第72章 バトルトレイン
列車の機関室で爆発音に気が付いたハーヴェイは止めようとブレーキレバーに手を伸ばそうとした時、屋根の上から二人の男が降りて来た。
「止めるな」
「誰だ、お前達!!」
「それは言えないが、そうだな盗賊集団だ」
「盗賊だと!?」
「予定より早いがアリオト村へと行くルートから『アルコール』村へと変更しろ!」
「そんなところへ行く線路なんて作っていないぞ!!」
「俺たちが作ったんだよ」
「そんな安全も確認できない線路に他の乗客を」
男たちは武器を見せてハーヴェイを脅す。
●●●
列車が出発してすぐの〈7号車〉にて。ラグルとリボンがいた。
女の悲鳴が車内に響いた。血まみれに倒れる男。男を差した者が通路のドアを魔術で塞ぐ。
「さぁ、待ちかねた殺戮の時間だ!!」
ラグルはリボンに状況を聞く。
「どうしたんですか?」
「男が刺されて倒れて、早く直さないとダメっぽいっス。ドアは刺した奴が塞いで出れない乗客は」
とリボンが喋っていると、それに気が付いた男が叫ぶ。
「なに、喋ってんだ!! てめぇ~から死にたいのか!!!」
ナイフを振り回しながらリボンに近寄る男。
「これはこれは、ものすごい殺気だ。被害も出ているのであれば」
ラグルは魔法陣をリボンの前に浮き出すとその中からチェーンが複数、飛び出し男に巻き付け倒れ込んだ。
「さて、これで安心ですね」
だが、男は不敵な笑みを浮かばせたと同時に、ラグルも何かに縛られるように倒れ込んだ。
「一体何が?」
「うひひひひ」
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列車が出発してすぐの〈9号車〉にて。
「冒険者、ドウマーン、ハットグリーン、ボウルーノの3名確保しました!!」
列車の護衛として乗り合わせていた中央国騎士団の6番隊隊長のログラムと兵士が怪しい3人を捕まえた。
「俺たちはまだ何もしてないぞ」
「”まだ”ということは”やる”という事に繋がりますがよろしいですか?」
兵士が取り押さえていた3人の内の一人のハットグリーンが手を振り払って腰のナイフ掴んでログラムに向かって走り出す。
「このアマが!!」
ログラムはナイフを腕で受け止める。だがナイフは貫通せずに腕の上で留める。まるで石にナイフを刺したかのように。
ハットグリーンは困惑した瞬間、ログラムが顔面を殴り飛ばしてそのまま地面に叩き倒れる。
「汚いです。早くそいつらを処罰するべきです」
ログラムはハットグリーンの髪を引っ張りながら持ち上げる。
「貴方方の目的は?」
ハットグリーンは口に血をログラムの綺麗な顔に掛ける。がログラムは気にしないで真顔で続ける。
「目的は? ほかにもいるのですか? 配置は? 数は?」
「てめぇ~の頭で考えろよ」
「そうですね、貴方と話すのはコスパが悪いですね。全車両を確認するだけです」
ログラムが8号車のドアを開けようとした時、同時に8号車にいた者がドアを開けた。
入って来た者は男、赤い液体がついたぼろい白いシャツに長い爪に尻尾の様な物を生やしていた。
8号車の部屋がチラリと見えたログラムはその残酷で酷い状態が見えた。
血まみれで倒れる乗客と盗賊らしき者が倒れていた。
入って来た者はログラムを蹴り飛ばしたことで後ろに下がる。
「貴方、何もですか? 名前と目的を」
「うるさい、うるさい。人間なんてさっさと皆殺しにすればいいんだ」
「了解です。あなたは敵です」
「ほう、お前、人間じゃなのか!?変な匂いだ」
ログラムは腕を前に出して間接が変な方向に曲がるとそこから大砲が撃ち込まれた。
男は驚きそのまま直撃して爆発が起きた。
周りにいた者を巻き込んだが命に別状はない。
「まったく、厄介な仕事を受けてしまいましたね。お互い」
ログラムは盗賊の一人のハットグリーンを足で生みながら言う。
男は大きな拍手をしてログラムを見つめる。
「いいね、いいよ。舐めてかかったことを謝るよ。俺も少し本気でやろうかな」
「貴方、魔帝族の人ですね」
「魔帝族って言うのは気に入らないなぁ~。まあ、言葉で表すとそうなるかそうかそうか…まあ~いいや。それはいんだう~ん」
男は指を差して言う。
「俺の目的は勇者だ。どんなもんなのかって気になってな」
「そうですか、またまた残念です。私たちの目的も勇者なので」
「そうかあ…そりゃ~本当に残念だな。俺様に当たったアンタ」
「中央国騎士団、6番隊隊長のログラムです」
「礼儀がいいねぇ~。じゃ俺も名乗らせてもらうは…俺は魔帝王の側近のザイリュウだ!」
