてくれるから」
「……ヨシオ……」
リリィが、俺の手をぎゅっと握った。
やがて記憶の映像は溶けていき、再び祠の中へ戻ってきた。
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◆
「私……この都を守るために、過去を捨てたんだ……」
リリィの声はかすれていた。でもその瞳は、はっきりと未来を見据えていた。
「そして、ヨシオ……あの人が言ってた通りだった。誰かが、私を見つけてくれた。あなたが」
俺は照れくさくて、視線をそらした。
「……そんなん、当然だろ。仲間なんだから」
「うん……ありがとう」
リリィがそっと寄りかかってきた。
「私、思い出したことで怖くなるかと思ったけど……逆に、すごく安心した。過去があるから、今があるんだって」
「……なら、これからも一緒に行こうぜ。都も、世界も、全部救ってやろう」
「うん!」
エリュも、少し離れた場所でそっと笑っていた。
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◆その後、街の広場で
ウケールが屋台の串焼きを両手に持って全力疾走していた。
「リリィィィィィィ!こっちのタコ焼きは普通の味だけど!こっちは“なんか光ってる味”だぞォォォ!!」
「それ、絶対やばいやつでしょ!」
リリィが笑いながら追いかける。
エリュは困ったように眉を寄せ、俺は久々に声を出して笑った。
静かで、不思議な余韻の残る一日だった。
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