第67章 弱い勇者は成長したい
ジミニ―が自分の家の近くまで帰って来た時、シンノスケが扉の前に立っていた。
「なんだ起きていたのか?」
「ええ、おかげ様で寝ていたので寝れなかったのと、僕は普段あまり眠る事はないんですよ」
「アンデッド、だからか?」
「!?」
「わかるよ、お前若干臭いぞ」
「え、本当ですか?」
シンノスケは自分のにおいを嗅ぐ。
「お前も素直だなあ~。嘘だよ」
シンノスケは話しはする。
「なぜ、リリネッドを強くさせようと思ったんですか?」
「なぜって、気まぐれだよ」
「気まぐれ?」
「言っただろう、俺は元勇者の仲間だった。昔の事を思い出してついってやつだ」
「それもです。なんで150年前の人間がいきてるんですか? おかしいですよ」
ジミニ―は頭を掻きながら大きなため息をする。
「そんなこと言ったら、お前の仲間のナギって言ったか? そいつも800年も生きてるだろう。それにお前も50年も生きいる。それを考えたらぁ~よぉ~」
「(なんでも知っているなぁ。この人。) 何者なんですか? 普通じゃないですよ貴方」
「普通に見えて普通じゃない。そんな世界だろうここは」
「ん?」
ジミニ―はシンノスケの反応を見た。
「そうか、お前は違うのか…ユースも適当だな」
「今なんて?」
「でだ、簡単な話。俺はあの子、勇者を利用しているだけだ。アイツには他の奴ができない事が出来るらしい。だからそれを利用する」
「できない事?」
「お前らが知らないところで知らな奴らがそれぞれの思惑で動いていて、そこにあの勇者が飛び入り参加している所なんだ。俺はそれを離れて観てことの結末を見ていようと思ったが…お前らの活躍と、あの子、勇者・リリネッドを見てたら、アイツを思い出してなぁ。柄にもなく口が動いているってところだ。これで納得してもらったかな?」
シンノスケの目から見えたジミニ―は幸せそうな顔をしていた。
「強くなりますか?」
「さぁ~な。ただ弱くはならないよ。一歩、歩き出せたいって気持ちがあれば」
●●●
ジミニ―は昔の夢を見た。勇者との出会いの夢を。
「なあ~、退屈そうなら俺に手を貸してくれないか?」
「誰だ、お前?」
勇者は口笛をしてから人差し指をくるっと円を描くようにふざける。
「お前は俺の仲間になる。ハハハァん」
「変な奴」
ジミニ―はそんな夢から目を覚まし柄にもなく涙を流してしまった。
「長生きはする者ではないな…(リュウマ、お前は今、どこにいる? お前がいないからこの世界はおかしくなったぞ。お前がいないからお前の代わりがあんな女の子になったぞ)」
ジミニは―外を見る。外には箒で落ち葉を集めるリリネッド。
「誰もやれなんて言ってねぇ~よ」
ジミニ―は片眼鏡を付けて外に出る。
●●●
朝、シンノスケは山奥で自力で鍛えなおしに行き、リリネッドはジミニ―に体を鍛えさせるためにまず走り込みをさせていた。
その後は、腕立て伏せ、上体起こし、スクワットを50回やらせた。
「大丈夫、大丈夫。これでヒーローになった奴もいるから」
「別にヒーローなんて目指してないけど」
「じゃ~お前は何を目指しているんだ?」
「別に何も」
「ふ~ん…。」
ジミニ―はずばり言う。
「お前には何もないんだなぁ」
「…。」
「誰かの指示で動き、助けたい人は誰かの助けたい人で、如何にかしたいという気持ちは誰かの気持ちで、お前自身はそんな人たちが困っていることも仲間から言われないとダメなぐらい」
「いや、わかるよ助けを求められていることぐらい」
「違うんだよ。勇者リリネッド。助けてくださいと、助けを求められるのとでは違いすぎる」
「でも、これが私なりの勇者だから」
ジミニ―はリリネッドを可哀そうな人を見る目で言う。
「お前は勇者にすらなってないぜ、勇者リリネッド」
「え?」
「勇者って言う、看板をもって歩いているだけ。名前だけ。仮をしているだけ。まだ勇者になっていない。いいか、勇者ってのは世界を救い、みんなを幸せにした者のことだ」
「それは前の勇者像であって私は…私は」
「現実の話、みんなはお前の事なんて見てない。この世界が空いた勇者の席にお前を座らせただけだ。席にをすべてお前に押し付けているだけ。その剣を手放せば楽になるぞ」
「でも…」
「何の目的もないお前に勇者は荷が重いとおもうぞ。いまがチャンスだ。俺は、元勇者の仲間だ。その剣を俺に返してくれないか? 仲間の形見だ。今が辞められるチャンスだ」
ジミニ―はしっかりと目を見て話す。リリネッドはその目をしっかりと見る事が出来ずギョロギョロしてしまった。
だが、クロウやナギ、シンノスケの顔が過る。そしてこれまでもらった『ありがとう』や『救われた』人たちの顔を思い出す。
リリネッドは自分の胸を拳で叩く。
そしてジミニーの目をしっかり見る。
「ジミニ―さん、私は、まだ弱い。心も体も弱し迷う。しっかりとした夢もない。これからどうしたらいいのかもわからずここまで来ました。それにもう後戻りはできません。戻るなんてできない。私は…私は、もう戻れないんです」
「で、どうしたいんだ?」
「私を強くしてください」
ジミニ―は真剣に見つめる顔を見て、自分を退屈な世界から出してくれた勇者の顔と重なった。
「(お前がいけないんだぞ、リュウマ。お前が居なくなったから) この街にある機関車が動くのが一週間後だっけかな? それまでだったら面倒見てやる。俺は観る鉄だからなぁ」
「み、観る鉄?」
「気にするな」
リリネッドとジミニ―の修行は再開する。
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150年前。
とある城の中で、ボロボロの状態で休憩する4人組にジミニ―と勇者は二人は壁を背にしてい座り込んでいた。
「俺、これが終わったら結婚しようかな?」
「相手なんていないだろうが、リュウマ」
口笛をしていやいやと手を横に振る。
「セフレなら沢山いる」
「クズが!」
「で、ジミニ―は平和になったあとどうするんだ?」
「言わねぇ~よ」
「なんで?」
「死亡フラグだ」
「忘れたのか?俺がどれだけ死亡フラグを折って来たか」
「今回は無理だ。怪物の王なんて勝てねぇ~よ」
「そうか?」
リュウマの手を見ると剣が震えながら握られていた。
ジミニ―は立ち上がり大きなため息をしながらリュウマの頭を強くたたく。
「イッた!! 何すんだよ」
「俺達が居れば勝てるって言えよ。この馬鹿」
「ハハハァ、そんなの言わねぇ~よ」
「ふん」
リュウマはジャンプして立ち上がる。
「よし、休憩終わり、行くぞ!!」
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現在、旧勇者が持つ剣はリリネッドが持つ。
ジミニ―はリュウマが持つ意思とは違う意思を持つリリネッドを強くして見せると笑みを浮かべさせながら決める。




