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第76章 名前

現在の列車の中は。


〈1号車〉

・リリネッド(勇者)

・シズ & ノビオ(冒険者パーティ)

・ヴァンゲンハイム


・ユウ & アサノ

 ・連結部


〈2号車〉

・クエービィ&バンバ

・カリン

・他2名


〈3号車〉

・冒険者3人


〈4号車〉

・乗客数人(5号車の乗客もいる)

・ショーヒダ、ライ


・モナナ


〈5号車〉

・スターンズ、タエコ


〈6号車〉

・リボン

・死体の山


〈7号車〉(半破損)


〈8号車〉

・ザイリュウ(魔帝王の側近)

・ラグル


〈9号車〉(半破損)

〈貨物車1〉

〈貨物車2〉


 〈8号車〉と〈9号車〉がドタバタしているその少し前の〈1号車〉と〈2号車〉の出来事。

〈2号車〉にいたカリンという女性がリリネッドが投げた剣にたまたまぶつかり痣が出来てしまった事でキレ始めた、雇われボディーガード『グミ会』の副会長のバンバは護身用の睡眠弾がこまれた拳銃を胸ポケットから取り出す。


と〈2号車〉と〈1号車〉の連結部分にいた、アサノと目が合い、彼がやったと勘違いしたバンバは扉をぶち破ってアサノに向かって拳銃を打ち込む。


「シャッにさらせェェェ!!」


 撃ち込んだ弾はアサノに当たる事はなかった。なぜならば、アサノの周囲を守るようにシールドが張られたからだ。


「さすがや、ユウちゃん」


 2号車の屋根の上にいる、ユウは手をかざして魔術を使った。

張られたシールドに弾が止まっていた。


「仲間がいたのか!! クエービィ!!」

「はい」


 クエービィはバンバに歩兵小銃を渡す。

「やっぱり、これだろう」


 バンバが構える前にカリンが止める。

「いけません、それいじょうわ」

「お嬢さん、邪魔しないでください。これは俺たちの信用性にもかかわる事で」


と揉めていると剣が浮き始めて〈1号車〉に向かって飛んで動き始めた。

カリンはそれにいち早く気づき避けるもバンバは飛んで行く剣のガードと言われる場所に頭が当たり意識を失う。

「バンバさん!!」

「な、なんで?」



 ●●●



 〈1号車〉の中。

 リリネッドはヴァンゲンハイムに捕まれそうになるも一緒に乗り合わせた猛獣使いのシズ、闘士のノビオが守ってくれていた。

「てか先コイツ、勇者って言っていってなかったか?」

「私も聞いた、ちょっと顔見せて」

「ヤバ」

「いま、ヤバって言った? ねぇ、いまヤバっていたよなあ!! シズ、コイツ」

「ええ、今確認したわ」


 シズは懐のチラシで照らし合わせた確認する。

リリネッドは顔を膨らませるもダメだった。

「本物…? 勇者・リリネッド…」

「マジかよ」

「違イマス、ワタシは、リサデス」

「なんで急にカタコト喋り!? 無理だよ。逃げらんないよ」

「証拠は?」

「「顔写真」」

「それは似てるだけだよ」


 リリネッドは如何にかごまかすも怪しむ二人だったがそんな話をしている間にもヴァンゲンハイムの攻撃が続く。

「勇者かぁ、それはいい。君が魔帝王を打ち破った時、俺は世界の王となれるかもな」

「話が進みすぎだよ」

「俺の女になれ!! 勇者!!」

「ごめんなさい、私にはまだ恋愛は早いので」


 リリネッドは投げた方向の剣を引き寄せて向かってくる剣をスルっと避けるヴァンゲンハイムにすぐに剣を掴んで避けた方向に勢いを付けて剣を振り被る。

