第105話『裏切りの血、導かれる者たち』
王都を脱出した俺たちは、山間の古道をひた走っていた。
追っ手の影はまだ見えないが、気は抜けない。リリィの存在が“国家レベル”で注目される存在だったことを思い知った今、敵は単なる兵士では済まない。
「この先に“黒の森”がある。その中腹、霧の洞窟の奥に――かつて封印された“地下都市”があるらしい」エリュが地図を指して言う。
「地下都市?……そんなもん、ほんとにあるのか?」ウケールが言いながら、背中の荷物を背負い直した。
「ある。アルトリエ家の魔導文献にも記されていた。そこに……“もうひとりの私”がいる」
リリィがぽつりと口にした。
「もうひとり?」
「記録には、“リリィ=アルトリエの原型となった魔術生命体”と書かれていた。私は、何かを複製された存在かもしれない」
言葉の重さに、誰もすぐには反応できなかった。
でも――
「だったら、確かめに行こう。おまえが“何者”かじゃなくて、“どう生きるか”を決めに」
俺がそう言うと、リリィは小さく微笑んでくれた。
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数日後、ついに“黒の森”の深奥へと到着した。
木々はうねるように歪み、瘴気が漂い、時折獣の遠吠えが響く。不気味な場所だったが、ここが“鍵”であることは感じ取れた。
「見えてきた……あれだ」エリュが指さした先に、半ば崩れた祭壇と、岩に封じられた石扉が現れた。
「……魔法反応、強いな。ちょっと近づくのもヤバそうだぜ……」ウケールが警戒する。
リリィは一歩、扉に近づく。
「……開いて。私が、ここに来た意味を知りたい」
その瞬間、彼女の手の甲が淡く光を帯び――
石扉が、軋むような音を立ててゆっくりと開いた。
中から吹き出した風は、冷たく、どこか懐かしいような匂いがした。
俺たちは目を合わせ、無言で頷く。
そして、地下へと足を踏み入れた。
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中は、想像以上に広大だった。
崩れかけた魔導施設。天井に輝く魔石灯。中央に眠る、巨大な水晶の棺。
その中に、誰かが眠っていた。
銀髪の少女――リリィと瓜二つの顔。
「……これは……」
リリィが膝をつく。
「彼女が……私の、“元”……?」
そのとき、水晶棺に魔力が走った。
「来訪者、確認。認証コード“アルトリエ”。命令再開――《覚醒》」
ごぉぉぉぉん、と音を立てて、地下都市全体が振動した。
「マズいぞ!何かが動き出してる!」ウケールが叫ぶ。
水晶棺が割れた。
中から、もう一人のリリィがゆっくりと立ち上がる。
だが――その目には、光が宿っていなかった。
「……侵入者、排除開始」
彼女は完全なる自動戦闘兵器だった。
「来るぞッ!!」俺は剣を構える。
だがその瞬間、リリィが叫んだ。
「待って!!やめて……お願い、わたしは――あなたと、話したい……!」
その声に、一瞬だけ、もう一人のリリィの動きが止まる。
だが、魔術陣が強制起動する音が響き――彼女の背中に黒い翼のようなエネルギーブレードが展開された。
「くっそ……これ、本気で戦うしかねぇぞ!」
「でも、リリィにそっくりな相手を……殺せってのかよ……!」
「――俺がやる!」
全員が止まった。
「俺が、止める。おまえたちは援護してくれ!」
俺は走り出した。あの瞳の奥に、何かがあると信じて。
「聞こえるか……リリィ! おまえの声は、ちゃんと届いてる!」
“機械のリリィ”は俺に向かって魔導砲を放つ。
「だったら、俺の声も聞けええええええええ!!」
俺の魔力が解放される――
《断絶穿光・セラフィムバースト・改》
その瞬間、閃光が闇を貫き、戦いの火蓋が切られた。
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