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ムーンデビル  作者: 神山
SEASON 1
1/3

DAY 1 もう一人の"誰か"

 結城雷の視界は真っ暗だ。身体が痛い、頭がクラクラする。だが、意識は第三者のように自分の身体に干渉できない。

 しばらくして、絶叫とともに飛び起きた。

「うわぁ!!」

 雷は汗を流し手を顔に当てた。

「いたっ!」

 頬を触ると血が付いていた。身体をみるとアザになっている所がちらほら。

 雷は部屋を出てリビングに降りた。ドアを開ける前からいい匂いがしていた。少し嬉しそうにドアを開けた。

「おはよう、パパ」

 キッチンで朝食を作っていたのは、娘の愛莉であった。

「おはよう愛莉、なにをつくってるんだ?」

「ベーコンエッグよ、また傷ができてるね」

「まぁな、今日はまだ軽傷かな」

「寝相悪すぎない?私に遺伝しなくて良かった」

「この前、寝相撮ろうと録画したはずなのにデータないし」

「自分で消したんじゃない?」

 軽口を叩く二人。こういうことは日常的であった。雷と愛莉の二人で暮らしており、妻は不慮の事故で亡くなってしまっている。

「美味しそうだね」

 そう言い雷は、つまみ食いをしようと手を伸ばすと愛莉に叩かれた。

「先にその汗だくな身体洗ってきたら?」

「手厳しいね」


 雷は出勤した。職場は塗料を作る工場である。年齢は35歳で自分と高校生になった娘を養うには十分な金額を稼ぐことができる。

 作業着に着替え朝礼を待っていた。すると、同僚が来て挨拶もなしに巷で有名なあの話を始めた。

「雷!みたか今日のニュース」

「朝から元気だな、ニュースって?」

「見てねえのかよ!昨日の夜も現れたんだってよ"ムーンデビル"が!」

「ムーンデビル?ああ、悪を成敗するとか何とか前にニュースで言ってたな」

「何だよ、反応薄いなぁ!悪を討つ正義のヒーローじゃないか!」

「何がヒーローだよ、ただの自警団だろ。暴力をしている時点で」

 興味もなさそうに流しながら話を聞く雷。それを無視するように目をキラキラさせて話す同僚。

「月夜に照らされながら悪を討つ。だが、顔は覆われていて知るものはいない…たまたま目撃した人の話だと悪魔のようだった。そこからムーンデビルって名付けられたって痺れるよなぁ」

「なら、月がなければ現れなさそうだな」

「屁理屈だなお前!」


 その日の夕方、愛莉と夕食を食べる雷。ニュースを見ていると、強盗が金を盗み現在も逃亡していると報道していた。

「強盗だって…怖いね」

 ニュースを凝視しながら食べる愛莉は、ポロポロとご飯をこぼしていた。

「こら、食べ物を落とすな」

「だってここら辺から近い地域じゃん」

「かの有名なムーンデビル様がどうにかしてくれるだろう」


 雷は自室でさっきの強盗のニュース記事を見ていた。夜11時を回ったころ、急激に眠気に襲われる雷。急いでベッドに倒れこんだ。抗えない。すると、どこからか声が聞こえてきた。

『やっと寝てくれるね』

「なんだっ!?」

 部屋の周りをみても誰もいない。

『さあ、ゆっくりお休み』

 やがて力が抜け気絶するように目を閉じた雷。その瞬間、ムクリと身体を起こした。その動きは先程の眠気を感じさせない身のこなしで、クローゼットを開けた。


 ある工場跡地。そこにはニュースになっていた逃走中の強盗が数人いた。

「へへっ!これで当分は遊んで暮らせるな」

「おい!山分けだぞ!多くとるな!」

「早くしないとムーンデビルが来るんじゃないか?」

「何言ってんだ、そんなやついるわけないだろ」

「そうだぜ、そんなや、、、」

 不意に顔を見上げた強盗の一人が絶句していた。そこには、赤い服を着て顔を麻袋で覆ったムーンデビルが、月夜に照らされていたのだ。

「ム、ムーンデビルだ!」

 強盗達は慌てふため、所持していた拳銃をがむしゃらにムーンデビルに発砲し始めた。

 工場跡地は発砲音と強盗の悲鳴が響いていた。

次第に発砲音と悲鳴が一つ一つ無くなっていく。静寂になった工場跡地からはムーンデビルが歩いて出てきた。歩きながら顔を覆った麻袋を外した。

 ムーンデビルの正体は目を閉じた状態の雷であった。

ありがとうございました。

新作始めました。自分と向き合うというテーマでつくろうかなと。

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