「な、なにぃぃぃ!!!」


 ヴァンゲンハイムは大きくなった体を元の体に戻しギリギリ攻撃をかわす。

「あ、あぶねぇぇ…」


 リリネッドはヴァンゲンハイムから少し離れる。

と近くにいた二人がリリネッドを抑える。

「「よし、捕まえた」」

「うっえぇ~~~!!?」


 シズとノビオは顔を見合わせて話す。

「で、どうするんだっけ?」

「たしか、魔帝王に持っていくんだっけ?」

「でも、俺らこの剣、抜けなかったけど」

「大丈夫よ、この子が抜いてくれたから…」


と言ってシズが剣を掴むも重くて持てなかった。

「え!! どうして」

「何してんだよ」


ノビオも剣を持ち上げようとしても持てなかった。

「どうなってるんだ!? 全然よぉ~持てないぜぇ。シズ、一緒に持つぞ」

「ええ…。ノビオ。勇者は?」

「え?」


 ノビオはリリネッドの方を見るもいなくなっていた。というか、ヴァンゲンハイムもいなかった。

二人がキョロキョロしている、〈1号車〉と〈2号車〉の連結部分にいらアサノが二人に伝える。

「あの二人やったら、外に出て行ったで。多分やけど、上におるで」

「「誰?」」


 二人が言った同時に剣が上に飛び上がった。

〈1号車〉の上でヴァンゲンハイムの攻撃を剣で弾き飛ばすリリネッド。

「貴方は、モンスターでも魔物でもないの? 魔帝の人でもない」

「ああ、俺らは吸血鬼だって言わなかったか? 半人間の血がある」

「聞いてない。多分…」

「まあいい、マジで俺の女にならないか?」

「無理」

「そうか、残念だ。なら、誰かの物にならないように、俺の養分にしてやる」

「うっえぇ、嫌だあぁぁ~」


と後方ですごい音がした。二人は後ろを見る。

「おいおい、俺が何しなくてもこの列車は終わってんな。大失敗だ」

「ダメだよそれは」


 ヴァンゲンハイムはリリネッドの方を見る。

「この機関車は成功しないとダメだ」



 ●●●



 揺れと爆発音など騒ぎに遅くに気が付き機関室に居た、機関車開発者のハーヴェイは〈1号車〉に来ていた。

「なんだ、何が起きた!?」


 ハーヴェイに向かって人差し指を唇に当てて、「しーっ」とするポーズとって見せえる。

シズ、ノビオ、下に降りていたユウが上を向いていた。

それにつられて上を見るハーヴェイは剣によって開いた穴からリリネッドいるのに気が付き話し声に耳を貸す。



 ●●●



 ヴァンゲンハイムはリリネッドの発言を問う。

「何がだ? 何がダメだ」

「この機関車は成功しないとダメなんだよ」

「君がこれがうまく行った所で何を得るんだ? 逆に言えばこれが出来ると全国が困る。不法入国、治安の悪化、線路での騒音。乗っていてもわかる鉄の塊の煙。まだまだ出てくるぞ」

「いいところは?」

「ん?」

「いいところは見つけないんだね」

「ハーヴェイさんは話してくれたよ。『国と国が繋がればもっと豊かになれる』って『寂しい村、街が救える』って」


 ヴァンゲンハイム 右手を広げて後方を見せる。ボロボロの車両を。

「これでも成功するというのか!! 失敗したこの鉄の塊を!! こんな塊に未来は変わらない時代を変える事なんてできない!!」


リリネッドは風で波く髪を手で払って言う。

「まだ、始めたばかりだよ。やっと一歩踏み出せたんだよ。失敗しても、あたたかい目で見守っててあげようよ、未来なんてちょっとしたはずみで変わるんだよ。私が勇者になったように…」

