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勇者を利用する者たちの冒険  作者: とり飼ジン
双方山の冒険篇
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第83章 温泉だよ!


 森を出た新パーティになった勇者チームは目に見える村に行く事になった。


 アツウミ村、そこは体に温泉が湧き出ていて疲れや疲労などが取れることで有名である。


「ボクゥが宿を取ってくるから君たちはその辺をぶらぶらしといて」

「「「は~い!」」」


 3人と一匹はその辺をぶらぶらと歩くことにした。

ザクタマはリリネッドの頭の上に乗り寝ていた。3人はそれぞれ質問などしながら村をめぐる事にした。


「勇者さんは、ここまでおひとりで旅してるんっスか?」

「仲間がいたんだけどね、みんなどうしてるんだろう?」

「大丈夫っス?」

「大丈夫じゃない、みんな私より強いし賢いし」


 その発言にユウがネガティブな言葉で返した。

「見捨てられたんじゃない? こんなに世界に注目さては」


 ユウは道端に捨てられていた記事を見る。

「『夢の機関車、勇者によって緊急停止!』だってさぁ。本当の関係者じゃないとあなたがどんな人かなんてわからないよ」

「ユウさんは、勇者さんが悪い人だと思うんっスか」

「そうはいってないよ、さすがに仲間でも国や本格的に動き出した魔帝王にビビッて逃げたんじゃないって話だよ」

「かもね、でもビビる様な人達ではないよ。みんな」


 リリネッドは揺るがない口調で言った。先へと進むリリネッドだったが柄の悪そうな男達にぶつかってもめ始めた。

「てめーどこ見てんだ!!」

「あ、ごめんなさい」

「ごめんじゃ~ねぇ~ぞおお!!」

「うっえぇ」


 リボンが止めに入ろうと動くが腕をユウに捕まれてしまう。

「な、なに?」

「待って、勇者がどう乗り切るのか見たい。アシたちが背中を任せられるかどうか」


 3.4人に囲まれる勇者はボーっとした顔でいた。

「(どうしようかな)」


「てめー話きいてんのか!!」

「このガキ!!」

「ああ!!」

「もういい、拉致るぞ」


とリリネッドの腕を掴んでどこかへ連れて行こうとするのを見ているリボンはさすがにヤバいと思い、ユウの掴む腕を払って動く。がそこに…。


「アカン、アカン。その子、ボクゥの知り合いやねんな。手ぇ放してくれへんかな」


 アサノが助けに入った。

細い目からきらりと光る瞳が大柄の男たちをビビらせる。

「コイツの連れなら、落とし前をつけろ!!」

「付けたるよ、ボクゥが相手になろや」


 アサノはサッとリリネッドを男たちから引っ張り出して自分の後ろに隠したあと、ポケットから取り出したコインを男たちの目に向かって飛ばして、しゃがみ込み足を払う。

倒れ込む男たちに、毒キノコの欠片を口に飛ばした、すると男たちはお腹を押さえて逃げて行った。


「アレぐらいならボクゥでも相手になるで。」

「大丈夫か、ケガは無いかい?」


 アサノはリリネッドの体を触りまくる。

「だ、大丈夫だよ」

「ほんまか?」


 アサノはリリネッドの体を弄りまくる。中、リボンがその手を止める。

「触りすぎっス。勇者さんも辞めさせないと」

「ああ、そうだね」

「もうかして、勇者さんは鈍感ですっスか? いや、天然?」

「ん?」

「わかった、わかった、もう辞めるから、そないに強い力で手を握らんとって。折れてまうわ」


 リボンは手を払いリリネッドの腕を組んで歩き出した。その時、ボソッと話す。

「勇者さん、あの二人気を付けた方がいいかと」

「なんで?」

「解りませんがなんか嫌な感じがするっス」


 リリネッドとリボンが先に進む後ろ背中を見ているアサノの近くにユウが近寄る。

「嫌われてもたかな?」

「もう少し様子を見とけばよかったのに」

「焼いとるん?」

「はあ~何を」

「いいや、そないな冷たい態度のユウちゃんを見たことあれへんから」

「そんなことないよ。ただ」

「ただ?」

「あの勇者の態度が気に入らないだけ。勇者として、世界から狙われているってことをわかってない」

「これまでの経験がある勇者の余裕やろ」

「でも、あんなのが勇者って」

「せやけど事実、彼女は嘘か真実であれこの世界を少しつづ変えとる。ほんで国も魔帝王も世界が注目の的になっとる。ほんでそのすべてはユウちゃんが勇者に成るためのもの」

「まだ言ってるの?」


 アサノは口角を上げて笑う。

「ボクゥらの夢のため」


 ユウは黙っている。

「ところでユウちゃんは温泉どっちに入るん。男湯?女湯?」

「はあ! そんなもん」

「それやったら混浴にしてボクゥと二人きりで入ろうや、誰も邪魔が入れへん個室で」

「マジでいい加減にして。見た目いじりはよくないよ」

