第70章 それぞれの歩む道
男は殺し続けた。生きるために命ある限り殺し続けた。
邪魔なものを排除しつづ受けた。目的もなくただ生きていた。
真っ暗で赤く染まった男の前に光に輝く人物が男に向かって指を差す。
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魔帝王の幹部のオルガが高笑いをしながら身動きの取れないクロウに指を差す。
クロウの顔には落書きされていた。
「なんだよの顔はよおおぉぉぉおおお!!!」
「お前ところのガキがしたんだよ」
とそこにクロウの顔に落書きしいた子供姿のチバロ、エレピが怒りながら部屋に入って来た。
「チバロはガキじゃ~ねぇ~よ」
「エレピはガキじゃあ~ねぇ~」
双子の様な見た目と服装を着た二人。
「顔はそんなに似てないな」
「「似てるわああぁぁぁあああ!!!」」
チバロ、エレピは身動きが出来ないクロウに暴力をする。
「や~め~ろよ…てか、マジで待って!! マジで痛い!! ちょま!!」
二人はふざけ無しでマジで殴り蹴りをする。
少し様子を見た後、オルガが止める。
「もう辞めとけ」
「俺のライフはゼロだぞ。てか、止めるのおせぇ~よ」
「タイミングばっちりだろうが」
「で、なんで俺を生かしてんだ?」
オルガは真面目な顔になり椅子に持ってきてクロウの前に置いて座る。
チバロ、エレピの二人はオルガの左右に寄りかかるように立つ。
「先に大事なことを言っておく」
「なんだよ?」
少し溜めてから口を開く。
「チバロ、エレピは俺よりめちゃくちゃ年上だ言葉に気を付けろ」
「いや…まあ~そうか。すまなかった」
チバロ、エレピは偉そうなポーズをしてクロウを見る。
「俺の質問に答えろ」
「お前をここに連れてきて生かしてるの簡単な話だ」
「ああ?」
「勇者を利用するためだ」
「アイツを?」
「今、魔帝国は危機に瀕している」
「なんだそれ?」
オルガは椅子から降りて、クロウを持ち上げて、窓に近くまで運んで空を見せる。
「まだ、小さいが見えるか?」
「ん? わからん」
「あのお前らで言うところの月の様な奴の横にある小さい光だ」
「あれが?」
「アレがこの国に落ちたるらしい。そしてその瞬間この世界は終わるらしい」
「え!?」
オルガは再び椅子に座る。
「それを最近、王が話始めた。100年前以上から王は知っていたらしく。だから王はお前たちの世界と共存を求めたんだ。だが、タイミングが悪かったのか定めなのか、なんども邪魔が入り、うまくいかなかったんだ。遠回りしてでも俺たちの世界を救うためにって動いたがもう待てなかったんだろうな」
「(コイツ、普通に喋れるんだな)」
「王は、天界国と戦争を起こそうとしているんだ」
「そりゃ~問題だな。天界が負けた場合、地上の被害は計り知れないな」
「それもこれも、勇者の復活がああぁぁああよぉぉぉおお!!!」
「(急にギアが上がって来た)」
「マジで、勇者が現れたせいでもっと王の信頼が減ったんだ。まあ~倒していった幹部は仕方がない、自業自得みてぇ~な所が有るからお前達に文句はない」
「何がいいてんだ?」
オルガは椅子から降りたと同時に椅子を蹴り飛ばす。
「王は止まらないし、天界の奴らも動く。俺は被害を最低限下げたい。勇者の仲間のお前が勇者に行って地上の奴らを非難させてほしい」
「はあ!!?」
「リヴァナラを倒したことで勇者の評価は賛否に分かれているがこの事を勇者の口から言えばみんなが動くはずだ。他の奴らが言うよりは聞くはずだ」
「(コイツ、振り幅がすごいな) だいたいわかった。なら早くコイツを取ってくれよ」
「あ゙あ゙? そりゃ~無理だ」
「なんで?」
「今は無理なんだ」
チバロ、エレピも続けて言う。
「無理だよ」
「無理なんだよ」
