第109話『継がれし血、選ばれぬ運命』
「――久しぶりね、“エリュ”。まさか、本当にこの扉を開けてしまうなんて」
砂塵の向こう、黒衣の女が立っていた。
漆黒のローブに身を包み、妖しく輝く魔石を首にぶら下げたその女は、
エリュと同じ白銀の髪と、冷たい琥珀色の瞳を持っていた。
「まさか……あれが……エリュの……」リリィが驚きを呟く。
「……“姉”だよ」エリュが静かに答えた。
「名は――セレナ・ヴァレンツ。魔術師の名家に生まれ、最も早く“開門呪”を継いだ最強の継承者。そして……」
彼女は目を伏せる。
「……一族を裏切り、すべてを燃やした女」
◆
セレナはゆっくりと階段を降り、神殿の鍵の間へと足を踏み入れる。
「あなた、まだその古びた家名にしがみついてるの?」
「……違う。私は、家を捨てた。あんたとは違う形で」
「でも結局、“門”は継いだ。運命から逃げられないのよ。私も、あなたも」
セレナは指先を鳴らす。
浮遊する魔石がエリュの周囲に展開し、黒い鎖のような魔力が絡みつく。
「くっ――!」
「さすがは妹ね。適合率は想像以上。やっぱり“鍵”を持つのに、あなた以上の器はいない」
「やめろ……!」
俺は剣を抜いた。
「彼女から離れろ……!」
「ふふ……ヒーロー気取りの男の子? いいわ、見せてちょうだい。“仲間”ってやつの力を」
次の瞬間――戦いが始まった。
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◆バトル:セレナ vs ヨシオたち
セレナは「幻影魔術」と「魂系統の黒魔法」を自在に使いこなし、俺たちの動きを分断してくる。
「くっ、リリィ、後ろ――!」
「大丈夫……!《雷鎖陣・雷光斬》!」
だが、彼女の魔術はそれを上回る速度で展開された。
「《偽門式・虚数領域》」
空間が反転する。そこにあるはずの場所が消え、視覚すら惑わされる。
「これが、ヴァレンツの“真の後継者”だっていうの……?」
エリュが、苦悶の声をあげた。
だが――
「……違う……!」
彼女の瞳に宿る光が、変わった。
「私はあんたの影なんかじゃない……!あの日、母を裏切って家を燃やしたあんたの、後を継いだつもりはない!!」
エリュは叫ぶ。
「私は、“選ばれた”んじゃない……“自分で選んだ”んだ!!」
《真言展開・門式・蒼天の連環》
神殿全体の魔紋が共鳴し、空間が一気に収束する。
「これが、私の――“鍵の魔導式”!」
エリュの魔力が、黒の幻影を突き破る。
セレナがひるんだ瞬間――俺とウケールが突撃。
「もらったぜッ!!」
ウケールの拳が、セレナの胸元の魔石を打ち砕いた。
「がっ――!!」
黒い魔素が解放され、彼女の身体から力が抜けていく。
◆
セレナは崩れ落ちた。
エリュがそっと近づくと、姉の顔にはかすかな笑みが浮かんでいた。
「……やっぱり……あなたは、私より強い……それで、いいのよ」
「なぜ……全部を壊すしか、なかったの?」
「私には、希望を信じる仲間がいなかった……。たったそれだけ」
そのまま、彼女の体は魔素とともに消えていった。
◆
「……終わったな」
エリュは力なく座り込んだ。
俺はそっと隣に座る。
「エリュ。……お疲れ」
彼女はかすかに笑う。
「ふふ……ありがとう、ヨシオ」
その笑みは、今までで一番、柔らかかった。
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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