ログラムは危機感を強くして列車の壁を壊して兵士に言う。
「飛び降りなさい。あなた達がいると迷惑です」
その言葉を聞いて一般市民と兵士は盗賊たちを確保しながら安全を確認して飛び降りる。
「いいぜ、雑魚には興味ねぇからよ」
「列車の成功を邪魔するはずがなぜこんな事に」
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列車が出発してすぐの〈3号車〉にて。
そわそわするユウに対してコインで遊ぶアサノ。
「なんで、そんなにリラックスしんだよぉ」
「なんでってそれしかやる事はないからやで。むしろなんでそないにソワソワしとんの」
「怖いじゃん。こんな乗った事ないんだから」
「ボクゥもこれは初めてやけど大丈夫やで」
「も~」
「そんなソワソワした、ユウちゃん見とると可愛い思うわ」
ユウは顔面が赤くなる。
「嘘やで」
とからかっていると冒険者らしき人物がアサノに近寄る。
「行くぞ」
「せやな」
ユウは困っていた。
「どこ行くの?」
「話すん忘れとった。あんな、勇者の首を取りに行くんや」
「なんで?」
ユウが問うと冒険者の一人が説明する。
「知らないのか? 勇者の剣を魔帝王に献上することで魔帝王から特別な謝礼が貰えるって話しだ」
「支配者から欲しいの?」
「どうせ、世界は魔帝王に逆らえない。なら少しでも恩恵は欲しいだろう?」
「そうかな~」
とユウが心配な顔をするとアサノが肩に腕を回して頬っぺたと頬っぺたを合わせて来た。
「大丈夫やで、ユウちゃん」
「ちょっ近い」
アサノは他の人に聞こえないぐらいの声でしゃべる。
「ユウちゃんも知っての通り、あの剣は、あの子しか持たれへん。そら知っとるやんな。わざわざ、田舎の国まで足を運んで行ってんから」
「そうだね。近いよ」
「ユウちゃんがあの剣を抜いていれば、もっとはよ…」
「ん? 何?」
「気にせぇへんで、気にせぇへんで」
ユウは心配するもアサノはニコニコしていた。
そしてアサノはユウの後ろに回り体を弄る。
「ちょっい、ちょい待って!!」
「なんや? どうしたんや?」
「ちょおお、や、やめロイ」
そんなふざけながら、2号車へと足を運ぶ。
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列車が出発して少し経った〈4号車〉にて。
護衛として乗り合わした冒険者のショーヒダ と ライ は騒がし5号車が騒がしいのに気が付く。
「ライ、なんか騒がしくないか」
「列車ってそういうものかもよ」
ライは本を読みながら興味がない態度をとるもショーヒダが動き出す。
「ちょっと見てくるよ」
「やめときなよ」
ショーヒダが5号車の扉を開けようとした時、ドアが開いて中にいた数人の乗客が焦りながら入って来た。
「どうした?」
「中に魔物が!!」
「ん?」
5号車の中を見ると4,5体の魔物が暴れていた。
「どうやって入って来たか知らないけど…おい、ライ!!」
ライはヤレヤレって感じで本を閉じる。
ライは全身に魔力を注ぎ込むと同時に姿を拳銃に変えたてそのままショーヒダの手元に飛んで行く。
ショーヒダは手元の拳銃で次々と魔物を倒していく。
「楽勝!」
だが一体の魔物が倒れている男の前に立つ。
「コイツ!!」
「任せて」
「ライ? そうかじゃ~任せる」
ショーヒダはライ言葉を信じて弾丸を魔物に向かって打ち込む。弾は大きくカーブして魔物の真横に撃ち込まれた。
「よし、終わり」
と窓の外を見ると、牛のモンスターが走っていた。
「モンスター?」
牛のモンスターは聴こえたのか怒り狂って列車の壁を破って乗り込んできた。
「誰がモンスターだって? 俺は、モナナ。魔帝王の幹部の十三ヶ騎士団の一人だ」
「幹部ではないだろうが」
拳銃の姿のライが言った。
「馬鹿、煽るなよ。本当の事だけど」
怒りに怒りを超えてボルテージがばく上がりしたモナナは列車を揺らしながら、ショーヒダ向かって行く。
ショーヒダが構えていると後ろから「避けろ!」と言葉を信じてショーヒダは頭を下げると円盤みたいな物が飛んできてそれがモナナに当たり倒れる。
ショーヒダが後ろに振り返るとそこには ” 6号車 ” に乗り合わせていた冒険者のスターンズ、タエコが構えていた。
「「だれ?」」
今回、視点がころころ変わりますがちゃんとつながっていきます
まるで列車の様にバラバラから一つの目的へとなります。
ここまで読んでくれてありがとうございます。