「だ~か~ら、なんで?」
オルガはクロウと同じ目線になり言う。
「側近が来ているんだ。俺達、幹部はいま外に出入りできなくなってる。まあ~ステンバーって奴は外に出てはいるが問題は、ルギアラって奴だけどまああぁぁああ、アイツは…。」
「お前らのごたごたは俺には関係ない」
オルガは少し乱れたリーゼントの髪を整えてからクロウに言う。
「人の事言えないんじゃああぁぁああないのかぁ?」
「は?」
「あんな場所に倒れてたやつが何を言ってんだって言ってんだよ」
クロウは苦い顔をする。
「別に好きで倒れてたわけじゃない」
「それこそ、俺にはよぉぉおお知ったこっちゃねぇ~のよ」
「でも、俺を助けたんだろ? お人好しなのか?」
「先も言っただろうが、お前は勇者の仲間で利用できると思ったから助けた。それだけだ」
「へいへい」
オルガはチバロ、エレピに見張り頼み部屋から出た。
「オルガを手を煩わせな!!」
「煩わせるじゃ~ねぇ!!」
クロウは真面目な顔をしながらチバロ、エレピに殴られる。
部屋出て廊下を歩く中、オルガはクロウを拾った時を思い出す。
誰もいるはずの無い、深海の置く深く洞窟の中で、嘗て魔帝国を襲い破壊し尽くした暗黒のドラゴンが眠っている場所でクロウは倒れていた。
オルガが見た時には傷や怪我が自然と治り始めていた。
先程まで誰かに攻撃されたような怪我だった。
意識がなく気絶していたクロウの目から一粒の涙を流したのを見てオルガはクロウを抱える。
そんな事を思い出しながらオルガはどこかへ向かう。
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魔帝城の王室にて、光の筒の様な物で魔帝王は眠ていた。
それを見守るルギアラ。
「王…」
ルギアラの横でアイマスクを付けながら立っているヴォワゴレレ。
「何見てんの?」
「お前には関係ない」
「関係なくないよね。こうなったのはアンタがやらなければ…」
「うるさいぞ!!」
「おいおい、クールな君がそんな大きな声出すほど追いこまれているのかい?」
ルギアラはイライラして剣を抜いてヴォワゴレレに向ける。
「それ以上、俺を怒らせるな」
「勝手に怒って、勝手にイライラして、自分勝手で身勝手なことで他人を巻き込むなよ」
ルギアラは落ち着きながら剣をしまう。
「俺は行く、王には上で待つと伝えておいてくれ」
「全く勝手な奴だよ、君は」
ルギアラは部屋から出た。
一人残った、ヴォワゴレレは王を見てポツリとささやく。
「嫌だね、血統という物は」
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城の中の廊下でルギアラとオルガはすれ違う。
何も語らなかったが二人は目で語った。
「(汚れた血の男)」
「(ロン毛バカが)」
そんな二人をたまたま見ていた魔帝王の側近の一人のギンリン。
「ふ~ん。あれが天界の血を持つ者と…人間の血を持つ者か…。面白いわねぇ」
ギンリンは深い笑みをして消えて行った。
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深海の置く深く洞窟の中、マイナス80の場所でナギを見つめるユーリ。
「すまない、今すぐ君を助けることはできない。だが時期にはかならず。それまでは俺の計画通りに動けば…」
ユーリは此処で起きたクロウとの戦闘を思い出しながら自身の剣を強く握る。
その時に言われたクロウの言葉が胸を苦しくした。クロウの口から出たのは『お前は間違っている』。
「大丈夫だ、俺は正しい道に向かっているはずだ」
ユーリはナギの前に刀を差す。
「その時が来たら頼むよ、ナギ」
そう言ってユーリは歩き出す。真っ暗な先を一人寂しく。




