第106話『鏡の私、記憶の彼方で』
閃光の中、俺の放った《セラフィムバースト・改》は、真正面から“リリィ・ゼロ”へと襲いかかった。
しかし――
「迎撃プログラム、起動。《七層障壁・イミテーション・ソル》」
刹那、空間が軋んだ。
リリィ・ゼロが展開した魔法障壁が、俺の魔力を全て吸収・無効化していく。
「くっ……!」
その防御力、まさに本物の“魔術兵器”だ。
だが俺は引かない。
「お前は……誰かの命令で動く機械じゃない!」
俺は剣を握り直す。背後ではエリュとウケールが援護に回っていた。
「《雷刃・雷鎖》! 足止めは任せろ!」
「俺は囮になる! 行け、ヨシオ!」
リリィも魔力を展開する。
「お願い……もう一人の“私”!目を覚まして!」
彼女の声が空間を震わせた瞬間――
リリィ・ゼロの動きが止まった。
◆
「記憶、干渉……確認」
その場に崩れ落ちた“リリィ・ゼロ”が、うつむいたまま呟く。
「私ハ……ナゼ、存在シテイル……?」
その声は、感情を持たない機械のものではなかった。震え、迷い、そして“孤独”がにじんでいた。
リリィがそっと彼女に近づく。
「あなたは私……だけど、私じゃない。
あなたは、誰かに“そうあるように作られた存在”だった。でも――」
リリィが涙ぐみながら手を差し出す。
「……自分がどう生きたいかは、自分で決められるの。私はそれを、ヨシオたちと出会って知ったから」
ヨシオはリリィの隣に立ち、静かに語りかける。
「生まれ方や過去がどうだろうと、関係ない。おまえが、自分で未来を選ぶなら――俺たちはその味方だ」
沈黙の中、リリィ・ゼロがそっと、手を伸ばす。
そして――
「……私ハ、“リリィ・ゼロ”。自分ヲ、選ブ」
その瞬間、地下施設を包んでいた全ての魔力が静かに沈んだ。
決戦は、終わった。
---
リリィ・ゼロは、施設の奥に残された制御装置のコアへと手を伸ばした。
「ココニ、私ヲ制御スル命令群ガ……。破壊シマス。ダカラ、私ハ……自由ニナル」
「いいの?」リリィが問う。「記憶が消えてしまうかもしれない」
「構ワナイ。記憶ヨリ、大事ナ“今”ヲ、モラッタカラ」
ヨシオは彼女にひとつだけ聞いた。
「これから、どうする?」
しばらく黙っていた彼女は、ふわりと笑った。
「……少シ、空ヲ、見タイ。雲ト、風ヲ、感ジタイ」
それは初めての、彼女の“願い”だった。
---
俺たちは、再び旅に出る。
リリィの過去、王国の陰謀、そして魔石の真相――まだ解き明かすべき謎は多い。
でも今は、この静かな空の下で――
「やっと、ほんとに仲間になれた気がするな」ウケールが笑う。
「“ゼロ”ではなく、“ひとり”として、ね」エリュも優しく呟いた。
リリィ・ゼロが、空を見上げた。
「アオイ、ネ……」
その一言に、俺たちはただ頷いた。
「面白かった!」
「続きが気になる、続きが読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
あと、感想も書いてくれるととても嬉しいです!