第102話『機動する遺跡、黒鉄の番人と失われた記憶』
深い霧に包まれた森を抜けた先――そこに、古代遺跡は佇んでいた。地面には無数の魔法陣が刻まれ、朽ちた石柱の上には意味深な紋章が浮かび上がっている。
「……これが、古代魔導兵器の眠る場所か」俺は息を呑んだ。
エリュが慎重に周囲を警戒する。「結界がある。魔法式はまだ生きてる」
「うっひゃー……魔法オーラびんびんだぞ……」ウケールは額から冷や汗を流している。
「気をつけて。ここ、ただの遺跡じゃない」リリィが前を見据えて言った。「“何か”が動いてる……」
その言葉の直後、空気がビリビリと震えた。
遺跡の中心から立ち上がる黒い影。
ガコン――ガコン――。
無機質な機構音と共に、全長3メートルを超える鉄の巨人が姿を現した。
「魔導兵器……っ!生きてるのか!?」「こっちに来るぞ!!」
ウケールが盾を構える。「来るなら来やがれ!俺の鉄壁、防いでみせる!」
「行くわよ!」リリィが指示を飛ばす。
エリュが素早く印を切り、俺は魔力を練った。
「――《断絶穿光・セラフィムバースト》!」
放たれた魔法の閃光が、黒鉄の巨人の肩を吹き飛ばす。
「ナイスだ、ヨシオ!」ウケールが叫ぶ。「もう一撃、頼む!」
しかしそのとき、巨人の胸部が開き、砲口が姿を現す。
「離れて!」リリィが俺を突き飛ばす。
直後、熱線が炸裂し、大地を焼いた。
俺は歯を食いしばりながら立ち上がる。「……くそっ、あいつ……!」
そのとき、リリィがそっと俺の肩に触れた。
「……ヨシオ。ここからは、私とあなたでいくよ」
その言葉に、俺は頷くしかなかった。
「――ああ、守る。もう、誰も失いたくないからな」
---
激戦の末、黒鉄の巨人を打ち倒した俺たちは、遺跡の奥で不思議な魔石を発見する。
「……これは」エリュが呟く。「人の記憶が封じられている……?」
「なんか、やべー気配するな……」ウケールは魔石を睨みつけた。
「でも、進むしかない」俺は魔石をそっと手に取る。
すると――
俺の意識が、漆黒に染まった。
俺の意識は、深い闇に沈んでいった。
そこは、現実とは違う――朧げな夢の中の世界だった。
◆
「……ヨシオ?」
誰かの声が聞こえた。優しく、どこか懐かしい声。
振り返ると、そこにいたのはリリィだった。けれど、今の彼女とは違う。もっと幼く、そして無垢で――
「……待ってたんだよ。ずっと」
「……リリィ?」
「うん。やっと、また会えたね」
彼女は微笑んだ。その微笑みに、俺の胸が軋んだ。
「なんで……ここにいるんだ。これって、夢じゃ……」
「夢だよ。でも――これは“真実”でもあるの」
周囲が揺れる。まるで空間そのものが崩れ落ちるように。
そして俺の頭に、断片的な記憶が流れ込んできた。
――昔、俺とリリィは、ある“契約”を交わしていた。命を引き換えに、力を授けるという禁断の契約だ。
けれど、俺はその記憶を封印していた。
「……あのとき、私は“あなたの剣”になったの。覚えてる?」
「……ああ。俺は、あの力を使って……大切な人を守ろうとして……でも……」
「だからもう、自分を責めないで」
リリィが俺の頬に手を添える。ぬくもりが、現実と何も変わらなかった。
「――今度こそ、一緒に生きていこう」
彼女の唇が、俺のそれにそっと触れ――
目の前が、光に包まれた。
◆
「ヨシオ!!」
目を開けると、仲間たちが俺を囲んでいた。
「よかった……!戻ってきたか……」リリィが安堵の表情で俺の手を握っていた。
「急に意識がなくなって、死んだかと思ったぞ!」ウケールが涙目で拳を握っている。
「……魔石の影響だったみたいだ」エリュが冷静に言ったが、その声にはかすかな震えがあった。
「……悪い。心配かけた」
俺は、リリィの手をそっと握り返した。
「でも、思い出した。全部……俺は、昔お前と契約してた。命を賭けてでも守るって」
「うん……」リリィは小さく頷いた。
「これからは――絶対に後悔しないように、生きよう」
俺たちは、再び歩き出す。過去を背負い、未来へ向かって。
◆
だがその影で、黒衣の男が魔石の欠片を拾い上げていた。
「“目覚め”は近い……世界の法則を覆す者よ。今度こそ、完全な器となるのだ……」
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