「んっ!!」

「ねぇ~知ってる?『毎日の小さな努力した人が歴史を作っていく』らしいよ」

「なんだ、それは」

「私が城にいた時に人が言っていた。あの時はピンと来なかったけど、いまならわかる。この人(ハーヴェイ)が歴史を変えるんだなって」

「この鉄の塊がかあ?」

「違う!!」


と必死に上に登ろうとするハーヴェイが叫ぶ。

「鉄の塊じゃない!! これは希望の星だ!! 夢を走る機関車だ!! コイツは、こいつはな!!」


 ハーヴェイは登りきる、リリネッドの横に立ちヴァンゲンハイムに向かって言う。

「コイツの名は『()()()』だ」

「ネリネ?」


 リリネッドがポツリとつぶやくき、ハーヴェイは続けて話す。

「俺の父さん付けた名だ。父が言っていたよ」


ハーヴェイは父との思い出を話す。



 ●●●



 数年前の頃。機関車(ネリネ)を整備中での事。

ハーヴェイと、父のトーマスが話す。

「そういえば、父さん、コイツの名前ってあるの?」

「あるよ、ぴったりな名前が」

「なんだよ、それ?」

「ハハハ、そんなかっこいい名前じゃないよ。俺が出来なかった事も乗せた名前でもあるから」

「父さんが出来なかったこと?」

「前に話したが父さんは、元冒険者だって話だよ」

「ああ、父さんが魔物と戦って怪我をしたからやめたって話だろう? なんども聞いたから知ってるよ」

コイツ(機関車)は、国と国を繋ぐ、人を救う為もあるけど…ほかにも俺の諦めた夢も詰め込んでいるんだ」

「なんだよそれ?」


 トーマスは間を置いて口に出す。

「魔帝王の討伐だよ」

「はあ!! ハハハァ」

「そりゃ~そのリアクションになるよね。これでも冒険者だったからなあ。だからもしこれが完成したら冒険者が乗って遠い場所や、モンスターや、魔物で困っている村を救えるかなってなあ」

「いいなそれ、そのためには俺らが線路を沢山作る事になるけどなぁ」

「ああ、そうだな」

「で、なんで名前はなんだよ」

「言ってなかったなぁ名前は『ネリネ』」

「『ネリネ』?なんだよそれ、だっせぇ~」

「言うと思ったよ。でもちゃんと理由があるんだ」


 ハーヴェイは手を止めて座り込んで聞くことにした。

「俺が居た場所で咲いていた花から付けたんだ。これと似た花でヒガンバナってのがあるんだけど、それとは違くコイツ(ネリネ)は美しく綺麗で明るい雰囲気がある花なんだ。ネリネ、別名がダイヤモンドリリー」

「ダイヤモンドリリ―?」

「ダイヤモンドの様に輝いて見えたこと名が付いた」

「そんな花なんて知らないよ~。というか花なんて興味あったのかよ」

「この世界では俺の知っている花はほとんど存在しなかったけどね」

「?」

「俺が居た世界では花に言葉があってなぁ。このネリネには『忍耐』とか『輝き』とかあるけど、この機関車に相応しいのは言葉がるんだ。それは『()()()()()()』と『また会う日を楽しみに』っていう言葉がるんだ」


 ハーヴェイは目を見開く。

コイツ(ネリネ)に乗っていろんな思い出を残してほしいという思いと、別れと出会いを繰り返す事になるけど『また会いましょう』という思いも込めた。俺の大好きな花の名をコイツに付けた」


「なら、ダイヤモンドリリーでもいいだろうが」

「それじゃ~コイツにダイヤモンドで作らないとダメだろうが。いいんだ、ネリネで」

「ネリネ…ダイヤモンドリリ―…いいなぁそれ。『ネリネ』…よろしくなぁ『ネリネ』」



 ●●●



 リリネッドはクロウと旅を始まる時の事を思い出す。


「そういえば、貴方の名前を聞いてなかったね」

「俺か?、俺は…適当でいいですよ、一兵士だったんで名前なんて無い様なもんでしたんで」

「私も似たような感じだから、一侍女だったから」

 と数分沈黙があった後に話し出す。


「じゃ~俺は城にいた時に名乗っていた、クロウで行きますよ。それじゃ~勇者様は………適当にリ・リ・ネ・ッ・ド・。 ()()()()()()()()()でいいですか?」

「別にいいけど、それなんか意味とか由来あるの?」

「ないですよ。珍しい名前ぽい感じ…。」



 ●●●



 <1号車>の上でハーヴェイは話し終わり、リリネッドは呟く。

「ネリネ…リリー…。ネリネ・リリネッド」


 機関車(ネリネ)は走り続ける。遠くの方で駅の影が見え始めた。


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