第69章 誰かの夢の為に
機関車整備工場倉庫の前で機関車の責任者のハーヴェイは倒れていた。
その周りに複数の役人とヴァンゲンハイムが立つ。
倉庫は炎で燃え盛っていた。
「早く、消さないと」
「ダメ、ダメ、ダメだよ。これはあってはならない物だ」
「なぜだ!! これが有ればいろんな人助けられるのに!!」
「それはお前の幻想だ。無理こんな鉄の塊ではだれも助けることはできない。決してな」
悔しがるハーヴェイは地面の土を握りしめる。
そこにサッとリリネッドが倉庫に入って行った。
「なんだ?」
その後を二人の応用に中に入って行く。
ヴァンゲンハイムは呆然と見ていた役人達に指示して後を追わせた。
「何している、奴らを追い出せ。それに最初に入った奴、もしかして」
●●●
倉庫の内の中は燃えあがっていた。
中央のは機関車の先頭部分が置かれて一緒に燃えていた。
「あ、あれが機関車?」
「勇者さん、危ないっスよ。ところで炎消す、魔術使えるんですか?」
「え、ないよ」
「えええ、じゃ~なんで走り出して中に入ったんスッか!!」
「え、何となく」
「な、何となくって」
ラグルが高笑いをした。
「ラグルさん?」
「それでこそ勇者だ」
ラグルは杖を取り出して周囲に魔法陣を浮き出した。
と同時に役人も中に入り、ラグルのやろうとしている事を止めようとする。
「リボン」
「解ってます」
役人は拳銃などを取り出すがリボンが先に動き素早く倒していく。
「今です、ラグルさん」
ラグルの周囲の魔法陣は炎だけを吸い込み始めた。
「すッすごい」
「魔法は便利ですが、疲れますし、生き物だって買うのも育てるのも大変だ。こういった物も必要になる。そう言った時代になったということですよ。」
炎は消え、機関車は多少の焦げだけですんだ。
役人はリボンの強さにビビり逃げ出し倉庫に入ってくるヴァンゲンハイム。
「全く、やってくれる」
「なんでこんな事したの?」
リリネッドがヴァンゲンハイムに聞く。
「やはり君か。やっと再会できた。これは運命だ。君と俺が出会う事は決まっていたんだ」
「いや、質問したんだけど」
「さぁ、俺の馬車に」
「だから、なんでこんな」
ヴァンゲンハイムはめんどくさいみたいな表情しながら話し始める。
「国の命令だよ」
「国?」
「俺のハソウルト国とレグブイ国など複数の国がこれをあまり良く思わない奴らからのだよ。一番歴が低い俺が動くことになっただけだ。これでいいかい?」
ヴァンゲンハイムは作戦が失敗したのでその場を去ろうとした時、リボンが問う。
「世界を変えようとした人の邪魔をしたのが国ですか。じゃ~国はいま何をしてるんですか!!」
「知らねぇ~、俺は命令されただけだ。それにこれが万が一失敗しても次がある。それと、国が時代を作ってる。こんな鉄の塊じゃない。勘違いするなガキ」
ヴァンゲンハイムは去っていった。
●●●
リリネッド達はハーヴェイを医師のいる場所まで運んでいた。
その夜、ハーヴェイは抜け出して倉庫に向かって整備を再開し始めた。
「遅れてしまった。早く完成させないと」
暗がりの部屋で音もなくハーヴェイの作業中の後ろに立つリリネッド。
黙って観ていたその視線に気が付いたハーヴェイは驚く。
「なんあなんなななんだ!! いつからいたんだ!! てめぇ!!!」
「貴方が倉庫に入ってすぐぐらいかなぁ」
ハーヴェイはリリネッドを気にしながらも整備の手を動かす。
「大きいね」
「そりゃ~そうだろう。何百人も乗せるんだ」
「一人でやってるの?」
「前まで朝は何人かとやっていた。最近は少なくなっていた。まだ一人じゃない完成までもう時間がないんだ」
「すごいねぇ」
「俺はすごくねぇ~よ」
「いや、機関車のこと言ったんだけど」
ハーヴェイは「わかってるよ」といいながら顔を真っ赤になる。
「なんで、機関車を作ろうとしたの?」
ハーヴェイは少し黙った後、話始めた。
「俺の父親の夢なんだ」
「夢?」
「コイツはまだ一本の線路した走れないが、いつか複数の線路ってどこでも行ける誰でも乗れる便利な乗り物になる。そして国と国とを繋ぐ架け橋になるって」
「…。」
「お前、知ってるか? 国や街、村にはそこでしか手に入らない物、そこでしか育たたない植物、生き物があるんだ。それらをみんなが共有できたらどれだけ素晴らしいか…それが出来たら…」
リリネッドは何かを察して話を変える。
「ところで、これってどうやって作ったの何製?」
「おお、いい質問だ! これはなぁ」
ハーヴェイは嬉しそうな顔で話した。早口で合ったが用語や隠語などもあったがそれは楽しそうな顔で話した。
数時間後して機関車の先頭部分はだいぶ回復した。
「そういえば、俺を助けてくれたお礼を言ってなかったな。ありがとう。助かった」
「私は何もしてないよ。倉庫の炎を消したのは他の人だし、怖そうな人を倒したのは別だし」
「でも、一番最初に来てくれたのはアンタだろう。アンタが来なかったら他の人が来なかった。もう少し遅かったらコイツはダメだったよ」
「そんな事ないと思うけど」
「だから、ありがとうだ」
続けてハーヴェイは言う。
「御礼となるかわからないけど、完成したコイツの花道の日に乗って行ってくれないか? 席は特等席を用意する」
リリネッドはその御礼をもらうことにした。
そんな話を倉庫の外で聞いていたジミニー。
「全く、どこに行ったと思えば…勇者ってやつは」
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そして国の邪魔が入らないまま機関車が完成して走り出す当日。
リリネッド、シンノスケの10日間の修行が終わった。
「俺が教えられることはなるべく教えた。前とは違うだろう?」
シンノスケは感じ取れるほど自分が変わったことを確信していたが、リリネッドはわかっていなかった。
「かわった?」
「ええ、別人ですよ。さらに綺麗になりましたよ」
「そこまで変わってねぇ~よ」
二人はジミニ―の元から去り始め山から下りていく。
がリリネッドは戻ってきてジミニ―の前に剣を置く。
「なんだ?」
「私は挨拶終わったけど、ジミニ―はコレとまだだったよね」
「うんなこと気にしなくっても…」
ジミニ―は剣を見る。そして剣に手を置く。目を瞑り心の中で何を伝えたあと目を開ける。
「大丈夫?」
「ああ、ありがとう。言いたい事を伝えられた」
「じゃ~また会おうね」
「会えたらなあ」
リリネッド去り際で手を振りながら走って行った。
「全く、変な気の回しかたしやがって…頼んだぞリョウマ。その子を死なせたら俺がお前を消す」
ジミニ―は小さくなっていくリリネッド背を見ながら言った。
『消されたくはないなぁ』
誰にも聞こえない場所で誰かがそう答えた。
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機関車は走り出す。みんなの夢を乗せ。さらなる冒険を乗せて。
そして想いと託されたリリネッドは双方山を目指すのであった。
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時は遡り、魔帝城の中のとある部屋で鎖にぐるぐる巻きで繋がれているクロウ。
「やめろ、やめてくれ。いい加減にしてくれ」
クロウは情けない声を出してそう言った。