「そんなん言うたって、ユウちゃんが中性的な容姿をしてんのが悪いんやない」

「関係ないし」

「そないなボーイッシュな感じに褐色な肌、目ぇおっきく、髪もサラサラしとんのに服の上ではわかれへんけどめっちゃいい筋肉してるやんな」

「なんでわざわざ、詳しく口に出して言うんだよ!!」

「そらユウちゃんが可愛いから」


 ユウは顔を赤くしながらイライラしながらリリネッドの方へと逃げる。

「ほんまにからかうのに楽しい子やで」



 ●●●



 リリネッド達に泊まる宿に入り腰を下ろす。

「勇者さん、部屋にお風呂ついてますよ、しかも外に!!」

「へえ~、それはすごいの?」

「お高いと思いますよ、アサノさんでしたっけ? 自分たちそんなにお金ないと思いますが」

「ボクゥの話術や」


 怪しむリボンに寄り添うリリネッド。

「大丈夫だよ、リボンちゃん」

「勇者さん」

「何かあったら、私が責任とるから」

「取れるんですか?」


 心配するリボンの頭を触るリリネッド。

「問題ないよ、私の仲間が言っていたけど、私は強運らしいよ」

「それは何となくわかります」


 二人が話しているとアサノが立ち上がり外へ出ようと動く。

「ジブンらお風呂入るやろ、ボクゥがおると入れへんやろうから出とるわ。せやから先に入って置いて1時間ぐらいしたら戻ってくるよ」


 アサノが出ていたのを見て、リリネッドが脱ぎ始めた。

「ちょっ、早っい!!」

「あっそうかユウくん?ユウちゃん?もいるんだった。ごめん、ごめん」


 とリボンはずっと疑問だったことをユウに問う。

「ユウさんは、どっちッスか?」


 ユウは黙る。

「男性なら出て行ってほしいです、女性なら居てもいいですが」

「リボンちゃん、別にどっちでもよくない?」

「いや、ダメっスよ」

「ユウくん? ちゃん? 面倒だなぁ~、ユウは問題ないよ」

「くんとちゃんで迷っている時点でダメじゃないっスか、てか諦めているし」


 リリネッドはリボンの鉢巻を取ってユウの目に付けた。

「これでいいよね」

「まあ~構わないっス」

「じゃ~入りに行こうか」

「外したらナックルぶつけます」

「ナックルって何?」

「技っス」


 ユウは鉢巻でも若干薄く見えてはいたが体育座りで動かずにいた。下はスカスカ見ていた。

脱ぎ捨てられた服が見えたがユウはなるべく見ないように目線を変えていた時に壁に寄りかけている勇者の剣を見つける。


 二人の事を気にしながら剣の方へと移動してユウは剣に振れる。

「あの時、抜けなかったけど…」


 ユウは剣を持ち上げようと試みるも持ち上げるどころか鞘からも抜くことが出来なかった。

「やっぱり、ダメ…なんだ」


 ユウは元の位置に戻ろうとした時、そこにザクタマがいた。

「うっ!!」

「お前さん、勇者になりたいのかい?」

「そんなことは」

「なる方法、教えてやろうか?」

「何?」

アイツ(リリネッド)を犯れ」

「な、何言ってんだ」

「にゃわ、魔帝王の使いの魔物で、王の手見上げが欲しいんだ」

「え?」


とガラっとドアを開ける音がして、リボンがタオルを巻いて入って来た。

「猫ちゃん、お風呂入ろ!!」

「ええ!! いやにゃ!!」


 ザクタマ慌てて逃げて行った。リボンは上着を着て、後を追う。

嵐の前の静けさの様なシーンが続いた時、リリネッドがユウに声を掛ける。

「入っちゃいなよ、お風呂気持ちいいよ」

「いや、アシはいいです」

「私が入ってほしいの」


 ユウは迷ったがリリネッドが続けて「アサノが入ってくるよ」という言葉を聞いてすぐに服を脱いだ。

リリネッドは後ろを向きながら湯に入っていた。

「(こういった気に使い方はできるんだ~)」


 ユウは湯に入る前に体を洗う。

「回りくどいの苦手だから、ハッキリ言うよ、どっちで接した方がいい?」

「え?」

「名前はもういいかと思って、私は普通に接しられるけどリボンちゃんもいるから」

「アシはどっち…でも…どうでも」

「わかった、じゃ~その場の感じでその時の空気で帰るね」

「え!?」


 リリネッドのその回答に戸惑う、ユウは返しに困ったが逆にその回答はなぜだかわからないけど一番ほっとした。

体を洗い終わり、湯に入りリリネッドの前に立ち座る。

リリネッドはユウを見て驚く。


「一応、勇し…っリリネッドには言っておくけど…アシは……。」


 ユウの言葉に驚くことなく優しい顔で聞くリリネッド。

「そっかぁ~」

「・・・。」

「じゃ~、私も聞いて」


 二人は誰もいない二人きりの湯船で内緒の秘密を交わし合った。



 ●●●



 足湯からの帰りにアサノは木の上から降りてこないザクタマと追って来たリボンを見つける。

「自分ら何しとんの?」

「へっちゅっくん!」



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