第104話『王都の陰謀、壊された記憶』
王都——それは絢爛と腐敗が隣り合わせの都。
俺たちがたどり着いたその街は、まるで一枚の仮面のように美しかった。白亜の城塞、整然と並ぶ石畳、豪華な馬車が行き交い、人々は貴族と平民にきっぱりと分かれていた。
「……なんか、空気がぴりついてんな」ウケールが腕を組む。
「貴族社会とはこういうものだ。正しさよりも、地位と血筋がすべて」エリュが低く呟く。
リリィは黙って歩いていた。瞳の奥には不安と覚悟が混ざっていた。
彼女の過去が、ここで暴かれる――それが分かっていたからだ。
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王城への通達が下され、俺たちはアーデルに案内される形で謁見の間へと入る。玉座には第三王子・カイル=ヴィスベルグ。その隣には、荘厳な装いの魔術師たち。そして……一人の老女。
「ようやく来たか。――久しいな、リリィ=カリーネ。いや、“リリィ=アルトリエ”と呼ぶべきか」
「……っ!」
リリィの体が硬直した。
「アルトリエ家。数十年前、魔導大戦を引き起こした“禁呪の血脈”の末裔だ」
ざわめく室内。
俺は思わず一歩前に出た。「ふざけるな。リリィがそんな戦争に関わってるわけないだろ!」
アーデルが冷たく言い返す。「血は記憶を継ぎます。あなた方が遺跡で触れた魔石。それもまた、アルトリエの残した“世界崩壊魔術”の欠片なのです」
「リリィがそれを狙ってるって言いたいのか!?」
「いいえ。だが、問題は“もし彼女が暴走した場合”です」
リリィの拳が震えていた。
「……私は、何も覚えてない……ただ、夢の中で、誰かが泣いてる声がして……」
「記憶を封じたのは、おそらく自衛本能でしょう」
カイル王子が立ち上がる。
「だがそれが今、揺らいでいる。魔石の刺激によって、禁呪の記憶が甦る可能性がある」
そして、重い声で言った。
「リリィ=アルトリエ。貴様には、二つの選択肢がある。一つは、我が監視下で魔術封印を受け、宮廷に留まること。もう一つは、禁忌保持者として、廃都の“監獄結界”に送られることだ」
空気が凍りついた。
「そんなの、どっちも――!」俺が叫ぼうとしたその時。
「……どちらも、受けません」
リリィが、はっきりと告げた。
「私は、自分で選ぶ。自分の力を、どう生きるかを」
その言葉に、場の空気がざわついた。
「おまえ……王命に背く気か」
「私は、もう誰かの言いなりになんかならない」
リリィが、俺の手をぎゅっと握った。
「ヨシオ。行こう。こんな場所、もういたくない」
「――ああ、行こう」
エリュとウケールもすぐに動く。四人で、王の間を後にした。
背後で、王子が低く言った。
「……始末せよ」
その一言が、すべての引き金だった。
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◆逃走劇◆
王城の兵たちが一斉に動き出す。
炎、氷、雷の魔術が飛び交う中、俺たちは必死に城を抜け出す。
「リリィ、走れ!」
「任せて……《空間跳躍陣・短距離》!」
リリィの魔法が発動し、一瞬で別の通路へ飛ばされる。
「逃がすかよォォッ!!」
兵士が迫るが――
「甘いッ!俺の筋肉でお前らの魔法ごと止めてやらァァア!!」
ウケールの《防壁拳》が炸裂する。爆風で敵を弾き飛ばし、その隙に俺たちは門を抜けた。
外は夜。星が静かに瞬く。
「……助かったか?」
「いや、これからが本番だ」エリュが冷静に言う。「王都にいられる猶予は、もう無い。追手は必ず来る」
「なら……行こう」
俺はリリィを見た。彼女は小さく頷いた。
「今度は……私が、自分の力で戦う」
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