第103話『黒幕たちの蠢動、謀略の始まり』
ギルドへ帰還して数日。俺たちは久々の穏やかな日々を過ごしていた。
リリィは図書館で魔石に関する文献を読み漁り、ウケールは宿の地下で筋トレ、エリュはギルドの補助魔法講習に参加していた。
俺はといえば、ぼーっと窓から街の様子を眺める、なんとも退屈な朝を過ごしていた――その時だった。
「ヨシオ、来客だ。王都の者らしい」
宿屋の主人が真顔で告げた。
「王都……?」
訝しげに玄関に出てみると、黒衣の騎士が二人、無言で直立していた。その間に立っていたのは、蒼銀の髪を持つ女性。歳は俺と同じくらいだろうか。冷たい眼差しでこちらを見据えていた。
「あなたがヨシオ殿ですね。私は“第三王子直属諜報部・副官”のアーデル=ヴァレンタイン。今回の遺跡調査と魔石回収について、王都からの正式な依頼と確認を兼ねて参りました」
「……王子直属、ね」
何か裏がある――直感がそう囁いた。
「目的は何だ。魔石か?」
「その通りです」
アーデルは一切の迷いなく頷いた。
「その魔石は“王家の秘密”に深く関わるものです。あなたが保持するのは、重大な禁忌にあたります。ですので――王都までご同行いただきます」
周囲の空気が凍った。
リリィが口を挟む。「ちょっと待って!私たち、命を賭けてその魔石を……!」
「知っています、リリィ=カリーネ嬢」
リリィの名を呼んだ瞬間、彼女の表情が固まった。
「……あなた、私のことを……?」
「もちろん。あなたの血筋は、王都ではよく知られていますから」
その言葉の意味を、俺は咄嗟に理解できなかった。
だが、リリィは一歩引いて小さく震えながら、俺の袖を握った。
「……ヨシオ、ごめん。私、何も言ってなかった」
「……構わない。言いたくなった時でいい。俺はお前を信じてる」
アーデルは淡々と告げる。
「私たちは数日、町に滞在します。王都への同行を拒否するなら……相応の処置をとらせていただきます」
そのまま、黒衣の騎士たちを従えた彼女は、背を向けて去っていった。
俺たちは沈黙の中、再び集まる。
「どうする、ヨシオ?」ウケールが重い声で問う。
「行くしかないさ。リリィのためにも、魔石の謎のためにも……な」
「ふん、決まったならさっさと準備だな」エリュは魔道具をまとめながら淡々と言った。
リリィはまだ、俺の袖を握ったままだった。
「……私のせいで、こんなことに」
「違う」
俺は優しく、彼女の頭に手を置いた。
「これは“俺たち”の問題だ。一緒に向き合おう。な?」
リリィはこくりと小さく頷いた。
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夜、出発前の準備を終えた俺は、宿の裏庭に出ていた。
その後を、そっとリリィが追ってきた。
「ねえ、ヨシオ」
「ん?」
「……怖いんだ。王都に行けば、私の過去も、全部暴かれる気がして」
「俺も怖いよ。でも、それでも行く。リリィと一緒に進みたいから」
彼女は、ふっと微笑んだ。
「……ありがとう」
月明かりの下、俺たちはそっと唇を重ねた。今だけは、何もかも忘れたかった。
でも、わかっている。
王都には、まだ見ぬ真実と、より大きな闇が待っている。
それでも、俺たちは進む――仲間と共に。
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